秩父蒸溜所と信州マルス蒸留所の原酒交換によるブレンデッドモルトウイスキーです。これはジャパニーズウイスキー業界において初の取り組みとなります。
2008年から稼働を始めた秩父蒸溜所と2011年に蒸留を再開した本坊酒造マルス信州蒸溜所。
スコットランドでは一般的に行われている原酒交換を日本でも実現できればと始まったもの。
高い志を持つ二つの蒸留所がジャパニーズウイスキーの新たな可能性を追求して立ち上げたこのプロジェクトは、6年前の2015年4月にお互いの原酒(ニューポット)の交換するところから始まりました。
盆地特有の寒暖差と荒川の恩恵を受けた自然豊かな秩父蒸溜所、中央アルプス駒ヶ岳山麓の美しい森に囲まれたマルス信州蒸溜所。
この二つの異なる環境で熟成を重ねた原酒はそれぞれの地でブレンドされ、新たな個性となって表現されました。
柔らかく透明感のあるフルーティーさ、そして少しずつ丁寧に重ねた香りの層が、深みとなって時間と共にゆったりと感じられます。
特徴を生かすためアルコール分高め、ノンチルフィルター・ナチュラルカラーでボトリング。
様々な可能性を秘めたジャパニーズウイスキーの魅力と可能性が詰まった一本となっています。
「自社で造ることができない原酒を確保し、その酒質が環境により、どう変化していくのか実感できる。共同企画は、単なる原酒交換にとどまらず、ブレンダーや造り手の腕前を磨くことにも繋がった。メーカーとして互いに高め合うことが、ジャパニーズウイスキーの技術水準や品質向上に繋がると考える」(ベンチャーウイスキー代表取締役社長 肥土伊知郎氏)
1.メーカー
株式会社ベンチャーウイスキー
設立 | 2004年 |
本社所在地 | 〒368-0067 埼玉県秩父市みどりが丘49 |
所有蒸留所 | 秩父蒸溜所、秩父第二蒸溜所 |
2.蒸留所
ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所
所在地 | 〒368-0067 埼玉県秩父市みどりが丘49 |
操業開始 | 2007年 |
秩父の風土に根ざしたシングルモルトウイスキー造りが行われています。
創業者の肥土伊知郎氏はジャパニーズウイスキーであることに誇りを持ち、小さなミル、マッシュタン、ミズナラ製の発酵槽、スコットランド・フォーサイス社製のポットスチルで手づくりに拘りモルトウイスキーを生産しています。
秩父蒸溜所周辺は自然豊かで空気がきれいで質の良い水、夏は高温多湿で朝晩が氷点下にいたる寒さの厳しい環境です。その厳しい気候が織りなす寒暖差がウイスキーの熟成に多大な影響を与え、短い熟成期間にも関わらずフルーティでバランスの取れたウイスキーに仕上がります。
2004年9月創業。
2007年に秩父蒸溜所が完成。
2008年2月、ウイスキー作りの免許が交付され秩父蒸溜所でウイスキー作りを開始。
2019年10月、第2蒸留所の稼働開始。
1973年設立のサントリー白州蒸溜所・キリン富士御殿場蒸溜所の次に設立された蒸留所。まさにウイスキー低迷期の終焉とも言えるこの時期に実に日本国内35年ぶりの蒸留所設立となる。
年間のウイスキー生産量はスコットランド・グレンリベット蒸留所のわずか2日分。
2019年秋から稼働している第2蒸留所の生産量は第1蒸留所のなんと5倍。一度に仕込む麦芽は2t。ポットスチルは5倍の量を蒸留できるよう形は同じストレート型だがかなり大きなポットスチルになっている。フォーサイス社製でガス直火蒸留機を使用。
秩父蒸溜所の情報はこちら↓もご覧ください。
マルス信州蒸溜所
所在地 | 〒399-4301 長野県上伊那郡宮田村4752-31 |
操業開始 | 1985年 |
鹿児島の地で日本の蒸留酒「焼酎」造りに邁進していた本坊酒造が、ウイスキー製造免許を取得したのが1949年。それ以来、「いつか日本の風土を活かした本物のウイスキーを造りたい」と夢を抱き続けていました。
鹿児島でのウイスキー製造から数年経た後、1960年に山梨にワインとウイスキー製造のための工場「マルス山梨ワイナリー」を設立。そして、本格的にウイスキー造りに取り組むために、さらなる理想の地を探し求めました。
澄んだ空気の寒冷地であり、しかも適度な湿度と良質な水に恵まれていることなど、ウイスキー造りのための自然条件は大変厳しいものがあります。
こうした条件を満たす土地を探し求め、1985年ウイスキー造りに最適な環境を求めて長野県中央アルプス駒ヶ岳山麓標高798mの地にマルス信州蒸溜所を開設致しました。
1992年にウイスキー需要低迷により蒸留を休止。その後、世界的にジャパニーズウイスキーが評価されはじめる中、ウイスキー需要が回復傾向にあった2009年に蒸留再開を決意し2011年2月より再スタート。
2020年9月、35年ぶりの全面リニューアル。投資額は約12億円。
2019年5月から、老朽化した設備の改修とウイスキー増産を見据えた樽貯蔵庫施設の整備やウイスキー造りの見学を目的にしたウイスキー蒸留棟(樽貯蔵庫を含む)と、オリジナルウイスキーやグッズ販売などを目的にビジター棟を新設、既存の設備及び施設を改修。
新設したウイスキー蒸留棟は1,996㎡(延床面積、約2,500樽収容予定の樽貯蔵庫含む)、ビジター棟は746㎡。
引用:本坊酒造公式HP
■製造能力:原料麦芽1.1t/日
■原酒製造量:約700L/日、約185KL/年(2020年度予定)
■主要な設備:麦芽粉砕機1基、マッシュタンロイテル(糖化槽)6KL×1基、ステンレス発酵タンク6KL×3基、ダグラスファー木槽発酵タンク(移設)6KL×3基、初溜釜(移設)
マルス信州蒸溜所の情報はこちら↓もご覧ください。
3.商品名と写真
イチローズモルト ダブルディスティラリーズ 秩父×駒ヶ岳 2021
Ichiro’s Malt Double Distilleries Chichibu×Komagatake 2021
4.特徴
共同企画により、両社はニューポット段階で、原酒交換を行い熟成することで、造り手が表現できる幅を広げ、よりバリエーション豊かな原酒を保有することになりました。また、熟成過程において、経年変化を確かめ合うことが経験値となり、ブレンダーや造り手にとって技術を高め合うことに寄与しています。お互いの原酒の特徴を深く理解し、両社の原酒があるからこそ表現できた味わい。イチローズモルトとマルスウイスキー相互に信頼できる品質の原酒だからこそ実現し、両社は理想の味わいを目指し新たに挑戦する第一歩を踏み出しました。
両社は、この取り組みがジャパニーズウイスキーの多様性のある魅力として新たに評価され、ウイスキーメーカー同士の原酒交換が、技術水準や品質向上に繋がるものとして広がり、ジャパニーズウイスキーの品質をより一層高めていく、きっかけになることを期待し、今後も継続して原酒交換を行ってまいります。また、今回の共同企画を通じて新たなジャパニーズウイスキーの可能性を知っていただき、ウイスキーファンの皆様をはじめ、多くの皆様に楽しんでいただければと考えております。
引用:イチローズモルトとマルスウイスキー原酒交換による共同企画ウイスキーを発売|本坊酒造のプレスリリース|共同通信PRワイヤー
4-1.テイスティングノート
香り | 爽やかなフルーツの香りとメイプルシロップのような甘い香りが広がる |
味わい | 青りんご、マスカット、白桃のようなフルーティな甘さが際立つ |
余韻 | 甘さの後に焦げたパンのような香ばしさに変わる |
4-2.商品スペック
アルコール度数 | 53% |
酒別 | ブレンデッドモルト |
樽種 | ー |
内容量 | 700ml |
販売本数 | 10,200本限定 |
希望小売価格 | 16,500円(税込) |
発売日 | 2021年4月 |
5.受賞歴
現時点での受賞歴はありません。
6.価格
6-1.メーカー希望小売価格
商品名 | イチローズモルト ダブルディスティラリーズ秩父×駒ヶ岳 2021 |
容量 | 700ml |
希望小売価格 | 税込:16,500円 |
6-2.メルカリでの転売価格
メルカリでの転売価格は、120,000円~150,000円前後となっています。(※2021/5/7時点)
6-3.ヤフーオークション落札価格
ヤフーオークションでの落札価格は、最安100,000円、最高167,000円、平均128,257円 (※2021/5/7時点より過去120日間の統計情報)
6-4.楽天、ヤフーショッピング、Amazon
通販サイトでも、150,000円前後~200,000円前後で販売されています。 (※2021/6/3時点)
6-5.BAR新海での提供価格
当サイトが運営する「BAR新海」では、1杯、45ml:4,950円、30ml:3,300円、15ml:1,650円 で提供しております。
7.まとめ
3月30日に発売された「三郎丸蒸留所×長濱蒸溜所」の原酒交換による新商品の発売もジャパニーズウイスキー業界内では話題となったばかりでした。
今回の「駒ヶ岳×秩父」のブレンデッドモルトは6年前の2015年から進められていた共同企画で、長い年月を経た新しい試みだったようです。原酒交換はスコットランドでは一般的に行われてきましたが、これまでのジャパニーズウイスキーでは考えられなかった常識を覆す取り組みです。ジャパニーズウイスキー史に新たな歴史が刻まれました。今後もこのような取り組みが増えていくとますますジャパニーズウイスキー業界が盛り上がっていくこと間違いないと思います。
今現在、グレーン原酒が製造できる国内の蒸留所は限られていますが、モルト原酒とグレーン原酒の交換によるブレンデッドウイスキーができる日もそう遠くないのかもしれないと期待してしまいますね。
■「イチローズモルト」に関するその他の記事も是非ご覧ください。
最後に:ジャパニーズウイスキーのおすすめ書籍
世界的なトレンドを巻き起こしている「ジャパニーズウイスキー」の事をもっと知りたい、もっと勉強したいという方は、是非こちらの書籍をおすすめいたします。
(1).Whisky Galore(ウイスキーガロア)Vol.47 2024年12月号
【巻頭特集】
「新アイリッシュ・ルネッサンス[第2弾]」
【第2特集】
「日本のクラフト蒸留所最前線」
今号では北海道の厚岸と苫小牧、そしてクラフト蒸留所に麦芽を供給する中標津のクラフトモルティング社についても紹介します。さらに三島のウォータードラゴンと、ZEMONⅡが稼働する飛騨高山蒸溜所も再訪。
【連続ロングインタビュー】
第3回 ガイアフロー静岡蒸溜所 中村大航氏
【特別リポート】
遊佐蒸溜所の挑戦
第二期リニューアルが完了したサントリー白州蒸溜所
(2).ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー
世界的にも有名なウイスキー評論家で、ウイスキー文化研究所代表 土屋守先生の著書「ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー」です。
ウイスキーの基礎知識、日本へのウイスキーの伝来、ジャパニーズウイスキーの誕生、広告戦略とジャパニーズウイスキーの盛隆、そして、現在のクラフト蒸留所の勃興まで。日本のウイスキーの事が非常にわかりやすくまとめられた一冊。
(3).ウイスキーと私(竹鶴政孝)
日本でのウイスキー醸造に人生を捧げた、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝。ただひたすらにウイスキーを愛した男が自らを語った自伝の改訂復刻版。若き日、単身スコットランドに留学し、幾多の苦難を乗り越えてジャパニーズ・ウイスキーを完成させるまでの日々や、伴侶となるリタのことなどが鮮やかに描かれる。
(4).新世代蒸留所からの挑戦状
2019年発売。世界に空前のウイスキーブームが到来しているいま、クラフト蒸留所の経営者たちは何を考え、どんな想いでウイスキー造りに挑んだのか。日本でクラフト蒸留所が誕生するきっかけを作った、イチローズ・モルトで有名なベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏をはじめとする、13人のクラフト蒸留所の経営者たちが世界に挑む姿を綴った1冊。
(5).ウイスキーライジング
2016年にアメリカで出版された『Whisky Risng』の日本語版であり、内容も大幅にアップデート。ジャパニーズ・ウイスキーの歴史が詳細に記述されているだけでなく、近年、創設がつづくクラフト蒸溜所を含む、日本の全蒸溜所に関するデータも掲載。そのほかにも、今まで発売された伝説的なボトルの解説や、ジャパニーズ・ウイスキーが飲めるバーなども掲載されています。
(6).ウイスキーと風の味
1969年にニッカウヰスキーに入社した、三代目マスターブレンダーの佐藤茂夫氏の著書。
『ピュアモルト』『ブラックニッカクリア』『フロム・ザ・バレル』の生みの親でもあり、なかでも『シングルモルト余市1987』はウイスキーの国際的コンペティションWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)にて「ワールド・ベスト・シングルモルト」を受賞。
竹鶴政孝、竹鶴威の意志を引き継いだブレンダー界のレジェンドが語る今昔。