「イチローズモルト」で知られる国産クラフトウイスキーメーカー筆頭のベンチャーウイスキーが、
苫小牧東部地域(苫東)の臨空柏原地区に、グレーンウイスキーの蒸溜所を新設すると発表しました。
5月8日から総投資額数10億円で整備し、2025年春の操業開始を目指すとのことです。
ベンチャーウイスキーは埼玉県秩父市に本拠地を置き、現在第1、第2蒸溜所が稼働中。
これに新設の蒸溜所が加わる事になり、更なるラインナップの拡大や流通量の増加が期待出来るのではないでしょうか。
新設予定の蒸溜所の総面積は約6.6ヘクタールで、トウモロコシなどの原料を発酵・蒸溜する設備、ウイスキーを長期間熟成させるための貯蔵庫などで構成。年間生産能力は2400キロリットル。貯蔵庫の規模拡大を見込むため、総投資額は幅を持たせている。25年春の操業開始に向けて、地元で新規雇用約20人を予定している。ウイスキーの熟成期間は最短3年間で、28年春に「苫小牧産ウイスキー」の市場流通開始を目指す。
引用元:yahoo!ニュース
Contents
1.ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所
1-1.ベンチャーウイスキー 秩父蒸溜所
2008年に操業をスタートした秩父蒸溜所は、僅か数年で「イチローズモルト」として世界が注目するウイスキーメーカーとなりました。
創業者「肥土伊知郎」氏の父が経営していた「東亜酒造」は羽生蒸留所を所有してウイスキー製造を行っていました。肥土氏が2001年に引き継いだ時には経営不振となっており、2003年に「日の出通商」へ営業譲渡されます。その時にウイスキー事業からの撤退も決定され、貯蔵されていたウイスキーは廃棄される危機を迎えてしまいます。引き取り手探しに奔走し、笹の川酒造からの協力を得る事に成功し、貯蔵庫を間借りして羽生蒸留所に貯蔵されていたウイスキーを移動する事ができました。その後、笹の川酒造と共に羽生蒸留所の原酒を使ったウイスキーの販売を行う。
肥土氏は、2004年に㈱ベンチャーウイスキーを設立し、2007年に肥土氏自らの故郷でもあり、酒造りに適した環境でもある事より秩父にウイスキー蒸溜所を完成させます。
ウイスキーフェスティバル2019出展の様子。これまでにリリースされた商品から一部の商品を試飲する事が出来ました。常時ブースは行列でイチローズモルトの人気の高さを表していました。
所在地 | 〒368-0067 埼玉県秩父市みどりが丘49 |
アクセス |
<電車> |
操業開始 | 2007年 |
公式HP | Chichibu Distillery Facebookページ |
見学 | プロ向けのみ。一般見学は行っておりません。 |
商品 | イチローズモルトミズナラウッドリザーブ、イチローズモルトダブルディスティラリーズ、イチローズモルト&グレーン…etc |
秩父蒸溜所の代表的なウイスキー
1-2.ベンチャーウイスキー 秩父第2蒸溜所
2018年、秩父蒸溜所から400m程離れた場所に秩父第二蒸溜所を操業しました。
第2蒸溜所では、発酵槽をミズナラ材からフレンチオーク材へ変更。更に、ポットスチルを蒸気による間接式加熱から、ガスによる直火式加熱に変更しています。
アルコール換算生産量は、第1蒸留所が1日160リットルに対して、第2蒸留所は1日800リットルと約5倍の生産量となります。
現在は入手困難なイチローズモルトですが、第2蒸留所の操業開始により今後生産量が大幅に増え、商品の流通量も増えて来ることが予想されます。
2.苫小牧市
苫小牧市は北海道中南部(道央)に位置する都市。
苫小牧港を有し、新千歳空港にも近接する利便性から王子製紙をはじめとする様々な分野の工場が進出する道内でも随一の工業都市でありながら日本二百名山に数えられる樽前山や国の鳥獣保護区やラムサール条約登録湿地にも指定されているウトナイ湖を有する等自然にも富んでおり、ウイスキー造りに重要な水質についても高品質なものが期待出来る蒸溜所開設にはうってつけの条件を備えた都市なのではないでしょうか。
交通・流通アクセスの良さと自然環境の両立、ウイスキー造りに最適な要素を含むことがベンチャーウイスキーの北海道進出を決めた要因であることは間違いないと思われます。
3.考察
引用元のニュース内にて代表の肥土伊知郎氏は新設の蒸溜所をグレーンウイスキー蒸溜所として計画する事を語っており、操業開始当初は北米産トウモロコシを主原料としながらも道産品も価格動向を見極めながら積極的に取り入れる方針とし、将来的には完全純国産のシングルグレーンウイスキーや秩父第1、第2蒸溜所のモルトウイスキーとバッディングさせたブレンデッドウイスキーを作っていくことは想像に難くありません。
新設の蒸溜所の稼働が安定し、供給量も増えていけばイチローズモルトブランドの更なるラインナップの拡大や市場への供給量の増加も期待でき、我々がより気軽にイチローズモルトブランドのウイスキーを楽しめる日もそう遠くないのではないでしょうか。
蒸溜所竣工へ向けた進捗等、今後の動向を追いながらやがて造られる新たなウイスキーの誕生を期待して待ち続けていきたいところです。
最後に:ジャパニーズウイスキーのおすすめ書籍
世界的なトレンドを巻き起こしている「ジャパニーズウイスキー」の事をもっと知りたい、もっと勉強したいという方は、是非こちらの書籍をおすすめいたします。
(1).Whisky Galore(ウイスキーガロア)Vol.34 2022年10月号
ウイスキー文化研究所が出版するウイスキーガロアの2022年10月号は、『日本の蒸留酒づくり最前線』世界のウイスキー市場がますます拡大を続ける中、ジンやラム、そして焼酎・泡盛にも世界が注目。今回はジャパニーズウイスキーのクラフト蒸留所、そして黒糖、泡盛、ラムの蒸留所など合計10ヵ所を紹介。SETOUCHI DISTILLERY、馬追蒸溜所は今回初公開。