世界遺産厳島神社の大鳥居を背に、日本酒や焼酎で広島の酒文化を100年余支え続けてきた酒蔵が仕掛ける次の100年は、驚くような新しい発想とこれまでの確かな技術を併せ持つ、ハイブリットな蒸留所。
1.概要
日本酒、焼酎、みりんなど、日本ではじめて紙パック容器に日本酒を入れて販売するなど、酒類製造総合企業として広島で長く親しまれてきた中国醸造が、設立100周年を記念して新たに立ち上げ。
事業内容は一時製造を中止していたウイスキー製造再開と新たなジンの商品展開。
桜尾ジンは先行展開され数々の賞を受賞し殿堂入りを果たしています。
そんな中国醸造が2021年に「株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリー」に改名。
実は限定でウォッカも製造しています。
2023年に発表したウイスキー蒸留所併設型テーマパーク「SAKURAO YOSHIWA WHISKY PARK(仮称)」は我々モルトラバーにとって、千葉のテーマパークのそれに匹敵するものと思われます。
2.基本情報
2-1.オーナー
サクラオブルワリーアンドディスティラリー(旧中国醸造)
2-2.所在地
〒738-8602
広島県廿日市市桜尾一丁目12番1号
2-3.アクセス
【JR】
広島駅からJR山陽本線岩国行方面の「廿日市駅」下車し徒歩約15分
2-4.操業開始
2017年(平成29年)
2‐5.主力商品
味わいはピーティな桜尾とフルーティな戸河内、熟成は沿岸部と山間部と全くもって対照的な2本は、ぜひ飲み比べるのにオススメで、どちらも比較的入手しやすいところも○。
現在のところありません。
3.見学・ビジターセンター
事前予約必須。
蒸留所のスタッフが付いて丁寧に解説してくれ、更には日本語だけでなく時間帯に分かれますが、英語での案内も行っている為、海外の人も安心。
見学後はビジターセンターでテイスティングイベントも行われ、ここでしか買えないお酒やグッズが豊富に用意され、特筆すべきはお一人様一本限定の桜尾と戸河内の二つの原酒をヴァテッドした、シングルモルト『宮ノ鹿』はマストで手に入れたいところ。
【開催スケジュール】
日本語/10:30~
15:00~
英語 /14:00~
【所要時間】
90分程度
【定員】
10名
【料金】
一人2000円
実際にスタッフが行ってきたSAKURAO DISTILLERYの蒸留所見学の様子はこちらから↓
3‐1.周辺グルメ情報
広島市内にあるバー「Little Happiness」と「The BarTopNote」は蒸溜所のスタッフもよく出入りしているそうなのでマスターから貴重なお話が聞けるかも知れません。
ちなみに「The BarTopNote」は広島で初めてベストディスカバリー50に選出されています。
※ベストディスカバリー50とは食事に妥協したくない旅人に向けて、世界中から50名のグルメ通達が投票で選んだ75カ国1600軒以上の飲食店をレビューしています。
このリストは世界のベストレストラン50と世界のベストバー50、南アメリカのベストレストラン50、アジアのベストレストラン50、アジアのベストバー50といったランキングからのデータと、その他の地元ならではの飲食店を組み合わせることで、実際の体験に基づき50ベストのアカデミーが太鼓判を押す種類豊富なレストランやバーを紹介します。
このアカデミーには、総勢1700名の世界的に著名な食レポライターやシェフ、レストラン通、バー経営者や美食家達が参加しています。
3‐2.観光宿泊
早い時間に見学が終われば、フェリーを使って約50分ほどの近さに厳島神社があります。
訪れたことがないのであれば、おススメの観光ルートかも知れません。
4.製造スペック
メインで使用するホルスタイン社のハイブリットスチルはポットスチルとコラムスチルの併用によって、蒸気と銅の接触を増やすための工夫があります。
スチル内には焦げ付きを防ぐ撹拌翼が内蔵され、加熱用に蒸気を直接吹き込める機能も加えられています。
これはどちらも華やかなエステル香を獲得するための機能ですがあえて使用せずにリッチな酒質を作る事も可能。
生産量 | ー |
仕込み水 | 小瀬川水系の天然水 |
仕込み量 |
ワンバッチ1トン |
モルトミル | スイスビューラー社製ローラーミル4本 他、国産グレーンウイスキー用粉砕機1基 |
糖化槽 | ハンガリーバーバリアン社製ステンレス・セミロイタータン グレーンウイスキー用クッカー1基 |
麦汁量 | 4500リットル |
使用酵母 |
ディスティラリー酵母 |
発酵槽 | ステンレス6基(バーバリアン社製3基、国産3基)約5700リットル 発酵64時間 グレーンウイスキー用12基 発酵約96時間 |
ポットスチル | 初留 ドイツホルスタイン社製ランタン型1基5500リットル グレーンウイスキー用ステンレス(減圧機能搭載型)1基 再留 ホルスタイン社製ランタン型ハイブリットスチル1500リットル+6段棚1セット 薮田産業製グレーンウイスキー用ステンレス焼酎蒸留器 サクラオ自社製銅製コラムハイブリットスチル1セット 加熱方式は初留再留共にスチームジャケット |
冷却装置 | 初留再留共に冷却塔 |
ボトリング設備 | 有り |
熟成庫 | 桜尾貯蔵庫 ダンネージ式 グレーンウイスキーパラタイズ式併用 戸河内貯蔵庫 ダンネージ式3段約4,500樽 |
その他 |
ー |
5.熟成環境について
SAKURAO DISTILLERYは二つのウエアハウスを所有しており、一つは蒸留所内にあり、モルトウイスキーの樽は横置き、グレーンウイスキーを入れた樽は縦に置いて配置されています。
見学した際には、配置された樽にプロジェクションマッピングを使用した美しい映像を見る事が出来ます。
もう一つは蒸留所から車で一時間ほどの距離にある国鉄時代に使用されていた廃トンネル「戸河内トンネル」の中にあります。
トンネル内は湿度80%と高い湿度を誇る為、樽内の量は変わらず、アルコール度数だけが落ちていきます。
それはエンジェルズシェアがほぼ0%だと言う事を意味します。
あまりにも高い湿度のおかげでウイスキー樽の命綱とも言えるフープが錆び付いてしまうので管理が大変なのだそう。
加えて近くにスキー場があり積雪する事ので樽の出し入れができない時期があるそうです。
6.蒸留所ストーリー
6-1.歴史
1918年 (大正7年) |
地元清酒メーカーの共同出資で中国酒類醸造が設立。焼酎を製造。 |
---|---|
1920年 (大正9年) |
ウイスキー製造免許取得。 |
1938年 (昭和13年) |
株式会社に改組。 |
1963年 (昭和38年) |
清酒醸造に着手、焼酎、リキュール、みりん、ウイスキーなど酒類の総合製造企業となる。 |
~ | 主な製品として「戸河内」「グローリーエキストラ(V.O.)」モルトグレーンウイスキー「達磨」など発売 |
1989年 (平成元年) |
ウイスキー製造を休止。 |
2003年 (平成15年) |
「戸河内」発売。 |
2004年 (平成16年) |
単式蒸留器を増設(焼酎、スピリッツ用)。 |
2008年 (平成20年) |
戸河内の貯蔵庫の原酒と輸入原酒をブレンドした「戸河内」ウイスキーの一般販売を開始。 |
2016年 (平成28年) |
「戸河内25年(広島東洋カープ セ・リーグ優勝記念2016)」発売。 |
2017年 (平成29年) |
桜尾蒸留所を竣工し蒸留再開。「戸河内 広島東洋カープ セ・リーグ優勝記念2017」発売。 |
2018年 (平成30年) |
創業100年の記念事業としてSAKURAO DISTILLERYを設立。 ジン「SAKURAO GIN ORIGINAL」「同 LIMITED」「SAKURAO GIN HAMAGOU」発売。 蒸留所見学を開始、ビジターセンター開設。 |
2019年 (令和元年) |
蒸留所2期工事(グレーンウイスキー設備導入、ウイスキー貯蔵庫新設、ホルスタイン社製ポットスチル1基を増設。従来あるハイブリッド型は再留用、ジン蒸留用へ。) |
2021年 (令和3年) |
社名を株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリーに変更。 「シングルモルト桜尾 1st Release」 「シングルモルト戸河内 1st Release」(ともにカスクストレングス)発売。 発酵槽を増設。 |
2022年 (令和4年) |
「シングルモルト桜尾」「シングルモルト戸河内」(ともにアルコール度数43%) 「シングルモルト桜尾 SHERRY CASK STILLMAN’S SELECTION」 「シングルカスク桜尾 リカマンウイスキーメッセ2022ボトル」 「戸河内2019 3年 for THE WHISKY CREW」 「戸河内 2019 3年 ジャパニーズフェス2022 in 東京記念ボトル」発売。 |
2023年 (令和5年) |
数量限定「戸河内ウヰスキー HIROSHIMA」広島県内限定発売。 モルト、グレーン両ウイスキーともにSAKURAO DISTILLERYで蒸留、貯蔵、ブレンド、ボトリングした「ブレンデッドジャパニーズウイスキー戸河内 PREMIUM」 「同 SAKE CASK FINISH」「同 BEER CASK FINISH」「同 PEATED CASK FINISH」発売。 新設ウイスキー蒸留所を含む「SAKURAO YOSHIWA WHISKY PARK(サクラオ ヨシワ ウイスキー パーク・仮称)」の建設を発表。 |
6-2.歴代のブレンダー
特定のマスターブレンダーは存在せず、SAKURAO独自に広島大学研究所との共同研究を進めており、香味成分の特定によって官能評価を定量的に裏付けています。
よってテイスティングでも絶対評価はせず、他社製品との比較もしながら戦略的にポジショニングしています。
蒸留責任者 山本泰平
平成10年広島大学大学院工学研究科工業化学専攻修了。
同年、中国醸造株式会社入社し、製造部商品開発課に配属される。
2006年商品開発室開発主任に就任し、桜尾蒸溜所では建屋設計の段階から携わり、製造設備の選定を行う。
また『桜尾ジン』の開発を手掛けた人物。
2018年8月製造本部副部長 蒸留責任者。
2021年10月製造本部部長 蒸留責任者に就任。