本坊酒造とイチローズモルト(ベンチャーウイスキー)は、原酒交換によるブレンデッドモルトウイスキーを共同企画ウイスキーとして4月下旬に発売すると発表しました。
先月、3月30日に発売された「三郎丸蒸留所×長濱蒸溜所」の原酒交換による新商品の発売もジャパニーズウイスキー業界内では話題となったばかりでした。
今回の「駒ヶ岳×秩父」のブレンデッドモルトは6年前の2015年から進められていた共同企画で、長い年月を経た新しい試みだったようです。原酒交換は、これまでのジャパニーズウイスキーでは考えられなかった常識を覆す取り組みです。ジャパニーズウイスキー史に新たな歴史が刻まれました。
今回の原酒交換について
イチローズモルトとマルスウイスキーの共同企画は、ウイスキー発祥の地スコットランドでは一般的に行われている原酒交換を、日本でも実現できればとの想いからスタート。
2015年4月にそれぞれの蒸留所で造った熟成前の原酒(ニュースピリッツ)を交換し、それぞれの環境で熟成を進めてきました。基本的なウイスキーの製造工程は同じでも、それぞれの蒸留所によるこだわりや細かな造り方の違いにより、異なる酒質の原酒が出来がると考えられます。更に熟成環境の違うそれぞれの蒸留所で熟成させていく事で、様々な種類のウイスキー原酒が出来上がります。
ニュースピリッツの状態からの原酒交換による、ブレンデッドモルトの商品化は日本初となります。今回の取組みについて、本坊酒造のHPでは下記のように述べられています。
共同企画により、両社はニューポット段階で、原酒交換を行い熟成することで、造り手が表現できる幅を広げ、よりバリエーション豊かな原酒を保有することになりました。また、熟成過程において、経年変化を確かめ合うことが経験値となり、ブレンダーや造り手にとって技術を高め合うことに寄与しています。お互いの原酒の特徴を深く理解し、両社の原酒があるからこそ表現できた味わい。イチローズモルトとマルスウイスキー相互に信頼できる品質の原酒だからこそ実現し、両社は理想の味わいを目指し新たに挑戦する第一歩を踏み出しました。
両社は、この取り組みがジャパニーズウイスキーの多様性のある魅力として新たに評価され、ウイスキーメーカー同士の原酒交換が、技術水準や品質向上に繋がるものとして広がり、ジャパニーズウイスキーの品質をより一層高めていく、きっかけになることを期待し、今後も継続して原酒交換を行ってまいります。また、今回の共同企画を通じて新たなジャパニーズウイスキーの可能性を知っていただき、ウイスキーファンの皆様をはじめ、多くの皆様に楽しんでいただければと考えております。
(記事引用:新着情報 2021| 本坊酒造株式会社)
「三郎丸×長濱」の原酒交換との違い
先日の「三郎丸×長濱」の場合は、熟成された状態の原酒を交換して互いのモルト原酒とバッティングした商品となります。”原酒交換”という言葉では同じですが、取組の詳細を見てみると大きく異なります。
「三郎丸×長濱」ブレンデッドモルトの造り方
3月30日に発売された「三郎丸蒸留所×長濱蒸溜所」共同企画の原酒交換によるブレンデッドモルトの造り方は以下となります。
三郎丸蒸留所 | 長濱蒸溜所 | |
蒸留 |
2017年に蒸留 |
2017年に蒸留 ↓ |
貯蔵 | 三郎丸蒸留所で3年以上熟成 ↓ |
長濱蒸溜所で3年以上熟成 ↓ |
原酒交換 |
<原酒交換> 熟成後の樽を長濱蒸溜所へ→ |
<原酒交換> ←熟成後の樽を三郎丸蒸留所へ |
ブレンド | 自社モルト原酒と長濱原酒のバッティング | 自社モルト原酒と三郎丸原酒のバッティング |
商品化 |
FAR EAST OF PEAT |
INAZUMA(イナズマ) ブレンデッドモルト |
「駒ヶ岳×秩父」ブレンデッドモルトの造り方
今回、4月末に発売される「駒ヶ岳×秩父」共同企画の原酒交換によるブレンデッドモルトの造り方は以下となります。
マルス信州蒸溜所 | 秩父蒸溜所 | |
蒸留 |
2015年に蒸留 |
2015年に蒸留 ↓ |
原酒交換 | <原酒交換> 熟成前のニュースピリッツを秩父蒸溜所へ→ |
<原酒交換> ←熟成前のニュースピリッツを信州蒸溜所へ |
貯蔵 | 信州蒸溜所で6年以上熟成 ↓ |
秩父蒸溜所で6年以上熟成 ↓ |
ブレンド | 自社モルト原酒と秩父モルト原酒のバッティング | 自社モルト原酒と駒ヶ岳(信州)モルト原酒のバッティング |
商品化 |
マルスウイスキー モルト デュオ |
イチローズモルト ダブルディスティラリーズ 秩父×駒ヶ岳 2021 Ichiro’s Malt Double Distilleries CHICHIBU ×KOMAGADAKE 2021 |
マルスウイスキー モルト デュオ 駒ヶ岳×秩父 2021
今回の共同企画により、本坊酒造 マルスウイスキー側から発売される商品が、「マルスウイスキー モルト デュオ 駒ヶ岳×秩父 2021 -MARS WHISKY Malt Duo KOMAGATAKE × CHICHIBU 2021-」
マルス信州蒸溜所で熟成させた「駒ヶ岳」「秩父」二つのモルト原酒をヴァッティングしたブレンデッドモルトジャパニーズウイスキー。駒ヶ岳らしさと秩父らしさ、双方の個性を磨きあうように誕生した特別な1本。
商品に関する記事はこちらをご覧ください。
イチローズモルト ダブルディスティラリーズ 秩父×駒ヶ岳 2021
今回の共同企画により、ベンチャーウイスキーのイチローズモルト側から発売される商品が、「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ 秩父×駒ヶ岳 2021 -Ichiro’s Malt Double Distilleries CHICHIBU ×KOMAGADAKE 2021」
盆地特有の寒暖差と荒川の恩恵を受けた自然豊かな秩父蒸溜所、中央アルプス駒ヶ岳山麓の美しい森に囲まれたマルス信州蒸溜所。この二つの環境で熟成を重ねた原酒は、それぞれの地でブレンドされ、新たな二つの個性となって表現されました。様々な可能性を秘めたジャパニーズウイスキーの魅力を、是非お楽しみください。
(記事引用:チローズモルトとマルスウイスキー 原酒交換による共同企画ウイスキーを発売 | 本坊酒造のプレスリリース | 共同通信PRワイヤー)
最後に:ジャパニーズウイスキーのおすすめ書籍
世界的なトレンドを巻き起こしている「ジャパニーズウイスキー」の事をもっと知りたい、もっと勉強したいという方は、是非こちらの書籍をおすすめいたします。
(1).ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー
世界的にも有名なウイスキー評論家で、ウイスキー文化研究所代表 土屋守先生の著書「ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー」です。
ウイスキーの基礎知識、日本へのウイスキーの伝来、ジャパニーズウイスキーの誕生、広告戦略とジャパニーズウイスキーの盛隆、そして、現在のクラフト蒸留所の勃興まで。日本のウイスキーの事が非常にわかりやすくまとめられた一冊。
(2).Whisky Galore Vol.25 2021年4月号
ウイスキー文化研究所が発行する「ウイスキーガロア」の2021年4月号。
★ジャパニーズウイスキー大全★と題して、ジャパニーズウイスキーの定義、日本のウイスキー最新として、蒸留所24ヵ所を一挙掲載。サントリーチーフブレンダーの福與伸二氏のインタビューも掲載された、ジャパニーズウイスキーファン必見の一冊。
(3).ウイスキーライジング
2016年にアメリカで出版された『Whisky Risng』の日本語版であり、内容も大幅にアップデート。ジャパニーズ・ウイスキーの歴史が詳細に記述されているだけでなく、近年、創設がつづくクラフト蒸溜所を含む、日本の全蒸溜所に関するデータも掲載。そのほかにも、今まで発売された伝説的なボトルの解説や、ジャパニーズ・ウイスキーが飲めるバーなども掲載されています。