日本で最も『天使に愛される土地』で育つウイスキー『琉歌』。国内でも屈指のエンジェルズシェアを誇る州崎蒸溜所の見学レポート。
沖縄県南部。那覇の市街地から1時間ほどと、近い場所に州崎蒸溜所はあります。
高温多湿、そして国内でも突出して高いエンジェルズシェア。この特有の気候条件は、日本がお手本としてきたスコッチウイスキーとは明らかに違い、原酒は驚くほどの速度で蒸散し、熟成は想定よりも早く進んでいきます。
しかし州崎蒸溜所では、この環境を利用し、自らのハウススタイルをすでに確立。
亜熱帯の環境を逆手にとって、様々なノウハウを取り入れて酒質設計を行い、真正面から受け止めています。
日本一とも言われるエンジェルズシェアは、全く弱点とはならず、『日本一天使に愛される蒸溜所』は比喩ではなく、州崎蒸溜所の造りそのものを象徴しています。
その限られた1滴に、さまざまな思いが込められていたました。
日本最古の蔵元
州崎蒸溜所を擁する州崎酒造は、沖縄最古の蔵元として、泡盛を主軸として酒造りを続けてきました。
サントリー向け泡盛「美ら島」のOEM製造を担ってきた経験をはじめ、その歴史と大規模な製造、安定供給を支えてきた実績があります。
蒸溜所に訪れて最初に見学した際に、印象に残ったのは、ボトリング設備の完成度の高さです。
大手メーカーのOEMを請け負う中で、衛生管理は徹底的に磨き上げられ、ボトリングライン内には計7つもの扉が設けられています。
異物混入を限りなくゼロするために、設備そのものに管理徹底が組み込まれているのです。
泡盛製造は現在も多品種にわたって行われており、一般見学でもそのスケール感のある製造現場を間近に見ることができます。
ウイスキー造りへの展開
州崎蒸溜所のウイスキー造りは、泡盛製造とも密な関係があります。
粉砕と糖化の工程は、同工場内、泡盛用の巨大な製麹設備の傍らに設けられており、工場内には様々な設備が並んでいます。
ウイスキー製造に使用するモルトはクリスプ社製。1バッチあたりの仕込み量は400kg。
糖化には、県内業者に特注したマッシュタンを使用。
自動レーキは備えられておらず、撹拌は人の手による櫂入れに近い作業で行われています。
回収された麦汁は、ブリックス糖度や流量を細かくチェックしながら管理され、次工程へと送られます。

県内業者製のマッシュタン

自動レーキはなく、人の手て撹拌される。
発酵工程にかけるやりすぎと言われるほどの『時間』
州崎蒸溜所を語るうえで、最も象徴的なのが発酵期間の長さです。
発酵は144時間(6〜7日)。国内蒸溜所の中でも、極めて長い、おそらく一番長いかと思われます。
この長期発酵は、完全な乳酸発酵まで進めることを目的としています。
他蒸溜所から「やりすぎ」と言われることもあるそうですが、それでもなお、この時間を削ることはありません。
発酵槽はステンレス製。
冷却水管理システムが備えられ、沖縄の気候下でも温度が上がり切らないよう、制御が行われています。
見学時に確認したのは、3日目と5日目の醪。
香りは穏やかさを帯びながらも、内部では確実に発酵が進行しており、醪へのこだわりがはっきりと感じ取れました。
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蒸溜工程 試行錯誤と次世代の蒸溜機
蒸溜機は計5基。
泡盛用が2基、減圧蒸溜器が1基、そしてウイスキー専用として導入されたイタリア・フリッリ社製の初留・再留の2基です。
ウイスキー製造初期には、泡盛にも使用されていた蒸溜器にて製造を行ってきましたが、硫黄臭などは取りきれませんでした。
その後、パイプ内に銅板、銅メッシュ、銅ウールを組み合わせてオフフレーバーを可能な限り取り除くなど、試行錯誤が行われていました。
現在リリースされている「シングルモルト琉歌」には、まさにその時代の原酒が使われています。

ウイスキー製造にも使用されていたステンレス蒸溜機
2023年から本格稼働したイタリア・フリッリ社製スチルは、
初留器がTiich(てぃーち)沖縄方言で「1」を意味する。2000Lのストレート型。
再留器がTaachi(たーち)「2」を意味する。1000Lのバルジ型。再留のヘッドは下向き

右が初留器(Taachi)左が再留器(Tiich)
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初溜は、窓越しに確認しながら、限界まで沸騰し、泡立たせ、温度管理を行っています。これは醪に含まれる様々な風味を、高温度で沸騰させることで得る目的で行われています。
再留時のフェインツ、ローワインはいずれも度数によってカットされ、感覚と数値の両軸で管理がなされています。
熟成 エンジェルズシェア10% 日本一天使に愛される蒸溜所
1バッチ400kgのモルトから得られるニューメイクは、約200L。
それらは、蒸溜所から車で5分ほどの場所にある熟成庫へと運ばれます。
かつて泡盛の熟成庫として使われていた建物は改修され、現在はラック式のウイスキー熟成庫として活用されています。
沖縄特有の高い平均気温と大きな寒暖差は、ウイスキーの熟成を強く促し、若い年数であっても色調や香味に明確な変化をもたらします。
あまりにも高いエンジェルズシェアに、とある人物から「日本一天使に愛される蒸溜所だね」と評されたことがあったといいます。
その言葉どおり、州崎蒸溜所では熟成において『失われるもの』は織り込み済みで受け入れられています。

使用される樽は、バーボン樽、シェリー樽、スパニッシュオークを中心に、泡盛樽なども含めた多様な構成。
すでにプライベートカスクの展開も始まっており、契約も進んでいる様子。
泡盛樽はパンチョンサイズの新樽にて泡盛を熟成し、払い出された後にウイスキー原酒が詰め込まれます。
その熟成樽による香味は不思議とバーボン樽と似たニュアンスを持つといわれます。






