泡盛久米仙で知られる久米仙酒造が手がけるライスウイスキー「沖縄ISLANDBLUE」。
『那覇蒸溜所』の見学内容をもとに、同社のウイスキー造りの現在地をレポート。
不況の泡盛、作り続けてきた伝統酒

久米仙といえば泡盛のブランド。沖縄県外でも認知されている方はかなり多くいらっしゃるかと思います。
ですが、現在日本において、焼酎蔵、泡盛酒造は需要が減っているのが現状です。
「飲み手を育ててこられなかった」。そう語るのは久米仙酒造の製造部工場長の松村氏。
かねてより樽熟成の泡盛など、挑戦は行ってきたものの、古酒として製造した泡盛は売れ行きが芳しくなくなっていきました。
ウイスキー造りへの挑戦、きっかけ
現在ウイスキーを製造する背景には、泡盛が十分に売れず、再活用とセールスを模索する中で、泡盛をベースに「ウイスキーに近いリキュール」の製造を行ったところ、アメリカから購入のオファーが入ります。
アメリカではバーボンには厳格な規定がある一方で、ウイスキー全体の定義は比較的緩やか。
そのため、久米仙の原酒はアメリカ国内で「ウイスキー」として販売されるに至ります。
その発想を用いて、泡盛をもう一度蒸溜し、グレーンスピリッツを製造、熟成。ボトリング時に10%以上のモルトウイスキーをブレンドし、「沖縄ISLANDBLUE」が誕生しました。

主力製品は三種類だが、限定品も多く扱っている。
原料・蒸溜設備
原料は泡盛のタイ米を主体としつつ、製造を行い、モルトウイスキーも製造。
お米の扱いについては、長年泡盛造りで培ってきたノウハウがそのまま生かされている点が印象的です。
発酵に使用する酵母は、当初はピナクルMを採用していたが、現在は複数の酵母を併用し、酒質の幅を持たせる取り組みが行われています。

粉砕機

マッシュタン

スピリッツセーフと減圧蒸留器
蒸溜設備は、中国製のものを使用し、銅製のポットスチルも同社のもの。
1バッチ400kgで仕込みを行っている。週4回の仕込み体制で、初留・再留ともに同一の蒸溜器を使用する。冷却装置を備えていないため、夏場は蒸溜を行わない。高温環境下では酒質が過度に重くなってしまうためだ。
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ウイスキー原酒の製造に関しては、初留をステンレス製スチルによる減圧蒸溜で製造も行ったことも。
銅製ではないものの、減圧蒸溜によってオフフレーバーはかなり除去できており、泡盛製造の延長線上にある合理的な選択とも言えます。
かつては泡盛をそのまま40%前後で樽詰めしていた時代もあったそうですが、その度数では樽由来の熟成感がほとんど得られなかったそう。
現在は再留を施した泡盛原酒を樽詰めすることで、より明確な熟成表現を出せるようになっている。
南国での熟成トライアル
熟成に使用する樽は、バーボン樽、シェリー樽、スパニッシュオーク樽、STR樽、泡盛樽など多岐にわたる。
泡盛熟成用の樽の中には、40年前に先代がアメリカまで直接買い付けに行ったものも含まれており、現在保有する樽は約1,000樽。
見学した際には屋外で縦置きで熟成が行われていました。
沖縄の気候は熟成においては極めて過酷ともいえます。
エンジェルズシェアは年間10%以上、無風状態で倉庫内熟成を行うと15%近くに達することもあるそう。
あえて屋外に樽を置くことも、より厳しい環境下での熟成実験を行っており、今後は泡盛樽の特性を、ウイスキーにも本格的に生かしていく方針だという。
現在では熟成した原酒の樽の詰め替え作業も行っており、色や香り、原酒特性を見ながら樽を選んでいるそうです。
まとめ
沖縄アイランドブルーや麦芽の代わりに発芽玄米を使用したライスウイスキー製品は「ジャパニーズウイスキーの定義」から外れることは蔵元自身も良く理解されていました。
それでもなお、久米仙酒造が目指すのは、泡盛で培った技術と発想を用い、沖縄の風土を活かした「自分たちにしか作れないウイスキー」。
すでに発芽玄米を使用した、大分県産米とウイスキー「倭穀」や、ライスウイスキー「湘南はるみ」など、ジャポニカ米+発芽玄米での製品も製造・商品化を行っています。
現在の目標は、県内産ジャポニカ米を使ったライスウイスキーの実現。テロワールを明確に打ち出し、
「沖縄だからこそ生まれるウイスキー」を形にしていくことに、那覇蒸溜所の挑戦は向かっています。





