【レビュー】シングルモルト駒ヶ岳 屋久島エージング2021

ウィスキーレビュー
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信州蒸溜所

シングルモルト駒ヶ岳 屋久島エージング」は、マルス信州蒸溜所で蒸留し、鹿児島本土より南南西約60kmの海上にある九州最高峰宮之浦岳がそびえ、海上に浮かぶアルプスと言われる島であり世界自然遺産の島・屋久島に2016年6月に新設された「屋久島エージングセラー」で熟成させたシングルモルトウイスキーです。その「屋久島エージングセラー」は、本坊酒造が屋久島に所有する焼酎蔵「屋久島伝承館」に併設。ウイスキー原酒を貯蔵するために建設しました。

第4弾となる今回は、バーボンバレルで3~5年熟成させたモルト原酒を主体にヴァッティング。
九州最高峰の山や豊かな森、美しい海やきれいな水、雨が多く冷涼湿潤な気候の中で熟成。そのような環境下で造られた原酒は明らかに熟成が信州よりも早く進んでおり、3年を待たずしてフルーティさや熟成感が出てきます。
信州で蒸留し、屋久島に熟成庫を造り熟成させる。このひと手間ふた手間かけたからこそ成し遂げた熟成感は、本坊酒造ならではのウイスキー造りの象徴と言えるのではないでしょうか。

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1.メーカー

本坊酒造株式会社

設立1872年
本社所在地〒891-0122; 鹿児島県鹿児島市南栄三丁目27番地
所有蒸留所マルス信州蒸溜所、マルス津貫蒸溜所

2.蒸留所

マルス信州蒸溜所

所在地〒399-4301 長野県上伊那郡宮田村4752−31
操業開始1985年

鹿児島の地で日本の蒸留酒「焼酎」造りに邁進していた本坊酒造が、ウイスキー製造免許を取得したのが1949年。それ以来、「いつか日本の風土を活かした本物のウイスキーを造りたい」と夢を抱き続けていました。
鹿児島でのウイスキー製造から数年経た後、1960年に山梨にワインとウイスキー製造のための工場「マルス山梨ワイナリー」を設立。そして、本格的にウイスキー造りに取り組むために、さらなる理想の地を探し求めました。

澄んだ空気の寒冷地であり、しかも適度な湿度と良質な水に恵まれていることなど、ウイスキー造りのための自然条件は大変厳しいものがあります。
こうした条件を満たす土地を探し求め、1985年ウイスキー造りに最適な環境を求めて長野県中央アルプス駒ヶ岳山麓標高798mの地にマルス信州蒸溜所を開設致しました。
1992年にウイスキー需要低迷により蒸留を休止。その後、世界的にジャパニーズウイスキーが評価されはじめる中、ウイスキー需要が回復傾向にあった2009年に蒸留再開を決意し2011年2月より再スタート。
2020年9月、35年ぶりの全面リニューアル。投資額は約12億円。

2019年5月から、老朽化した設備の改修とウイスキー増産を見据えた樽貯蔵庫施設の整備やウイスキー造りの見学を目的にしたウイスキー蒸留棟(樽貯蔵庫を含む)と、オリジナルウイスキーやグッズ販売などを目的にビジター棟を新設、既存の設備及び施設を改修。
新設したウイスキー蒸留棟は1,996㎡(延床面積、約2,500樽収容予定の樽貯蔵庫含む)、ビジター棟は746㎡。
引用:本坊酒造公式HP

■製造能力:原料麦芽1.1t/日
■原酒製造量:約700L/日、約185KL/年(2020年度予定)
■主要な設備:麦芽粉砕機1基、マッシュタンロイテル(糖化槽)6KL×1基、ステンレス発酵タンク6KL×3基、ダグラスファー木槽発酵タンク(移設)6KL×3基、初溜釜(移設)

マルス信州蒸溜所 | 見学体験 | 本坊酒造 公式サイト
長野県中央アルプス駒ヶ岳山麓の「マルス信州蒸溜所」では、ウイスキー製造設備や熟成庫の見学、蒸溜所限定品の購入をお楽しみいただけます。1949年に始まったマルスウイスキーの歴史や、マルスウイスキーの生みの親、岩井喜一郎氏設計の岩井式蒸留釜など、ここでしか見られないマルスウイスキーの世界をご堪能ください。

マルス信州蒸溜所の情報はこちら↓もご覧ください。

信州蒸溜所 | ジャパニーズウイスキーディクショナリー
Japanese Whisky Dictionary

3.商品名と写真

シングルモルト駒ヶ岳 屋久島エージング2021
Single Malt Komagatake Yakushima Aging 2021

4.特徴

画像出展:本坊酒造公式HP

バーボンバレルで3~5年熟成させたモルト原酒が主体
バニラ様の濃厚な甘い香りやバナナなどを連想させる甘さの強い果実香、そしてピート由来の土ぽく煙たいスモーキーフレーバーが後から追いかけてくる印象。バーボン樽特有の甘さと熟した果実のような甘さとが絡み合い、しっかりとピートも感じ取れる複雑かつバランスの取れたシングルモルトウイスキー。

4-1.テイスティングノート

香りバニラ、南国フルーツを思わせる甘い香りとバーボン樽由来の甘い香りの後からやや煙たいスモーキーな香りに変化していく
味わいなめらかな舌触りでメイプルシロップやフルーツのまろやかな甘さが前面に。後からピートが効いてくる味わい
余韻やわらかで土っぽいスモーキーフレーバーが徐々に鼻を抜けていく

4-2.商品スペック

アルコール度数56%
酒別シングルモルト
樽種バーボン樽ほか
内容量700ml
販売本数5,208本限定
希望小売価格9,680円(税込)
発売日2021年3月22日

5.受賞歴

現時点での受賞歴はありません。

6.価格

6-1.メーカー希望小売価格

商品名シングルモルト駒ヶ岳 屋久島エージング2021
容量700ml
希望小売価格税込:9,680円

6-2.メルカリでの転売価格

メルカリでの転売価格は、13,000円~19,000円前後となっています。(※2021/4/8時点)

6-3.ヤフーオークション落札価格

ヤフーオークションでの現在出品中の価格は、最安10,000円、最高17,000円、平均13,369円 (※2021/6/3時点) 

6-4.楽天、ヤフーショッピング、Amazon

楽天では24,800円、ヤフーショッピングでは18,000円で販売されています。(※2021/6/3時点)

6-5.BAR新海での提供価格

当サイトが運営する「BAR新海」では、1、45ml:2,970円、30ml:1,980円、15ml:990円で提供しております。

「BAR新海」のご案内
Japanese Whisky Dictionaryが運営する「BAR新海」は、東京都港区に3店舗。当サイトで紹介しているジャパニーズウィスキーをはじめ、国産のジンやビールなども取扱い。オリジナルカクテル、フレッシュフルーツカクテルなども人気。食事も豊富で1件目からも利用可能。

7.まとめ

注ぎたての香りはあまり甘さを感じなかったですが、少し時間をおいてから嗅いでみると一気に甘い香りが立ってました。
口に含んだ瞬間は甘さを前面に感じ取れますが、徐々にスモーキーな煙たさが表れてきます。アイラのような潮っぽい荒々しいピートではなく、どちらかと言えば大人しめで土っぽい煙たさのスモーキーフレーバーへ変化していきます。
バーボンバレル特有の甘さとフルーティーな甘さが複雑に絡み合い、スモーキーフレーバーで締めていく、といった感じです。
アルコール度56%ありますがそこまで強く感じるわけではなく、舌上は甘さと共にウイスキーがジワジワと徐々に消えていく印象で飲みやすいです。
少し加水すると甘さが少し身を潜めてしまい、スモーキーフレーバーが一気に押し寄せてくる一面もありますが、強すぎない程よいピートなので嫌な感じは一切しない感じです。
甘さをゆっくり長く感じながら飲みたい方はストレートかロックがおすすめ。
スモーキーフレーバーを感じたい方は少々の加水かソーダ割りで飲んでみてください。

本坊酒造といえばマルス信州蒸溜所が有名で、ブレンデッドウイスキーの「岩井トラディション」やシングルモルトの「駒ヶ岳」でお馴染みだと思いますが、最近は津貫蒸溜所からも続々とウイスキーがリリースされていて「津貫ザ・ファースト」「津貫ピーテッド」など、高品質なジャパニーズウイスキーを作り上げています。
2つの蒸留所と3つのセラーを持つ本坊酒造。「屋久島エージングセラー」のように特殊な環境下の元、同じタイミングで蒸留された原酒でも信州で熟成するか屋久島で熟成するかで同じ熟成期間でもウイスキーとしての味わいに違いが出るという特徴であり、本坊酒造の強みでもあります。

マルス信州蒸溜所・マルス津貫蒸溜所ともに、今現在一部制限はあるものの蒸留所見学を行っているので興味がある方は是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

マルス信州蒸溜所見学の申し込みはこちらから↓↓↓
工場見学/マルス信州蒸溜所 (MARS Shinshu Distillery)

マルス津貫蒸溜所見学の申し込みはこちらから↓↓↓
工場見学/マルス津貫蒸溜所 (MARS Tsunuki Distillery)

■「本坊酒造・シングルモルト駒ヶ岳」に関するその他の記事も是非ご覧ください。

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最後に:ジャパニーズウイスキーのおすすめ書籍

世界的なトレンドを巻き起こしている「ジャパニーズウイスキー」の事をもっと知りたい、もっと勉強したいという方は、是非こちらの書籍をおすすめいたします。

(1).Whisky Galore(ウイスキーガロア)Vol.42 2024年2月号

【巻頭特集】ウイスキーの聖地 アイラ島の“現在”を読み解く
アイラ島のウイスキーは、昔から「アイラモルト」という独自のカテゴリーを与えられてきた。現在9ヵ所の蒸留所があり、さらに2つの新蒸留所計画が発表されている、この小さな島を改めて紹介。
また、現在入手可能なウイスキー8種を土屋編集長が飲み比べる。
●掲載蒸留所
ボウモア、アードベッグ、ラガヴーリン、ラフロイグ、カリラ、ブナハーブン、ブルックラディ、キルホーマン、アードナッホー

【第2特集】北アイルランドのウイスキー
世界の五大ウイスキーのなかで、いまもっとも伸びているのがアイリッシュ。ブームを牽引する北アイルランドの最新情報をリポート。
●紹介ウイスキー
ブッシュミルズ、エクリンヴィル、グレンズ・オブ・アントリム、ヒンチ、キルオーウェン、マコーネルズ、ショートクロス、タイタニック・ディスティラーズ、トゥー・スタックス

【蒸留所リポート】
2023年に100周年を迎えたジャパニーズウイスキー。その第一歩が踏み出され、昨年リニューアルしたばかりのサントリー山崎蒸溜所を取材。そのほか月光川蒸留所や、個性的なツアーを行っている八郷蒸溜所&安積蒸溜所も紹介。

【インタビュー】
ワイルドターキーのマスターディスティラーであるエディー・ラッセル氏と、その息子ブルース・ラッセル氏を編集長がインタビュー。またフィンランドで自国ライ麦にこだわったウイスキーを造るキュロ蒸留所のミイカ氏にも話を聞いた。

【特集】
ウイスキーフェスティバル2023 in TOKYO、ウイスキーコニサークラブ新潟蒸留所ツアー、下田ウイスキーフェスリポート。

(2).ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー

世界的にも有名なウイスキー評論家で、ウイスキー文化研究所代表 土屋守先生の著書「ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー」です。
ウイスキーの基礎知識、日本へのウイスキーの伝来、ジャパニーズウイスキーの誕生、広告戦略とジャパニーズウイスキーの盛隆、そして、現在のクラフト蒸留所の勃興まで。日本のウイスキーの事が非常にわかりやすくまとめられた一冊。

(3).ウイスキーと私(竹鶴政孝)

日本でのウイスキー醸造に人生を捧げた、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝。ただひたすらにウイスキーを愛した男が自らを語った自伝の改訂復刻版。若き日、単身スコットランドに留学し、幾多の苦難を乗り越えてジャパニーズ・ウイスキーを完成させるまでの日々や、伴侶となるリタのことなどが鮮やかに描かれる。

(4).新世代蒸留所からの挑戦状

2019年発売。世界に空前のウイスキーブームが到来しているいま、クラフト蒸留所の経営者たちは何を考え、どんな想いでウイスキー造りに挑んだのか。日本でクラフト蒸留所が誕生するきっかけを作った、イチローズ・モルトで有名なベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏をはじめとする、13人のクラフト蒸留所の経営者たちが世界に挑む姿を綴った1冊。

(5).ウイスキーライジング

2016年にアメリカで出版された『Whisky Risng』の日本語版であり、内容も大幅にアップデート。ジャパニーズ・ウイスキーの歴史が詳細に記述されているだけでなく、近年、創設がつづくクラフト蒸溜所を含む、日本の全蒸溜所に関するデータも掲載。そのほかにも、今まで発売された伝説的なボトルの解説や、ジャパニーズ・ウイスキーが飲めるバーなども掲載されています。

(6).ウイスキーと風の味

1969年にニッカウヰスキーに入社した、三代目マスターブレンダーの佐藤茂夫氏の著書。
『ピュアモルト』『ブラックニッカクリア』『フロム・ザ・バレル』の生みの親でもあり、なかでも『シングルモルト余市1987』はウイスキーの国際的コンペティションWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)にて「ワールド・ベスト・シングルモルト」を受賞。
竹鶴政孝竹鶴威の意志を引き継いだブレンダー界のレジェンドが語る今昔。

この記事を書いた人
深瀬 悠二

北海道札幌市出身。
2005年、大手スポーツ用品販売チェーンに就職→2019年1月、BAR新海に就職しウイスキーの魅力に引き込まれ虜となる。初めて飲んだウイスキーはアードベッグ10年。ほぼ毎日ウイスキーを飲む中で更なる知識習得を目指し、ウイスキー検定2級とJC級(ジャパニーズクラフトウイスキー)を取得。
造り手の想いをしっかりと表現し、飲み手の方々に正しい情報を伝えたい。ウイスキーの魅力をたくさんの方に伝えたいという思いでウェブメディア「Japanese Whisky Dictionary」の編集を担当。

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