エッジの利いたテーマ『The Ultimate Peat.ピートを極める』を掲げ、スモーキーなウイスキーのみを作り続ける。古くからある造り酒屋でありながら、斬新な理念を持ち、日本初のボトラーズ事業や、次世代のポットスチルを独自に開発後、特許を取得するなど、その挑戦は伝統と革新をもたらし、日本のウイスキーを新しい産業へと押し上げていく風雲児。
1.概要
1862年創業の清酒蔵・若鶴酒造が開設した北陸初のウイスキー蒸留所。
2016年秋、老朽化していた蒸留所を改修するためのクラウドファンディングを実施し4000万円近くを集め一気に注目が集まります。
翌年2017年に現在の三郎丸蒸留所をオープン。
2018年には最新鋭のマッシュタンを導入、2019年には富山県高岡市の伝統産業である高岡銅器の技術を活かして世界初の鋳造製蒸留器「ZEMON(ゼモン)」を発明。
梵鐘メーカー老子製作所と富山県工業技術センターでタッグを組み共同開発しました。
また同時期、同じく富山県の南砺市井波地区に受け継がれてきた木工の伝統技術を活用し、地元の島田木材・山﨑工務店との協働プロジェクトとして、富山県産ミズナラ材を用いた「三四郎樽」の生産をスタートしました。
2021年には、シングルモルト通販モルトヤマの下野氏とともに、世界初と同時に日本初のジャパニーズウイスキー専門ボトラーズ事業「T&T TOYAMA」発足。
ゲームや漫画などのジャパニーズカルチャーとのコラボも多く、『SHIROBAKO』『花咲くいろは』『サクラクエスト』など、実在の職業を題材にした「お仕事シリーズ」で、多くのアニメファンを魅了する『P.A.WORKS』制作の劇場版アニメ『駒田蒸留所へようこそ』のモデルになるなど、ウイスキー好き以外のユーザーも大いに注目されています。
2.基本情報
2-1.オーナー
若鶴酒造
2-2.所在地
〒939-1308
富山県砺波市三郎丸208
2-3.アクセス
【JR】
JR城端線 油田駅から徒歩1分
2-4.操業開始
1950年(昭和25年)
ウイスキー製造免許の取得は1952年
2‐5.主力商品
2020年から定期的にリリースされるタロットカードシリーズ。
通常版と加水なしのカスクストレングス版の二本同時に展開されるのも大きな特徴。
2024年11月時点で『三郎丸ⅤTHE HIEROPHANT』が最新のリリースになります。
現在のところありません。
3.見学・ビジターセンター
自由見学は予約なしの当日受付で、ガイド付きなら予約制で見学が可能
【ガイド無し自由見学】
大正蔵にて当日受付
料金1,000円(試飲の際に使用するおちょこを別途500円で購入する必要あり)
見学時間10:00~14:30
最終受付14:30
閉場15:00
見学時間 約60分
内容 試飲用コイン2枚付き
コインは館内ゲーム機でも利用可能
音声ガイドにて自由見学
【ガイド付き見学】
見学時間:①10:40 ②13:20
料金4,000円
専用の見学コースをガイドと見学
試飲用コイン4枚付き
グラス、ウイスキー20ml(非売品)
と三郎丸オリジナルボールペンなどのお土産が付き。
試飲はお土産のグラスで。
※休業日 毎週水曜定休、年末年始
3‐1.周辺グルメ情報
周辺グルメというよりも同一敷地内にある『竈flamme 炭三郎』はマストでオススメ。
若鶴酒造の銘酒はもちろん貴重な三郎丸シリーズも飲め、おいしい和牛、肉寿司、ローストビーフ魚料理まで充実のラインナップで飲みすぎ食べ過ぎ注意です。
80名までの貸し切りにも対応しているので大人の修学旅行として見学後からの大宴会も。
3‐2.観光宿泊
田園地帯に農家が点在する散居村(さんきょそん)の美しい風景や、毎年ゴールデンウィークに開催されている『となみチューリップフェア』などが有名です。
なかでも散居村を一望できる展望台の夕日は砺波市の代名詞と言えます。
4.製造スペック
クラウドファンディングのすぐ後まではポットスチルは焼酎用のステンレス製を銅製に改造して使用していました。
2019年6月に梵鐘メーカー老子製作所と富山県工業技術センターでタッグを組み、共同開発された世界初となる鋳物製のスチル「ZEMON」導入。
その翌年には分割構造を改良し、容量、ラインアームの角度のカスタマイズが可能になった新型ZEMONとして稼働中。
「ZEMON」は銅が約90%、錫が約8%、亜鉛2%が含まれる銅錫合金により造られています。
錫は酒質をまろやかにする効能を持っており、表面に砂型による凸凹がついています。
この凸凹により蒸気との接触面積が増加し、銅と錫の効果を最大限に引き出します。
この「ZEMON」は令和2年度第36回素形材産業技術表彰で最高賞「経済産業大臣賞」を受賞。
その他、三郎丸蒸留所は発酵の進み具合が旺盛だそうで、泡の発生を抑制するための「消泡剤」を使用することもあるそう。
生産量 | 15万リットル |
仕込み水 | 地下水(硬度約60) |
仕込み量 |
ワンバッチ1トン(年間約240回仕込み) |
モルトミル | アランドラック社製AR2000ローラーミル4本 |
糖化槽 | 三宅製作所製・高岡銅器の銅板外装ステンレス・フルロイタータン |
麦汁量 | 5200リットル |
使用酵母 |
エール酵母、ウイスキー酵母併用、富山産の酵母 |
発酵槽 | 日本木槽木管製オレゴンパイン木樽2基(約6000リットル) 神鋼ファウドラー製ホーロー3基(約7000リットル) 発酵時間約96時間 |
ポットスチル | 初留 老子製作所製ZEMONランタン型1基2600リットル 再留 老子製作所製ZEMONランタン型1基3800リットル 初留 |
冷却装置 | 初留再留共にシェル&チューブ |
ボトリング設備 | 有り |
熟成庫 | ダンネージ式、ラック式(5段)に加え 酒粕などを保存する低温熟成庫と合計約1500樽貯蔵可能 木造熟成庫「井波熟成庫」にラック式8段5000樽貯蔵可能 |
その他 |
樽詰め度数60%~63% ヘビリーピート50ppm スーパーヘビリーピート80ppm アイラピート、ノンピート(富山産) |
5.熟成環境について
熟成庫の屋根にはスプリンクラーが設置され、熟成庫の温度を下げる「屋根散水システム」を採用。
さらに庫内のクーラーは地下水を利用した「井水クーラー」を使用する事で湿気を含んだ風を送り込み、熟成庫内の湿度を高い状態に保てます。
その他、島田木材と山崎工務店が共同で生み出す富山県産のミズナラの木を使用した「三四郎樽」も使用。
「三四郎樽」とは1700年代に瑞泉寺再建のために京都本願寺から派遣された彫刻師・前川三四郎から取ったもの。
6.蒸留所ストーリー
6-1.歴史
1862年 (文久2年) |
越中国砺波郡三郎丸村(現在の富山県砺波市三郎丸)に創業 |
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1918年 (大正7年) |
若鶴酒造設立 清酒「若鶴」「百楽」の製造販売 |
1947年 (昭和22年) |
若鶴醗酵研究所を設立 |
1948年 (昭和23年) |
日本蒸溜工業より蒸留器を導入 |
1949年 (昭和24年) |
焼酎製造免許を取得 |
1950年 (昭和25年) |
雑酒製造免許を取得(ウイスキー生産開始) |
1952年 (昭和27年) |
ウイスキー、甘味果実酒の製造免許を取得 |
1953年 (昭和28年) |
「サンシヤインウイスキー」発売 火災により初代蒸留塔施設を焼失、同年に再建 |
1954年 (昭和29年) |
アロスパス式蒸留機を導入 |
2012年 (平成24年) |
北陸コカ・コーラボトリングの傘下に入る |
2013年 (平成25年) |
日本酒造りの大正蔵をビジターセンターに改修 「サンシャイン・エクストラスペシャル若鶴20年」発売 |
2015年 (平成27年) |
北陸コカ・コーラボトリングにより設立されたGRNホールディングス (現GRN:グローバル・レフレッシュメント・ネットワーク)の完全子会社となる 「サンシャインシングルモルト若鶴1990」発売 |
2016年 (平成28年) |
「三郎丸蒸留所改修プロジェクト」を開始 クラウドファンディングで4000万円近い支援が集まる 国内製品で最も長熟とされる「三郎丸1960シングルモルト 55年カスクストレングス」「三郎丸1994」を発売。 |
2017年 (平成29年) |
改修整備計画が完了し、見学可能な蒸留所となる ステンレス製スチルのネック、コンデンサーを地元・高岡銅器の銅製に更新。 オーナーのGRNホールディングスが社名をGRN(グローバル・リフレッシュメント・ネットワークの略語)株式会社に変更 「サンシャインウイスキープレミアム」「ムーングロウ・ファーストリリース」発売 |
2018年 (平成30年) |
自社製作の糖化タンクを三宅製作所製の最新式マッシュタンに更新 木彫りの里井波で地元・富山のミズナラ製の樽づくりを開始 「サンシャインプレミアムワインカスクフィニッシュ」 「ムーングロウ・リミテッドエディション2018」「同クレセント2018」発売 |
2019年 (令和元年) |
世界初の鋳造製蒸留器「ZEMON」を高岡銅器の老子製作所と共同で開発、稼働開始 クラフト初の「ハリークレインズ・クラフトハイボール」発売 |
2020年 (令和2年) |
「三郎丸 0 THE FOOL」「同カスクストレングス」 「富山スモーキーハイボール HARRY CRANES CraftHighball」発売 木桶発酵槽を追加 「宇奈月ビール」の製麦施設を借りて富山産大麦の麦芽づくりを実施 |
2021年 (令和3年) |
三郎丸×長濱蒸溜所コラボレーション・ブレンデッドモルトウイスキー「FAR EAST OF PEAT FIRST BATCH」「同 SECOND BATCH」 ブレンデッド「玉兎 2021エディション」「三郎丸3年2017-2021ハンドフィル」 「三郎丸蒸留所 ニューポット 2021アイラピーテッド+トヤマモルト 47ppm」 「三郎丸蒸留所 ニューポット2021 スーパーへビリーピーテッド80ppm」 「三郎丸Ⅰ THE MAGICIAN」「同カスクストレングス」発売 シングルモルトウイスキー専門店モルトヤマとの「T&T TOYAMA ジャパニーズウイスキーボトラーズプロジェクト」立上げ、クラウドファンディングを実施し4000万円を超える支援が集まる |
2022年 (令和4年) |
三郎丸蒸留所×江井ヶ嶋酒造のコラボレーション・ブレンデッドモルトウイスキー「FAR EAST OF PEAT THIRD BATCH」「同 FOURTH BATCH」発売 南砺市井波に「T&T TOYAMA」井波熟成庫を竣工 三郎丸蒸留所とほかの原酒をブレンドした同社の初製品「THE LAST PIECE ジャパニーズエディション Batch No.1」「同ワールドエディション」発売 自社原酒のブレンデッド「三郎丸 THE SUN2022」「十年明Noir」「三郎丸Ⅰ for L’évo」 蒸留所限定「三郎丸蒸留所ブレンデッドモルトウイスキー Batch.1」 北陸コカ・コーラボトリング創立60周年および三郎丸蒸留所70周年記念、ZEMON蒸留器で造られた「The Founder 三郎丸2019 シンングルモルトシングルカスク」、「玉兎 2022 Edition」 「三郎丸Ⅱ THE HIGH PRIESTESS カスクストレングス」 「三郎丸ニューポット2022 アイラピーテッド+トヤマモルト50ppm」 ハイボール缶「三郎丸蒸留所のスモーキーハイボール」発売 「ZEMON」蒸留器、英国で特許取得 |
2023年 (令和5年) |
「三郎丸ニューポット2023 ウルトラヘビリーアイラピーテッド83ppm」 「シングルモルト T&T TOYAMA COLLECTION 三郎丸2019 3年 #190062」 「三郎丸Ⅱ 70周年記念 スパニッシュオーク(ZEMONピンバッチ入)」 「FAR EAST OF PEAT 5TH BATCH」発売 ロッテのクラフト酒チョコYOIYOの第11弾 「YOIYO 三郎丸蒸留所 稲垣貴彦セレクション」として三郎丸ウイスキー原酒が選ばれる 若鶴酒造と『木本硝子』の共同開発で三郎丸蒸留所オリジナルのウイスキーグラス「The Ultimate Peat Glass」を発売 コラボレーションウイスキー「三郎丸×ペルソナ ブレンデッド」「同 シングルカスク三郎丸 P3P」「同 シングルカスク三郎丸 P4G」「同 シングカスク三郎丸 P5R」 アークシステムワークス社が展開する対戦型格闘ゲーム『GUILTY GEAR 』シリーズ コラボレーションウイスキー「GUILTY GEAR 25th Anniversary ブレンデッドウイスキー 25周年記念ボトル」「同シングルモルト ソル=バッドガイver.」「同シングルモルト カイ=キイver.」発売 「三朗丸 2019 3年 Whisky Festival 2023 in YOKOHAMA記念ボトル」 「THE SUN 2023」「玉兎 2023 Edition」「三郎丸シングルカスク2020 3年」 「三郎丸Ⅲ THE EMPRESS」「同カスクストレングス」発売 |
2024年 (令和6年) |
「GUILTY GEAR 25th Anniversary ブレンデッドモルト ディズィーver.」 「シングルカスク三郎丸 能登チャリティーボトル」 「FAR EAST OF PEAT 6th BATCH」 「シングルカスク三郎丸 台湾チャリティーボトル」発売 ブレンデッドウイスキー「FAR EAST OF PEAT 6th BATCH」 シングルモルト「三郎丸Ⅳ THE EMPEROR」「同 カスクストレングス」発売 コラボレーションウイスキー「真・女神転生Ⅴ Vengeance × 三郎丸 ブレンデッドウイスキー」「シングルモルト三郎丸 真・女神転生Ⅴ Vengeance Type:Devils #210115」「シングルモルト三郎丸 真・女神転生Ⅴ Vengeance Type:Angels #210011」「シングルモルト三郎丸 真・女神転生Ⅴ Vengeance Type:Lucifer #210160」発売 「百万石ウイスキーフェスタ2024 向け三郎丸ブレンデッドウイスキー」発売 稲垣貴彦氏著『ジャパニーズウイスキー入門 ~現場から見た熱狂の舞台裏~』出版 |
6-2.歴代のブレンダー
稲垣 貴彦
若鶴酒造株式会社 代表取締役 社長兼CEO
三郎丸蒸留所 ブレンダー&マネージャー
世界初鋳造ポットスチルZEMON発明者(特許第6721917号)
1987年生。富山県出身。
大阪大学経済学部経済経営学科卒業後、東京にて外資系IT企業に就職。
2015年実家富山に戻り、曾祖父稲垣小太郎が1952年に始めたウイスキー造りを引き継ぐ。
2017年クラウドファンディングにより三郎丸蒸留所を改修し産業観光施設としてオープン。
2019年伝統工芸高岡銅器の技術を活用した世界初の鋳造製ポットスチル「ZEMON」を発明。
富山からウイスキーの魅力を広めるため日々活動中。