イギリス大手「ディアジオ」との資本参加、焼酎樽をウイスキー熟成に使用、グレーンウイスキー製造に乗り出す等、センセーショナルな話題に事欠かない蒸留所。
焼酎業界を牽引してきた「小正醸造」が二代目嘉之助から受け継いだ開拓者精神でウイスキー業界も先導していく。
1.概要
1883年創業の焼酎メーカー・小正醸造が開設し、2017年11月より生産スタート。
蒸留所名は「メローコヅル」の生みの親である小正醸造二代目「小正嘉之助」から命名。
東シナ海に面した吹上浜の広大な敷地に建つ嘉之助蒸溜所。
現在は四代目の小正芳嗣氏が指揮を執り、「焼酎造りの伝統と知見を活かした世界に通用するウイスキー」を目標に掲げています。
2021年6月に、メローコヅルで使用したオーク樽の熟成原酒を使った初のシングルモルトをリリース。
焼酎を製造している日置蒸溜蔵ではジンやグレーンウイスキーの製造も行っており、自社生産のモルトとグレーンによるブレンデッドウイスキーのリリースも視野に。
その他、地元アーティストとコラボした、アーティストエディションや年に一度のリミテッドエディション等のリリースも積極的に行う。
蒸留所の形がコの字型になっているのは、お客様を暖かく迎える包み込むようなものにしたいという想いから。
また蒸溜所内に併設されているショップ「THE MERROW BAR」から望む雄大な景色から「世界一美しい蒸留所」と称されています。
2.基本情報
2-1.オーナー
小正醸造
2-2.所在地
〒899‐2421
鹿児島県日置市日吉町神之川845-3
2-3.アクセス
【車】
≪高速道路≫
南九州自動車道「美山」ICから約10分(所要時間約35分)
≪一般道≫
国道3号線〜県道24号線〜国道270号線(所要時間約45分)
【JR】
鹿児島本線「伊集院」駅からタクシーで約15分
2-4.操業開始
明治16年(1883年)
2‐5.主力商品
現在クラフト蒸留所と言われる蒸留所において、充分な量の原酒を確保できるまでは、出荷本数を絞った限定発売が殆どで、定番商品と言える物が無いのが現状ではありますが、その中でも小正嘉之助蒸溜所が発売した『シングルモルト嘉之助』は定番商品として打ち出されたもので、2023年に発売されて一年過ぎた現在でも、ネット等で定価販売されているのを見かけます。
これは生産体制を大幅に強化した企業努力の賜物といえるでしょう。
【2023年】
インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ (ISC)金賞受賞
サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション(SFWSC)金賞受賞
東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)金賞受賞
【2024年】
ISC銀賞受賞
3.見学・ビジターセンター
有り。要予約
45分~1時間程度
タイムスケジュール
【土・日・祝日のみ】
10:30~11:30
【火・木・土・日・祝日】
13:30~14:30
※夏季臨時開催
7月23日(火)~8月16日(金)までの間
火曜~金曜日13:30~14:30
大人1,000円(テイスティングを含む)
子供500円(ソフトドリンク含む)
休館日
毎週月曜日、年末年始
予約はこちらから
3‐1.周辺グルメ情報
車移動必須。
蒸留所付近は海沿い且つ大きな交通機関も無いため、行ける手段も限られているので
宿泊は必須かつタクシーなどの予約も必須と、ハードルがやや高いという印象。
しかし毎年11月初旬に行われる「日置・嘉之助蒸留祭」ではその日だけ特別にシャトルバスが運行されます。
その日を狙ってみるのも、おすすめかも知れません。
もちろん鹿児島市内に戻れば、国産黒豚を使ったとんかつや魚介も盛りだくさんです。
3‐2.観光宿泊
蒸留所から少し北に江口浜方面へと進むと、東シナ海を眺められるリゾートホテルや温泉などが点在しています。
せっかくの鹿児島旅行なら、南国気分に浸れる海の近くのホテルで、オーシャンビューを独り占めも選択肢の一つ。
4.製造スペック
一日2.2トンの二交代制で早朝5時から22時までフル稼働しています。
ポットスチルはランタンヘッド一台とストレート二台の計3台があり、それぞれラインアームの向きも全て違います。
更には容量3,000リットルの再留釜は初留釜に切り替えが可能になり、より複雑で多様な原酒の造り分けを生み出す事ができます。
通常屋外に設置してある事が多いワームタブが屋内に設置されているのも特徴ですが、これには理由があり、海が近いため外に置くと設備の劣化が早いことや、焼酎の製造でのスタイルを踏襲している事から。
現在ノンピート約8割、ピート約2割の比率で製造しています。
蒸溜所立ち上げ当初の2017から2019年頃まで使用していたイギリスの麦芽は、マントン社がメイン。
現在はマントン社、ベアード社、クリスプ社、ポールズモルト社、と様々なモルトを使用しています。
因みに嘉之助蒸溜所では、ハスク:グリッツ:フラワーが「2:6:2」でグリストを製造しています。
生産量 | 22万リットル(LPA) |
仕込み水 | 非公表 |
仕込み量 |
ワンバッチ1トン(年間約400回)一日約二回仕込み |
モルトミル | ドイツカンゼル社製ローラーミル |
糖化槽 | 三宅製作所製ステンレスセミロイタータン1基(6000リットル) |
麦汁量 | 5200リットル(糖度約14度) |
発酵槽 | 三宅製作所製ステンレス5基(約7000リットル) |
ポットスチル | 初留 三宅製作所製ストレート型1基(ラインアーム水平)6000リットル 再留 三宅製作所製ストレート型1基(ラインアーム下向き80度)3000リットル 三宅製作所製ランタン型1基(上向き100度)1600リットル |
冷却装置 | ワームタブ |
ボトリング設備 | 無し(小正醸造で行われる) |
熟成庫 | ラック式約1000樽3棟 約200樽1棟 約600樽1棟 |
5.熟成環境について
ステンレス製発酵槽などは焼酎蔵と同じように床に埋め込まれており、その周囲には発酵中の温度を一定に保てるカバーが付いているのも大きな特徴の一つです。
夏は湿気があり涼しい環境で、冬には強い海風の影響を受けます。
季節の変わり目には霧がよく立ち込め、時期によっては海霧も発生します。
夏は35〜36℃になり冬は0℃を下回り、年間40℃ほどの激しい寒暖差になります。
これによりエンジェルスシェアは大胆に進みます。
6.蒸留所ストーリー
6-1.歴史
1883年 (明治16年) | 小正商店(現小正醸造)創業 本格焼酎「小鶴」販売 |
---|---|
1951年 (昭和26年) |
焼酎の樽詰めを開始 |
1957年 (昭和32年) |
日本初となる全量樽熟成焼酎「メローコヅル」発売 |
2017年 (平成29年) |
ウイスキー製造免許取得、蒸留所を開設 ウイスキー仕込みを開始 |
2018年 (平成30年) |
一般公開を開始 「嘉之助 ニューボーン2018 ホワイトオークカスク 8ヶ月 ノンピート」発売 日置蒸溜蔵においてスピリッツ製造免許取得、「KOMASA GIN」発売 |
2019年 (令和元年) |
「嘉之助 ニューボーン 蒸溜所限定第1弾 2019」発売 |
2020年 (令和2年) |
樽販売のカノスケ オーナーズ クラブ募集を開始 「嘉之助 ニューボーンハンドフィルボトル2020」「嘉之助 ニューボーン2020 ピーテッド」 発売 日置蒸溜蔵においてウイスキー製造免許取得 |
2021年 (令和3年) |
「シングルモルト嘉之助2021 First Edition」「同 Second Edition」「シングルモルト嘉之助 蒸溜所限定 #001」発売 ウイスキー製造事業を分社化し、小正嘉之助蒸溜所株式会社を設立 英大手ディアジオからの資本参加を発表 |
2022年 (令和4年) |
「シングルモルト嘉之助 蒸溜所限定 #002」「同 #003」「同 #004」「同 #005」「シングルモルト嘉之助 Artist Edition #001」「シングルモルト嘉之助2022 Limited Edition」発売 |
2023年 (令和5年) |
定番商品「シングルモルト嘉之助」発売 「シングルモルト嘉之助 蒸溜所限定 #006」「シングルモルト嘉之助 Artist Edition #002」「シングルモルト嘉之助 SHIROYAMA HOTEL kagoshima 60th ANNIVERSARY SELECTION」「シングルモルト嘉之助2023 Limited Edition」 日置蒸溜蔵で造られた原酒を嘉之助蒸溜所熟成庫で樽熟成した「嘉之助 HIOKI POT STILL」発売 |
2024年 (令和6年) |
「THE STORY OF KANOSUKE JAL Limited Edition」「嘉之助 DOUBLE DISTILLERY」発売 嘉之助蒸溜所ブランドローンチイベント「The Mellow Experience」開催 |
6-2.歴代のブレンダー
マスターブレンダー 小正芳嗣
昭和53年5月3日生。姉と弟の三人兄弟。
学生時代は中学はバスケ、高校はラグビー、大学はアメフトと肉体系のコンタクトスポーツを多く経験。
2001年東京農業大学農学部醸造学科卒業。
2003年東京農業大学大学院 醸造学専攻卒業。同年小正醸造株式会社入社。
2005年小正醸造株式会社 取締役経営戦略本部長。
2008年常務取締役 経営戦略本部長兼生産本部長
2012年専務取締役 経営戦略本部長兼生産本部長
2018年8月代表取締役社長。
2021年8月小正嘉之助蒸溜所株式会社 代表取締役社長。
小正醸造株式会社 取締役相談役。
東京農業大学大学院時代の修士論文は「甘藷焼酎の熟成に関する研究」
日本の蒸留酒である焼酎造りを原点に、世界の蒸留酒であるウイスキーという舞台で戦っていく。
全ては焼酎を世界にもっと届ける為に。
チーフブレンダー 中村 俊一
1977年鹿児島生まれ、鹿児島育ち。
鹿児島大学大学院水産学研究科修了。
2005年に小正醸造株式会社入社、製造課に配属後、営業課、貯酒管理などを経て2020年より所長兼チーフブレンダーに就任。
現在は生産管理、ブレンド、商品開発に携わる。