サントリー山崎蒸溜所:見学訪問レポート

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山崎蒸溜所

2023年は、ジャパニーズウイスキー100周年という記念すべき年。
ちょうど今から100年前に、寿屋(現・サントリー)の鳥井信治郎と竹鶴正孝が、京都と大阪の県境に建てたのが「山崎蒸留所」。
ここで100年に渡りウイスキー製造が続けられ、現在のジャパニーズウイスキーの礎を築いてきたと言っても過言ではありません。

さて、私達は2023年3月19日の「桜尾蒸留所」見学訪問の翌日、2023年3月20日に改修工事に入る前の「山崎蒸留所」を見学訪問して参りました。

山崎蒸留所の歴史=日本のウイスキーの歴史でもあり、ジャパニーズウイスキー100周年を”知る”為にはまずは山崎蒸留所を知る事がとても重要な事だと思い体験してきました。

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1.山崎蒸留所見学のオンライン予約

山崎蒸留所を見学する場合、オンライン予約が必須となりますが、現在見学施設は改修工事中の為オンライン予約も中止しています。2023年秋頃に見学再開予定との事です。

ここ数年は「シングルモルト山崎」の購入を求めて蒸留所見学に訪問する人が急増し、オンライン予約も非常に困難な状況が続いていました。中には、蒸留所見学ではなく、商品の購入が目的で訪問する方も多くいたようで、山崎蒸留所は対策として今年の春くらいから蒸留所での「シングルモルト山崎」の販売を中止しました。それ以降、オンライン予約は比較的しやすくなったのではないかと思います。

それでも、予約開始日当日の夕方には、ほぼ売切れ状態になっていましたので、今秋の予約再開の際には予約開始日の午前中に予約される事をオススメします。

現在、山崎蒸留所の見学は休止していますが、サントリー山崎蒸留所のホームページには、VRを活用した「蒸留所360°フリーツアー」や「有料オンラインライブ」などのコンテンツも豊富に用意されており、現地に行かなくても十分に体験する事が出来ますので、まずはそちらをお楽しみ下さい。

https://www.suntory.co.jp/factory/yamazaki/

2.大阪から山崎蒸溜所への道のり

さて、私達一行は、前日の桜尾蒸留所訪問後、翌日の山崎蒸留所訪問に備えてその日のうちに大阪へ移動しました。当日は、10:20に有料見学ツアーを予約してたので、朝9:10に大阪駅を出発しました。

https://jpwhisky.net/sakurao-distillery-report-25408/

①JR大阪駅からJR京都線快速にて約27分

②JR山崎駅到着。徒歩約10分で山崎蒸留所へ到着。

山崎駅に到着し、改札を出ると周囲見渡しても山崎蒸留所らしき建物は見当たらず、一瞬「あれ?」と思ってしまいますが、順路に従って歩いていくと徐々に見えてきます。

名称

サントリーホールディングス株式会社
サントリー山崎蒸溜所

所在地

〒618-0001大阪府三島郡島本町山崎5-2-1

歩き進めていくと、途中から山崎蒸留所の建物が見えてきます。この辺りからかなりテンションが上がってきます。そして踏切を渡ったところには、昔使用されていたものと思われる蒸溜機が現れます。

その先に、いよいよ山崎蒸留所の入口が見えてきます。

一番手前の建物に、見学ツアーの受付があり、到着するとすぐに係員の方に声を掛けられてツアーの内容と人数を確認され、時間になるまで所定の位置で並んでいるよう指示を受けます。
受付完了後は、有料ツアー開始時間までにウイスキー館の2Fに集合するよう案内されます。それまでしばし山崎ウイスキー館を堪能します。

3.山崎ウイスキー館

有料見学ツアーまでの待ち時間だけでは到底楽しむには時間が足りない「山崎ウイスキー館」
サントリーの歴史や過去の資料、商品展示、ディスティラリーショップ(売店)、有料試飲カウンター、サンプルボトルの展示など、山崎蒸留所の魅力が詰まったビジターセンターとなっています。

3-1.サントリー歴史資料展示ブース

1Fのサントリーの歴史資料の展示ブースでは、創業者鳥井信治郎氏の寿屋時代のウイスキー製造の開始から、2代目佐治敬三氏がサントリーに社名変更し、シングルモルト山崎の誕生、そしてウイスキー事業の発展、その後のサントリーウイスキーの軌跡を当時の関係者や、宣伝ポスター、商品ボトルの展示などを見ながら楽しむ事が出来ます。

3-2.ディスティラリーショップ(売店)

2Fのディスティラリーショップ(売店)では、山崎蒸溜所限定ウイスキーの「山崎蒸溜所」とモロゾフの山崎蒸溜所チョコレート、テイスティンググラスのセットが3548円(税込)で購入できます。

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サントリー 山崎蒸溜所 シングルモルト 限定 箱付き SUNTORY YAMAZAKI SINGLE MALT WHISKY  alc40% 300ml

蒸溜所見学は事前予約制となっている為、混雑することなく快適に過ごすことができますが、私達が訪問した午前中は参加者の2/3程は海外からの旅行客で売店に並ぶ限定ウイスキーはたちまち売切れになっていました。(見学が終わってから再度売店に行くと、商品は補充されていました)

3-3.圧巻のサンプルボトル

1Fの資料展示ブースと有料試飲カウンターとの間の通路は、山崎蒸溜所のサンプルボトルが左右全面に並ぶ圧巻な景色が続きます。バーボン樽、新樽、シェリー樽など様々な樽で熟成し、透明なボトルに入ったウイスキーの色も様々で、とにかく圧巻です。

3-4.有料試飲カウンター

1Fの有料試飲カウンターでは、サントリーの殆どのウイスキーをとてもリーズナブルな価格で試飲する事が出来ます。更に、山崎蒸溜所のニューメイクや、限定の山崎リミテッド、響ブロッサムハーモニーも試飲可能。折角蒸溜所に来たのならば、と多くの方は「サントリー超熟セット(山崎18年白州18年響21年、各15ml)を注文されていました。私達は、BAR新海でも提供していない、山崎25年白州25年響30年を堪能させて頂きました。

4.有料見学ツアー(一人1000円)

山崎ウイスキー館を堪能する間もなく、有料見学ツアーの時間になり、2Fのウイスキー製造工程の模型が並んでいるところへ集合します。どのくらいの人数で回るのだろうかと思いましたが、意外にも少なく集まったのは20人~30人程でした。ガイドさんより見学の流れの説明を受けいよいよツアー出発です。

製造現場へ→マッシュタン(糖化層)とウォッシュバック(発酵槽)→蒸留塔で12基の蒸溜機を見学→熟成庫→中庭→テイスティングの順で進んでいきます。

4-1.仕込(糖化・発酵)

最初に案内されるのは、「仕込(糖化・発酵)」の工程です。
部屋に入るなり驚かされるのは、その設備の巨大さです。マッシュタン(糖化層)は、私達がこれまでに見てきたクラフトウイスキー蒸溜所のサイズとは比較にならない大きさでした。
ウォッシュバック(発酵槽)は、木製(オレゴンパイン)で8基。その他にステンレス製の発酵槽が12基あるとの事。また、山崎蒸溜所で使用されている麦芽はスコットランドから輸入されたものが殆どとの事です。

4-2.蒸留

蒸留塔は管理上、中での立ち止まりと写真撮影はNGとされ、中に入る手前のドアの外からの写真撮影のみ許されています。


蒸溜機は初留6基、再留6基が左右に並び、これまた圧巻の眺め。蒸留基は長く使用していると色がくすんでくると聞きますが、山崎の蒸溜機はどれも金ピカに輝いていました。


多彩な香味の原酒を作り分ける為に、蒸留基の形状やアームの角度も様々。見学ルートの12基の蒸留基の他、2013年に4基増設され、合計16基の蒸溜機が稼働しています。

4-3.熟成庫

蒸留塔の隣の建物を階段で登り、地上から4階程の位置になるでしょうか。熟成庫に案内されます。
熟成庫に入ると天井はそんなに高くなくひんやりとした建物の中。ダンネージ式で2~3段に積まれた樽が建物内の奥までぎっしりと貯蔵されています。

山崎蒸溜所で使われている樽のサイズについて案内を受けます。もっとも多くつかわれれているのがパンチョン樽。その他、バレル、ホグスヘッド、ミズナラ樽、パニッシュオーク樽、赤ワイン樽が並ぶ。


透明の天板で中の原酒の残量と色が異なった樽で、熟成中のエンジェルズシェアと色の変化についても説明を受けます。


熟成庫内移動中、1924年に蒸溜された「わが国初のモルトウイスキー原酒の熟成樽」にお目にかかる事が出来ます。中の原酒は既に抜かれていて、今は新たなニューメイクが詰められて次の熟成が進んでいるようです。

貯蔵されている熟成中の樽は、天板に熟成年が記載されています。蒸溜年も様々で、ついつい自分の生まれ年を探してしまいます。
白い鏡板がモルトウイスキー、黒の鏡板が知多蒸溜所から持ってきたグレーンウイスキー。ミズナラ樽には、樽の端に「和」の文字が記載されており、更にその横に「正」の字が書かれていて、その樽が何回目の使用なのかが分かるようになっているそうです。

4-4.テイスティング

熟成庫を抜けると、風情ある中庭にたどり着きます。残念ながら、桜の開花前で、美しい景色にお目にかかる事はできませんでしたが、水のせせらぎと自然に心癒されるスポットでした。


ウイスキー館の方向に戻り、ウイスキー館の隣の建物内に既にテイスティングの準備がされていました。
テイスティングは、ガイドの方の丁寧な進行で進んでいきます。テイスティングの方法を詳しく聞きながら、真似をしながらテイスティングを進めていきます。

テイスティングは、3種類用意されていて、①ホワイトオーク樽原酒、②ワイン樽原酒、③シングルモルト山崎、更に④シングルモルト山崎が1杯分用意されており、お好みの飲み方でお試しください。との事。更にテイスティングのお供にお菓子とチョコレートも用意されています。

前のスクリーンでは、その原酒毎の香味のイメージが映し出され、実際のテイスティングで感じる香味との答え合わせをしながら進んでいく感じになります。

①ホワイトオーク樽原酒は、山崎の味のベースを作る原酒で、香ばしいナッツやトーストの香り、麦の味わいなど。
②ワイン樽原酒は、イチゴやサクランボ、ベリー系のイメージ。
①②のキーモルトをブレンドして作られるのが③シングルモルト山崎
④はお好みの飲み方で・・・と言われるが、ガイドの方の案内で一同ハイボールを作っていく流れになります。用意されたかち割氷をグラスにぎっしりと詰め、ウイスキーを注ぎ、しっかりとステアします。更に空いたところへ氷を詰め、最後にサントリープレミアムソーダをゆっくりと注ぎ入れます。最後に1回転ステアして完成。

今回の有料見学の料金は一人1000円でしたが、製造現場の見学だけでも1000円以上の価値があるのに、テイスティングでは普段飲む事の出来ない原酒2種類と、シングルモルト山崎を2杯も頂けますから、その価値は数千円を超えると感じました。

最後に、ディスティラリーショップで山崎のミニボトルとチョコレートのセットが購入出来る事と、シングルモルト山崎700mlボトルの抽選購入の案内を受けます。
テイスティング終了後、抽選購入の申込を行い、見学からテイスティングまでの全ての行程が終了となります。

4-5.見学ツアーのまとめ

一連の見学ツアー終了後は、冒頭で説明しました「山崎ウイスキー館」での有料試飲カウンターにて、様々なウイスキーの試飲を楽しみつつ、ディスティラリーショップでお買い物も楽しんだのですが、東京への戻りの新幹線の時間も迫っており、落着いて試飲を楽しむ事が出来なくなりそうでしたので、急遽新幹線の時間を1時間遅らせました。
じっくりと、普段飲むことが出来ないレアな山崎、白州、響を堪能させて頂きました。

山崎蒸留所を訪問される方には、現地での滞在時間をしっかりと確保しておくことをお勧めします。今回私達は、9:50に山崎蒸留所へ到着し、10:20の見学開始、有料試飲カウンターでのテイスティング終了が13:00でしたので、約3時間の滞在でした。正直3時間でも足りないくらいだなぁと感じましたので、しっかりと楽しみたい方は4時間くらいの滞在時間の確保が良いのではないかと思います。

5.寿屋、サントリー、鳥井信治郎の凄さを知った

今年100周年を迎えた「サントリー山崎蒸留所」の凄さをひしひしと感じた今回の訪問。
当時まだ「寿屋」だった頃、日本でウイスキーが殆ど飲まれていない時代にウイスキー造りを決断して、山崎蒸留所を建てた鳥井信治郎の情熱と決断は、とてつもない物だったと想像します。
当時、赤玉ポートワインで稼いだ資金を利益にならないウイスキー事業に注ぎ込むほど、ウイスキーへの将来性を感じていたのだと思います。経営者としてもなかなか判断出来る事ではないと思います。

そして今日までの100年の間に「サントリーオールド」や「シングルモルト山崎」、「響」、そして「白州」、「角瓶」、などのヒット商品を次々と世に送り出してきました。
しかし、途中ウイスキー低迷期も到来し、ウイスキーが売れない時代も訪れました。多くのウイスキー蒸留所が休止や廃業に追い込まれる中、サントリーは造り続けました。そしてウイスキーの研究を続けました。

2003年以降、サントリーウイスキーは世界的なスピリッツコンペで数々の賞を受賞します。それから世界中が日本のウイスキーを評価し、瞬く間に日本のウイスキーが人気になり、価値が上がりました。日本のウイスキーの地位が確立した事に対するサントリーの功績は非常に大きいものだと感じました。

今年の秋頃に改修工事が終わり、山崎蒸留所の見学が再開になります。リニューアルした山崎蒸留所見学がどのようにリニューアルするのかも興味深いですね。是非訪れてみたいものです。

この記事を書いた人
新海 博之

1981年7月17日 北海道北広島市出身
大学卒業後、NTTデータカスタマサービス㈱へ新卒入社。
2010年「麻布十番BAR新海」を開業 → 2016年、名物「薬膳カレー」を開発 → 2018年「虎ノ門BAR新海」、2019年には「芝大門BAR新海」を開業 → 2020年 ウェブメディア「Japanese Whisky Dictionary」をスタート。
バーテンダーの私達だから出来る事として、ジャパニーズウイスキーの魅力を日々発信する。

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ジャパニーズウイスキーディクショナリー
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