知多蒸溜所(サントリーホールディングス)|蒸留所詳細情報

ウィスキー蒸留所
ウィスキー蒸留所
知多蒸溜所

1972年設立。サントリーが誇る日本最大級のグレーンウイスキー蒸留所。

スポンサーリンク

1.概要

1972年にサントリーと全国農業協同組合中央会(JA)との共同出資で設立された「株式会社サングレイン」によって知多蒸溜所は設立されました。
山崎蒸溜所と白州蒸溜所のちょうど真ん中に位置する愛知県知多半島の臨海工業地帯の一角にあり、自然豊かな場所に立地しているというイメージの強い蒸留所とは様相を異にしています。
サントリーのブレンデッドウイスキーにおけるグレーン原酒の多くが、この蒸留所で作られています。
隣にサイロと呼ばれるJAが持つ超巨大な倉庫があり、穀物を大量に保存できる為、大量のグレーン原酒を滞りなく生産する事が出来ます。
その他、工業用アルコールやチューハイに用いられるスピリッツなども生産されています。
ちなみに見学等の一般受け入れは受け付けていません。

2.基本情報

2-1.オーナー

サントリー(サントリーホールディングス)

2-2.所在地

〒478‐0046
愛知県知多市北浜町16

2-3.アクセス

【車】
朝倉駅より車で約5分

2-4.操業開始

1973年(昭和48年)

2‐5.主力商品

5代目チーフブレンダーである「福伸二」氏が生み出した、シングルグレーンウイスキー『知多
世界でも類を見ない、グレーン原酒を造り分けるという事に挑戦。
現在、クリーン、ミディアム、ヘビーの3種類に加え、更にホワイトオーク樽、スパニッシュオーク樽、ワイン樽と3種類の樽熟成でより多彩な造り分けを行っています。
山崎白州のラベルデザインにもこだわりが見えるように、知多もひとかたならぬこだわりがあり、ラベルの文字は書道家「荻野丹雪」氏によるもの。
「多」のはらいの部分は、知多半島の風をイメージされているようです。

シングルグレーンウイスキー知多の受賞歴
2017年ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)
前身となる「シングルグレーンウイスキー 知多蒸溜所」金賞受賞
2020年金賞受賞
同年TWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)銀賞
2021年TWSC銅賞
2022年TWSC銀賞

3.見学・ビジターセンター

一般見学は受け付けていません。

3‐1.周辺グルメ情報

見学は出来ませんが、外からでも十分にその大きさは伝わります。
もし近くに立ち寄ってみた後はこちらでお食事でも。

3‐2.観光宿泊

4.製造スペック

モロミ塔、抽出塔、精留塔、精製塔の4塔による全長30メートルの巨大多塔式連続式蒸留機をメインに、2022年にカフェ式連続式蒸留機を導入し、現在二基が稼働しています。
4塔のうち、全て使用すればクリーン、3塔ならミディアム、2塔ならヘビータイプの原酒を造り分ける事が可能です。
その他、スピリッツ製造用のスピリッツ塔2塔も稼働しており、工業用アルコールや、チューハイに使用される原酒などの、サントリー社の飲料全般の製作拠点として大きく支えています。
使用される原料はアメリカ産イエローデントコーン(とうもろこし)とフィンランド産などの大麦麦芽を糖化促進の為に一割ほど使用。

生産量
仕込み水木曽川水源とする愛知用水(硬度18度、軟水)
原料アメリカ産とうもろこし(90%)フィンランド産大麦麦芽(10%)
仕込み量
モルトミルハンマーミル
糖化槽グレーンウイスキー用クッカーで糖化
麦汁量
発酵槽ステンレス製長大ファーメンター12基(72万~75万リットル)
発酵時間50~85時間
ポットスチル多塔式連続式蒸留機4塔
カフェ式2塔式連続式蒸留機
※どちらもスチーム加熱式
冷却装置シェル&チューブ プレート式
 ボトリング設備無し
熟成庫無し

5.熟成環境について

知多蒸留所には熟成庫が存在しません
生み出された原酒は山崎蒸溜所、白州蒸溜所、近江エージングセラーにて代わりに熟成貯蔵されています。
サントリーの貯蔵能力は3拠点全体で約170万樽と言われています。

6.蒸留所ストーリー

6-1.歴史

1972年
(昭和47年)
サントリーと全農グループ共同出資によりサングレイン設立
1973年
(昭和48年)
知多蒸溜所竣工。グレーンウイスキー製造開始
1977年
(昭和52年)
グレーンウイスキー製造第2プラントを増設
1980年
(昭和55年)
グレーンウイスキーの年間生産量4,000万リットルを達成
1985年
(昭和60年)
スピリッツ製造開始
1996年
(平成8年)
原料用アルコールの製造を開始
1997年
(平成9年)
バイオマスボイラー採用
2000年
(平成12年)
知多蒸溜所特製グレーン』発売
2004年
(平成16年)
知多蒸溜所がSMWSのグレーンウイスキー蒸留所に登録される(G13番)
2005年
(平成17年)
本社を東京から知多市へ移転
2008年
(平成20年)
創業からの累計蒸留量10億リットル突破(年平均約2600万リットル)
2013年
(平成25年)
知多蒸溜所40周年記念シングルグレーン』発売
2014年
(平成26年)
『シングルグレーン知多蒸溜所』発売
2015年
(平成27年)
『シングルグレーン知多』発売
2017年
(平成29年)
グレーンウイスキーの年間生産量5,000万リットル超を達成
2018年
(平成30年)
ザ・エッセンス・オブ・サントリーシリーズ
『シングルグレーン知多蒸溜所ワイン樽4年後熟』発売
2019年
(平成31年)
サングレインからサントリー知多蒸溜所へ社名変更
2020年
(令和2年)
ザ・エッセンス・オブ・サントリーシリーズ
『シングルグレーン知多蒸溜所(桜樽後熟ブレンド)』発売
2022年
(令和4年)
カフェ式連続式蒸留機1セットを新たに設置、稼働開始

6-2.歴代のブレンダー

初代マスターブレンダー「鳥井信治郎」

言わずと知れた寿屋創業者「鳥井信治郎」は、元々嗅覚がすぐれており、大阪の鼻と称されたほど。
丁稚奉公に出た先が薬種問屋で調合のノウハウをそこで体得したと言われています。
「やってみなはれ、やらな分からしまへん」が口癖でその精神は、現在のサントリーの基幹となっているのは言うまでもありません。
二代目マスターブレンダーである、佐治敬三とはよく親子喧嘩をしていたそうで、社長室からおまえはへんこつや!と怒号が毎日のように飛んでいたそうです。
荒い気性のその一方で、困っている人の元へはいち早く駆け付けるという義理堅い一面も。

↓2万文字越え、BOOKMARK推奨!ウイスキーと共に生きた「鳥井信治郎」の生涯と日本の歴史↓

「鳥井信治郎」の事をもっとよく知りたいという方にオススメしたい書籍を紹介します。

チーフブレンダー「大西為雄」

白州蒸溜所のマザーウォーター(仕込み水)となる白州・尾白(おじら)川の地下水を、花崗岩を通った白州・尾白(おじら)川の地下水を発見した人物。
より良い水質を求める執念から「水の狩人」の異名を持つ「大西為雄」は、戦後の影響から海外からの樽の仕入れが困難になった時、代わりになるミズナラの木を最初に樽材として見出した人物とされています。
1963年~70年の間、第8代山崎蒸溜所工場長を務めています。

画像引用:サントリ―HD

二代目マスターブレンダー「佐治敬三」

二代目寿屋社長、サントリー中興の祖として知られる「佐治敬三」は、鳥井家の次男にあたります。
信治郎の勧めで大阪帝国大学理学部化学科にて、ウイスキーに含まれる高級アルコールに影響を及ぼす、アミノ酸の合成をテーマとした研究をしていたと言われています。
長男吉太郎が二代目を継ぐ予定だったが33歳の若さで早逝した為、次男である敬三が継ぐ形となりました。
佐治姓については謎が多く、諸説あります。当サイト歴史コンテンツ内にて、佐治姓について触れている記事がありますので、こちらも併せてご覧ください。


先代の信治郎が苦戦し、一度は撤退したビール事業を再開させた事でも有名で、1967年に非熱処理の瓶の生ビール「純生」を発売しました。
公共広告機構(現在のACジャパン)の発起人であり、芸術への造詣が深く、「サントリー美術館」「サントリーホール」など日本の文化事業向上にも貢献しています。
1973年に白州蒸溜所を建設しシングルモルト「白州」を発売。

創業90周年の節目に、1989年「人と自然と響きあう」をテーマに、後に酒類世界的コンペティションで殿堂入りを果たすブレンデッドウイスキー「響」を発売。

余談ですが、サントリーの管理職たちは社長の敬三から渡される、通称「マルめ」と呼ばれる指示が書かれたメモ紙(しかも不要になった裏紙)に戦々恐々としていたそうです。
敬三の○にkのサインがひらがなの「め」に見えることからそう名づけられました。
元々は、敬三が専
務時代に宣伝制作係長であった山口瞳が、チラシの裏紙に部下への指示を書いたメモを回していたのを取り入れたのではないかと言われています。

チーフブレンダー「佐藤乾」

佐治敬三氏と共に現在のシングルモルト『山崎』を2年の歳月をかけて生み出した人物。

チーフブレンダー「稲富孝一」

元サントリーチーフブレンダー。
輿水精一チーフブレンダーの元上司であり、あの『響17年』の開発者。


1968年には、スコットランドのヘリオット・ワット大学に留学、醸造学の基礎研究で博士号を取得。
2000年にサントリーを退社後、グラスゴー大学の客員研究員として、スコッチウイスキーの産業史を研究に従事。
2016年には世界的なウイスキー専門誌『ウイスキーマガジン』が認定する「Hall of Fame」を受賞。
日本人として史上2人目となる“ウイスキー殿堂入り”を果たす。

三代目マスターブレンダー「鳥井信吾」

1953年生まれ。甲南大学卒業。南カリフォルニア大大学院修了。
92年取締役、03年副社長、12年関西経済同友会代表幹事、14年より副会長、大阪商工会議所副会頭。
創業者の鳥井信治郎氏は祖父、二代目社長の佐治敬三氏は伯父に当たる。
02年よりマスターブレンダー就任。

画像引用:Wikipedia

画像引用:Wikipedia

チーフブレンダー「輿水精一」

輿水精一 (こしみず せいいち)
1949年生まれ 山梨県出身
1973年 サントリー入社 多摩川工場配属
1976年 中央研究所、酒類食品研究所でウイスキーの貯蔵、熟成の研究に従事
1985年 山崎ディスティラリー(現山崎蒸溜所)(貯蔵担当)
1991年 洋酒研究所ブレンダー室へ
1996年 ブレンダー室主席ブレンダー
1999年 ブレンダー室チーフブレンダー
2014年 名誉チーフブレンダー
2015年 Whisky Magazine誌のHALL of FAME入り
<現在の活動>
・関西大学客員教授
・山梨大学客員教授
・やまなし大使
・株式会社ハセラボ 代表取締役副社長

チーフブレンダー「福與 伸二」

1961年愛知県生まれ。名古屋大学農学部農芸化学科卒業。
1984年サントリー株式会社(当時)に入社。
白州ディスティラリー(現在の白州蒸溜所)ブレンダー室を経て、1996年に渡英。
ヘリオットワット大学(エジンバラ)駐在や、モリソンボウモア ディスティラーズ(グラスゴー)への出向勤務の後、2002年帰国。
2003年に主席ブレンダー、2009年にブレンダー室長となり5代目チーフブレンダーに就任。
山崎の各種限定シリーズをはじめ、数多くのサントリーウイスキーを手掛けている。

7.その他の蒸留所一覧

日本のウイスキー蒸留所一覧(2024年2月更新・全103ヶ所)
2024年2月更新、最新のジャパニーズウィスキー蒸留所一覧、山崎蒸留所、白州蒸留所、余市蒸留所、宮城峡蒸留所、クラフト蒸留所の秩父蒸留所、厚岸蒸留所、ガイアフロー静岡蒸留所、マルス信州蒸留所、マルス津貫蒸留所、三郎丸蒸留所、安積蒸留所など全103ヵ所を一覧で総まとめ!
この記事を書いた人
万代 竜一

福岡県福岡市出身
福岡にある中洲のBARで14年間修行後、俳優業での活動の拡大も兼ねて2018年上京。俳優佐藤二朗氏作の舞台にて東京初舞台を踏む。特技はギターとビール好きが高じてビール銘柄をブラインドで当てられる事。
最初はウイスキーを飲み慣れておらず苦手だったものの、深く知るにつれて作っている人達の想いが強い事に感銘を受けて、作り手の方達を知ってもらえる一助になれば、と思いJWDに参加。現在はウイスキーが大好き。

万代 竜一をフォローする
スポンサーリンク
ジャパニーズウイスキーディクショナリー
タイトルとURLをコピーしました