スコットランドのウイスキーカスク投資サービス「The Whisky Stock」がスタート。気になるその内容とは?

ニュース
ニュースカスクオーナー

現在、日本のいくつかの新興蒸溜所では、オフィシャルでカスクオーナーの募集を行っており、酒販店や飲食店関係者以外でもウイスキーカスクオーナー、いわゆる「カスクオーナー」になる事ができます。

スコットランドでも同様に、一般の方々向けにオーナーズカスクを購入する事ができるサービスがありますが、今回、日本以上においても容易にスコットランドのウイスキーカスクを購入出来るサービスとして「The Whisky Stock」が開始しました。

この「The Whisky Stock」がどのようなサービスなのか、日本のカスクオーナーの現状と比較しながら解説したいと思います。

スポンサーリンク

1.ウイスキーカスクオーナーとは?

ウイスキー蒸溜所で公式に「カスクオーナー募集」として募集がかかり、これに対して条件に同意の上、一般の方でもカスクを購入する事ができます。殆どが、蒸溜後の樽入れ時からの保有となり、数年間蒸溜所に樽を預けたまま熟成を経てボトリングされ、購入者の元へオリジナルのウイスキーボトルが届く。というサービスです。

ボトリングされて手元に届いたウイスキーは、基本的には購入時の熟成前時点よりも価値が高まると言われています。例えば、通常は1本1万円以上のウイスキーを熟成期間を経る事で、実質数千円で購入する事ができ、更にそのウイスキーは世界中どこにも存在しない自分だけのオリジナルウイスキーとして保有する事ができるのです。

一昔前では、サントリーやニッカなどの大手メーカーでも行われていたサービスですが、現在はサービス自体が終了しています。現在日本国内で「カスクオーナー募集」を行っているのは、有名な所だと静岡蒸溜所。他には、新興蒸溜所が創業時に資金調達の手段の一つとして行われたりするケースがあります。
いずれにしろ、「ウイスキーカスクオーナー」というのは、数年間の熟成を経て将来出来上がるウイスキーへの期待や応援という意味で「ロマンのある投資」であると思います。

【2022年12月10日まで】安積蒸溜所 樽オーナー募集
5年後にお届けするウイスキーは、それぞれの樽から1本ずつの2本セット。度数の調整以外は他の樽のウイスキーとは一切混和せず瓶詰め。
飛騨高山蒸溜所、クラウドファンディング開始
舩坂酒造店の飛騨高山蒸溜所のクラウドファンディングがロケットスタートを切りました。魅力的なリターン品などをご紹介しています。

2.ウイスキー投資と転売に潜む問題

話は少しズレますが、昨今、「ウイスキー投資」というワードをよく見聞きするようになりました。国内外問わず、稀少なウイスキーを入手して高値で転売する「転売ヤー」と呼ばれる存在も目立つようになりました。

この行為は、法律上グレーゾーンであり、場合によっては違法となります。基本的にお酒の販売は酒税法で定められており「酒類販売免許」が必要となります。メルカリなどで、個人的な取引が一般的に行われていますが、個人での取引量が多くなるとビジネス目的と判断され、酒税法違反として処分される可能性が高くなります。2022年は、酒税法違反で11件の行政処分が行われています。

酒類の無免許ネット転売が横行…大阪国税局、主婦や法人などに計18...
【読売新聞】 長引くコロナ禍による「家飲み」など巣ごもり需要の広がりを背景に、ビールや高級ウイスキーの無免許でのネット転売が横行している。大阪国税局は2021年度、プロジェクトチーム(PT)を作って監視を強化。主婦や会社員らを対象に

このような、転売行為は「ウイスキー投資」とは言えず、単なる「不正投機」と言えるのではないでしょうか。

購入時よりも価値が高くなったウイスキーを販売して利益を得ようとする場合は、販売に必要な免許を取得した上で行う事が必須であり、法律に準拠した上で行う事が適切な「ウイスキー投資」と言えるのではないかと思います。

3.The Whisky Stockで出来ること

ウイスキーの本場スコットランドでも、古くから様々な蒸溜所でカスクオーナーを募集し、一般の方々でもウイスキーカスクを購入する事ができます。購入方法によっては、カスク購入後数年間保有し、資産価値が高くなった頃に売却する事も可能なサービスもあります。

今回紹介する「The Whisky Stock」は、数年後の売却も可能なウイスキーカスク購入のコンサルティングサービスです。まさに、法律に準拠した適切な「ウイスキー投資」となります。

現在「The Whisky Stock」で購入可能なウイスキーカスクは、スコットランドのウイスキー蒸溜所に限定されますが、多くの蒸溜所がリストに名を連ねています。

サービスの特徴や魅力は、①一般の方も容易にカスクを購入する事が可能②様々な銘柄且つ熟成年のカスクが選択できる③購入方法や購入後の管理が簡単④楽しみ方や出口の選択肢が選べる。というところが大きなポイントになります。

① 一般の方も容易にカスクを購入する事が可能

ウイスキーカスクはこれまで、ボトラーズメーカーや酒販店、飲食店などへの販売に限定される事が殆どで、一般の方が売却を視野に入れた購入には高いハードルがありました。しかし、スコットランドでは数年前から一般の方向けにも売却を前提としたウイスキーカスクを販売するルートが確立され、「ウイスキーカスク投資」が一般の方々にとっても身近なものとなりました。

「The Whisky Stock」も独自のルートにより一般の方々へも売却を前提としたスコットランドのウイスキーカスク購入をコンサルティングする事が可能となりました。海外送金だけでなく、クレジットカードでの購入も可能なため、購入の手間も殆どかかりません。

② 様々な銘柄且つ熟成年のカスクが選択できる

では、実際にどこの蒸溜所の、どんな樽を購入する事ができるのか?最も気になるところだと思います。
2023/1/16時点の販売可能な取扱い蒸溜所数は、

インチガワー、インチマリン、キャメロンブリッジ、クライゲラヒ、クライヌリッシュ、グレンオード、グレンギリー、グレングラッサ、グレンドロナック、グレンロセス、ストラスアイラ、スプリングバンク、タムデュー、タリバーディン、ダルモア、ティーニニック、トーモア、トバモリー、ノッカンドゥ、ハイランドパーク、ブナハーブン、ブルイックラディ、ベンネビス、ベンリアック、ボウモア、マクダフ、マッカラン、ミルトンダフ、モートラック、レダイグ、ロイヤルブラックラ、ロングモーン

の全31ヵ所。
※取扱い銘柄(蒸留所)は日々変動します。

それぞれの樽の熟成年数は、カスク毎に異なり0年~42年まで様々となっており、熟成年数により価格も変わってきます。ラインナップの一例を紹介します。

ノッカンドゥ9年 / 1st Fill Oloroso Quarter cask / 57.00% / 50.9L / £5,122(≒ ¥840,008)
ベンネビス4年 / Refill Bourbon Barrel / 61.49% / 107.78L / £9,900(≒ ¥1,623,600)
モートラック6年 / Refill Bourbon Barrel / 68.99% / 118.72L / £18,929(≒ ¥3,104,356)
ストラスアイラ9年 / 1st Fill Bourbon Barrel / 67.90% / 113.5L / £25,526(≒¥4,186,264)
ハイランドパーク16年 / Refill Bourbon / 61.30% / 130L / £79,728(≒¥13,220,497)
スプリングバンク26年 / Rifill Bourbon / 54.20% / 86.9L / £170,500(≒¥28,272,310)

などのようなカスクが購入可能で、これら含めて合計約100樽のラインナップがあります。

③ 購入方法や購入後の管理が簡単

購入方法は非常にシンプルで、購入契約締結後に海外送金かクレジットカード決済により購入が可能。高額の買い物なのでクレジットカードが使用できるのはポイントが貯まるので嬉しいですね。
購入後は、カスクナンバーが記載された「カスク所有権証明書」が届きカスクオーナーである事が証明されます。
購入した樽の管理は、英国歳入庁が管理する保税倉庫内で安全に管理されます。毎年支払う保管料には保険料も含まれており、災害時や破損などの補償も心配ありません。

更に、年間支払う保管料が年間約65GBP(≒11000円)程となっており、ワイン投資などの場合と比較すると保管コストは非常に安価です。(ワイン投資で温度管理可能な倉庫を借りた場合は月額6000円~なので、ウイスキーカスク投資はランニングコストの安さも魅力の一つです。)

④ 楽しみ方や出口の選択肢が選べる

一般的なカスクオーナーは、数年間の熟成を経てボトリングされたものが手元に届くのが殆どとなりますが、「The Whisky Stock」では、ウイスキーカスクを購入した後に大きく3つの出口をご案内しています。
(1)長期保有による資産形成(売却も可能)

(2)自己消費として飲んで楽しむ
(3)ギフト(贈答用)にボトリングして輸入
このように、購入後に複数の出口があると安心して保有する事ができます。

(1)長期保有による資産形成(売却も可能)

The Whisky Stock」は、一般的なカスクオーナーと違い、長期保有による資産形成数年間保有後に樽ごと売却する事が出来ます。ウイスキーは熟成により味が向上し、年数を経る事で稀少性が高まります。年数と共に資産価値が上昇する事はウイスキーに精通している方であれば周知の事実だと思います。更に、ウイスキーの資産価値は年々上昇傾向にあり実物資産への投資てしても世界中の資産家が注目している投資の一つとなっています。

出口の(1)~(3)のどれを選択するかは、その時になってからの選択で良いという点も「The Whisky Stock」の魅力ではないでしょうか。

(2)自己消費として飲んで楽しむ

The Whisky Stock」で取り扱うカスクは熟成年数が0年~40年までとなっており、自己消費として飲んで楽しむために購入後にボトリングして輸入する事が可能です。その時は、加水の設定、瓶やキャップの形状やラベルのデザイン、箱のデザインなどはカスタマイズする事もできます。
ウイスキー愛好家であれば、世界で一つだけのオリジナルウイスキーを作れる事非常に魅力的であり、ロマンのある事です。

※ボトリングには別途費用が発生します。

(3)ギフト(贈答)用にボトリングして輸入

自己消費としてボトリングして輸入したオリジナルウイスキーの別の活用方法として、ギフト(贈答用)としてのご利用も可能です。世界で一つだけのオリジナルウイスキーは、贈答用しても大変喜ばれる事は間違いありません。

※ボトリングには別途費用が発生します。

4.テイスティングセミナーのご案内

The Whisky Stock」では、定期的にテイスティングセミナーを開催しています。
「もっと詳しく話を聞いてみたい。」「色々と質問したい事がある。」「実際に飲んで勉強したい。」という方もいらっしゃると思います。
現在東京での開催のみとなりますが、下記の概要でセミナーを開催しております。興味のある方はご参加ください。

テイスティングセミナーの詳細

【日程】2023年1月~2月末  毎週土日
【時間】13:00~14:30
【参加費】お一人様 3,000円(税込)※会場にてお支払頂きます。
【定員】10名
【会場】芝大門BAR新海
〒105-0012
東京都港区芝大門2-3-16 東洋ビル1F
※都営大江戸線 大門駅より徒歩3分
※JR線 浜松町駅より徒歩5分
※大門交差点から増上寺方面に進み、マクドナルドを左折し50m程進んだ左手のビル1Fです。

【概要】
「-味わう投資-The Whisky Stock」のご案内と、取扱いカスク銘柄より数種類のウイスキーのテイスティング。(※実際のカスクサンプルではなく、同銘柄のオフィシャルもしくはボトラーズのテイスティングとなります。)

【詳細】
1.「-味わう投資-The Whisky Stock」のご案内
2.スコッチ・ウイスキーカスク投資の説明
3.カスク購入の流れをご紹介
4.テイスティング
5.歓談/希望者 個別相談

【テイスティング銘柄】
①ダムデュー15年(オフィシャル)
②ベンリアック12年(オフィシャル)
アードモア11年(シグナトリー)
④キャメロンブリッジ 13年(ブードゥー・ウイスキー)
⑤ベン・ネヴィス 10年(オフィシャル)
⑥グレンマレイ18年(オフィシャル)
⑦インチマリン 12年(オフィシャル)
⑧タムナヴーリン11年(DRAMLAD&CO.)
⑨インバーゴードン 2002(ダグラスレイン)
グレンギリー12年(オフィシャル)
※各銘柄15mlをテイスティングとして提供予定です。

[button color=”red” size=”big” link=”https://whiskystock.jp/tastingseminar/” icon=”” target=”true”]お申込みはこちら[/button]

①学べること、知れること

・近年のウイスキーの価値上昇
・ウイスキーカスク投資の仕組み
・ウイスキーカスク購入の流れ
・取扱いウイスキーカスクの一覧と価格
・取扱いウイスキー銘柄の味と違い

②こんな人におすすめです

・実物資産に興味のある方
・ウイスキー投資に興味のある方
・ウイスキーに興味のある方
・オリジナルウイスキーをお店で提供したい飲食店の方
・オリジナルウイスキーを販売したい酒販店の方

5.最後に

今回紹介しました「The Whisky Stock」のように、法律に準拠した健全なウイスキー投資サービスは、現在日本国内のウイスキー蒸溜所では見かけません。それぞれの蒸溜所でカスク販売するほどの大量生産を行っていない事や、ウイスキーカスク投資の仕組みが整っていない事、日本人のウイスキー投資への考え方などが要因として挙げられるのではないでしょうか。しかし、日本のウイスキーは今年で生誕100周年を迎えます。100年という歴史に加え、昨今では新興蒸溜所が50カ所を超え、年々増え続けています。日本のウイスキーも着実に世界と肩を並べるレベルへ進化していっています。
日本のウイスキー業界でも、法律に準拠した健全な「ウイスキー投資」がサービスとして始まる日もそう遠くないのかもしれません。

この記事を書いた人
新海 博之

1981年7月17日 北海道北広島市出身
大学卒業後、NTTデータカスタマサービス㈱へ新卒入社。
2010年「麻布十番BAR新海」を開業 → 2016年、名物「薬膳カレー」を開発 → 2018年「虎ノ門BAR新海」、2019年には「芝大門BAR新海」を開業 → 2020年 ウェブメディア「Japanese Whisky Dictionary」をスタート。
バーテンダーの私達だから出来る事として、ジャパニーズウイスキーの魅力を日々発信する。

新海 博之をフォローする
タイトルとURLをコピーしました