厚岸蒸溜所:見学訪問レポート(2023年5月)

ウィスキー蒸留所
ウィスキー蒸留所
厚岸蒸溜所

北海道の道東厚岸町で2016年よりウイスキー製造を行っている堅展実業㈱「厚岸蒸溜所」2023年5月の見学訪問レポートを紹介。

今年はジャパニーズウイスキー100周年という記念すべき年ということで、日本全国でジャパニーズウイスキーが盛り上がっています。特に、直近10年ではジャパニーズウイスキーの世界的な人気を受けてか、小規模なクラフトウイスキー蒸溜所の建設が急増し、ウイスキー蒸溜所は全国で80カ所を超えました。

いよいよジャパニーズウイスキー淘汰の時期を迎えたという見方も強まってきていますが、そんなクラフトウイスキー蒸溜所の中でも、早期(2016年)に操業開始し、製造するウイスキーの品質の高さだけでなく、堅実で誠実な蒸溜所運営により名実ともにクラフトジャパニーズウイスキーでは注目度No1の存在と言えるでしょう。

2023年5月、当サイトを運営する「BAR新海」は、厚岸蒸溜所の最新の状況を自分たちの目で確認する為、蒸溜所を訪問して参りました。

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1.東京から厚岸蒸溜所まで

私達一行は、2023年5月21日に東京から厚岸蒸溜所へ向かいました。

13:00に蒸溜所到着を予定していましたので、逆算して早朝7:00に羽田空港に集合し、釧路を経由して厚岸に向かうという下記のスケジュールで向かいました。

  • 7:00 羽田空港集合
  • 7:40 フライト(羽田空港7:40発 → 釧路空港9:20着)
  • 10:00 レンタカー配車
  • 11:30 コンキリエで昼食
  • 13:00 厚岸蒸溜所到着

釧路空港からは、JRで厚岸まで移動する手段もありますが、釧路から厚岸まで、そして厚岸町内を自由に動き回れるようにレンタカー等を手配される事をオススメします。

羽田空港から釧路空港へ移動し、予め手配していたレンタカーに乗り込み、一行は厚岸町へ向かいます。釧路空港から厚岸町までは約1時間程で到着します。

2.道の駅「コンキリエ」

厚岸町を訪問する時に必ず行くべきスポットがいくつかあります。
その中の一つが「道の駅厚岸グルメパーク 味覚ターミナル コンキリエ」です。

https://www.conchiglie.net/

コンキリエでは、厚岸町全体を眺める事が出来る展望台や、厚岸ウイスキーと厚岸産牡蠣を嗜む事ができるレストランやカフェ、そして厚岸蒸溜所グッズが買えるお土産ショップが入った道の駅となっています。

残念ながらコンキリエで厚岸ウイスキーをボトルで購入する事はできません。タイミングが良ければ次回発売の二十四節気シリーズの抽選申込を行う事が出来ます。(但し、当選した際には受取りに再度コンキリエに来る必要があります。)

蒸溜所訪問前に、まずは腹ごしらえ。
私達一行は、コンキリエ2階のレストラン「オイスターバールピトレスク」で厚岸産牡蠣に舌鼓。
厚岸産の生牡蠣だけでなく、厚岸産牡蠣を使ったメニューがたくさん用意されています。

更にこちらでは、入手困難な厚岸ウイスキーが非常にお求めやすい価格で飲む事もできます。
二十四節気シリーズが全種類揃ってはいませんでしたが、割と最近発売された商品は注文できるようになっていました。

また、厚岸町限定の厚岸ウイスキーである「厚岸ブレンデッドウイスキー 牡蠣の子守唄」も注文する事が出来ます。こちらは厚岸町の飲食店向けにしか流通しない超貴重なウイスキーですので、厚岸町に訪問の際には絶対に飲むべき1杯です。

食事の後は、1Fの「オイスターカフェ」でソフトクリームに厚岸ウイスキーを垂らして食べる「厚岸ウイスキーソフト」が500円で堪能できます。

1Fの売店では、コースターやキーホルダーなどの厚岸蒸留所公認グッズが販売されています。

3.厚岸蒸溜所へ到着

コンキリエで食事を終えた一行は、目的地の厚岸蒸溜所を目指します。コンキリエからは、車で約6分で蒸溜所へ到着しますが、蒸溜所周辺には特に厚岸蒸溜所の道案内などは出ていないので、Googleマップを見ながら慎重に運転を進めていきます。

3-1. 蒸溜所設備

厚岸蒸溜所は、ウイスキー蒸溜所では初となるHACCPを取得している為、非常に高い基準で衛生管理が行われています。その為、残念ながら一般の見学ツアーでは蒸溜所内に入る事はできず、ガラス越しに蒸溜所内の設備を見るような見学となります。

厚岸蒸溜所HPに、バーチャルツアーが用意されており、厚岸蒸留所内の雰囲気を360°余すことなくバーチャルで体験することができますので、 是非こちらをご覧ください。

https://my.matterport.com/show/?m=mKBGFQy43P1″]

① 麦芽の粉砕(ミリング)

厚岸蒸溜所では、1仕込1tの大麦を使用しています。

② 糖化(マッシング)

粉砕した麦芽とお湯を混合させ、レイキ(攪拌機)で麦層を壊さないように攪拌しながら糖をとっていきます。

③ 発酵

発酵槽(ウォッシュバック)は6基。酵母を添加し、ステンレスの発酵槽で5日間発酵させます。

④ 蒸留

蒸溜器(ポットスチル)は2基。初留(ウォッシュ・スチル)5,000L、再留(スピリット・スチル)3,600L。

ポットスチルはスコットランドのフォーサイス社製にこだわり、形状はストレートヘッドのオニオンシェイプで、アイラ島のいくつかの蒸溜所のものと似ています。

5日目のもろみを初留器で蒸溜させ、約23%のアルコールを採取します(ローワイン)。
初溜で得られたローワインと前日の再溜のフェインツを混合させ、約69%のアルコール(スピリッツ)を採取します。
スピリッツ以外の部分はフェインツとして翌日の再溜に使用します。

⑤ 貯蔵・熟成

貯蔵庫はダンネージ式とラック式の両方があり、現在第5熟成庫まで用意されています。

3-2. 熟成環境

厚岸蒸溜所では、アイラ島のウイスキー造りと同様、泥炭(ピート)層を通った水を仕込み水に用い、冷涼で湿潤、そして海風が当たる場所で日々、熟成が進んでいます。

厚岸では、「海霧」という自然現象が発生し、潮の香りを纏った霧が地域を覆う事で海側に面していない熟成庫の樽にも潮や磯の香りを与える事が出来ると言います。 海霧の香りが一番濃いのは昆布漁が最盛期を迎える7~8月だそうです。

3-3. ウイスキー造りへの想い

厚岸蒸溜所はスタッフ全員が蒸溜未経験から始まった為、教科書通りに定石を徹底し、人の手が加わる工程の質を上げていく事で原酒のクオリティを上げていく事を信条とされています。

また、ワインで良く聞くテロワールの考えをウイスキーに転用し、地元産の大麦、地元産のピート(泥炭)、地元産のミズナラから作るミズナラ樽を使用した「オール北海道ウイスキー」、更には、「オール厚岸ウイスキー」を目指されています。

厚岸蒸溜所の所長を務められている立崎勝幸氏が公式ウェブサイトで掲載されているメッセージに厚岸蒸溜所のウイスキー造りの想いと心構えが込められてます。

ただ、 ちゃんとつくる ということが実は一番大変なことで、原酒がジャパニーズウイスキーになるためには木樽で 3 年以上寝かさなければなりません。
週にして 1 5 0 週以上。 1 週間は 1 % にも満たない時間です。その 1 週 1 週をぶれの無いように、造りのところで一切の妥協を許さない。すべての手順書・記録書を厳密に管理し、一本線のようにウイスキーをつくる。 私たちが技術者として大切にしている、日々の心構えです。

(引用:Blender’s Attention ブレンダーのこだわり【厚岸蒸溜所】

日々、一切の妥協を許さずに、手順書や記録書を厳密に管理して、ぶれの無いウイスキーを造る。という一見当たり前のように聞こえる言葉ではありますが、こういう当たり前の事をやり続ける事が実は一番難しい事なのかもしれません。

ウイスキー造りに対する誠実さと、毎日同じ手順の繰り返しを継続する事。これが厚岸蒸溜所の高品質なウイスキー造りを支えているのかもしれません。

今回の訪問では、若手社員の方々からもこの立崎所長のウイスキー造りへの考え方がしっかりと伝播している事を垣間見る事ができました。若い作り手達の成長が今後の厚岸蒸溜の発展を更に期待させてくれます。

4.宿泊はホテル五味

さて、蒸溜所見学を終えた一行は、その日の宿泊場所であるホテル五味へ移動します。

厚岸町内には宿泊施設がいくつかありますが、厚岸蒸溜所を訪問される方が予約すべき宿泊施設は「ホテル五味」一択になります。

https://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/4800/4800.html”]

ホテル五味は、JR厚岸駅前に立地し、夕食では厚岸の海の幸を堪能する事ができます。牡蠣料理5品、牡蠣以外の厚岸の海産物5品の全10品。旬の焼魚も絶品です。

厚岸の海の幸を愉しめるだけであれば、他の宿泊施設とそこまで変わらないかもしれませんが、ホテル五味には更に大きな魅力があります。

この写真を見て頂ければわかる通り、厚岸ウイスキーを潤沢に取り揃えているのです。

二十四節気シリーズはもちろんの事、それ以外のプライベートボトルや限定ボトルなど、愛好家が喜ぶボトルを多数取り揃えています。

しかし、それだけでなく、厚岸蒸溜所のウイスキー以外の国内外のレアウイスキーを多数取り揃えておられ、ホテル五味内のレストランで思う存分堪能する事が出来ます。

5.厚岸蒸溜所見学の予約方法

厚岸蒸溜所へ見学訪問する方法は2通りありますので紹介いたします。

5-1. コンキリエの見学ツアー

先程紹介した道の駅「コンキリエ」主催で厚岸蒸溜所見学ツアーを実施しています。

内容は下記となりまして、料金はお一人様4000円。

  • ガイドによる厚岸蒸溜所敷地内をご案内
  • コンキリエ内の【オイスターバール】で厚岸ウイスキー試飲(二十四節気から1種、牡蠣の子守唄)
  • 厚岸蒸溜所ロゴ入り木製キーホルダーのプレゼント

https://www.conchiglie.net/tour/tour6″]

5-2. ホテル五味の見学ツアー

実は、ホテル五味でも厚岸蒸溜所見学ツアーを行っております。但し宿泊者限定となります。

厚岸蒸溜所との親交も厚いホテル五味の五味支配人直々にガイドをしてくれるというとても贅沢な見学ツアーです。普段聞く事が出来ない厚岸蒸溜所に関する面白い情報も聞く事ができるかも(?)

詳細に関しては、ホテル五味へ直接お問合せください。

●ホテル五味
TEL:0153-52-3101

https://www.akkeshi-town.jp/kanko/shukuhaku/gomi/

6.見どころ豊富な厚岸町

北海道の道東に位置する厚岸町は、牡蠣の名産地として有名である事は多くの方がご存知と思いますが、牡蠣以外にも厚岸町の見どころはたくさんあります。

今回、私達一行は時間の都合上、別寒辺牛湿原と、厚岸大橋しか見る事ができませんでしたが、それらを含めていくつか紹介致します。

6-1. 別寒辺牛湿原

平成5年(1993年)にラムサール条約の登録湿地として『厚岸湖・別寒辺牛湿原』が認定され、急速に注目されるようになった湿原です。
別寒辺牛湿原には、尾幌川、大別川、別寒辺牛川、チライカリベツ川等が血管のように流れ、タンチョウも営巣するなど学術的にも高く評価されています。近くには水鳥観察館があり、厚岸湖や湿原に飛来する四季折々の鳥やタンチョウの子育てを、スクリーンでリアルタイムに見ることができます。

6-2. 厚岸大橋とカキ島

北海道で最初の海上橋として昭和47年9月に開通した厚岸大橋。厚岸大橋ができる前の交通機関は、日本道路公団のフェリーボート『厚岸丸』で、それ以前は、町営の渡船で人などを輸送していたそうです。

厚岸湖には牡蠣島(正式には弁天島)と小さな弁天神社があります。この神社の創建は定かではありませんが、寛政3年(1791年)の記録に残っており、文政3年(1820年)には祭典が行われたことも記録されているようです。

(画像出展:厚岸大橋と牡蠣島 | 観光十景 | 観光されるみなさまへ | 北海道厚岸町

6-3. 愛とロマンの愛冠岬(あいかっぷみさき)

『できそうもない困難を乗り越え愛の栄冠を得る』との思いで名づけられ、原名はアイヌ語でアイ・カップ(矢の上のもの)の意で、矢の届かないところから『できない、届かない』という意味も持っているそうです。

大黒島・小島、眼下に筑紫恋海岸を望む眺めは勇壮な景色です。

平成4年は愛冠岬に『愛の鐘ベルアーチ』が完成し、想いをかなえる鐘として訪れる人たちの人気を博しています。
岬までの道のりは木々に囲まれた道が続き、森林浴としても楽しめます。

6-5. 知床・羅臼のホエールウォッチング

厚岸からは2時間程かかってしまいますが、「時間のある方は是非行って欲しい」とホテル五味の五味支配人も太鼓判を押すほどオススメされたのが、「知床・羅臼のホエールウォッチング」

料金は8800円ですが、知床の海を走る観光船の間近に現れるイルカやクジラの感動を是非味わってみてください。

http://rausu-cruise.com/wp/

https://www.e-shiretoko.com/

6-4. 釧路湿原

厚岸からの帰り道、少し遠回りをして是非行って頂きたいのが「釧路湿原国立公園」

国内最大の泥炭性草原湿地からなる国立公園。特別天然記念物のタンチョウをはじめ、さまざまな動植物の貴重な生息地にもなっています。ラムサール条約登録湿地となり、現在湿原周辺を含んだほぼ全域が国立公園に指定されています。

国立公園内にはいくつもの展望台があるので、雄大な景色を眺めにぜひ訪れてみてください。   

7.最後に

厚岸蒸溜所、そして厚岸ウイスキーに関しては、操業からかわらずに誠実でコツコツと高品質なウイスキー造りを続けられてきて、その結果が現在も入手困難な稀少ウイスキーとして高く評価されているのだと思います。

更に厚岸の素晴らしさは、ウイスキーだけでなく、牡蠣をはじめとした新鮮な魚介類が豊富であることや、大自然が作り出す様々な観光スポットが周辺に多く存在する事。日本全国のウイスキー蒸溜所で、こんなにも見どころが多い蒸溜所は数少ないのではないかと思います。

筆者は今までに過去3回厚岸蒸溜所を訪問しました。最初は、厚岸蒸溜所を見る事と、厚岸ウイスキーを試飲する事だけが目的でしたが、回を重ねる毎に、厚岸蒸溜所を取り囲む自然環境や、観光スポット、そしてホテル五味の存在、地元の水産業者、木材業者などなど、厚岸蒸溜所の”周辺”にも興味を持つようになりました。

雄大な大自然や自然環境も素晴らしいし、ホテル五味のホスピタリティやウイスキーの品揃えも圧巻。そして厚岸の新鮮な魚介類は絶品。

本記事を読まれて、厚岸を訪問したくなった方は、是非厚岸蒸溜所だけでなく周辺の多くの見どころも楽しんでみてください。より一層厚岸蒸溜所への愛が深まってくることと思います。

この記事を書いた人
新海 博之

1981年7月17日 北海道北広島市出身
大学卒業後、NTTデータカスタマサービス㈱へ新卒入社。
2010年「麻布十番BAR新海」を開業 → 2016年、名物「薬膳カレー」を開発 → 2018年「虎ノ門BAR新海」、2019年には「芝大門BAR新海」を開業 → 2020年 ウェブメディア「Japanese Whisky Dictionary」をスタート。
バーテンダーの私達だから出来る事として、ジャパニーズウイスキーの魅力を日々発信する。

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ジャパニーズウイスキーディクショナリー
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