山形県遊佐町が「ウイスキーの町」宣言

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遊佐蒸溜所月光川蒸留所

鳥海山の麓から、ウイスキーツーリズムの新たな試み

日本海を望み、霊峰・鳥海山の麓に広がる山形県遊佐町。

この地がいま、「ウイスキーの町」を掲げ、新たな一歩を踏み出した。

同地では現在、「遊佐蒸溜所」、「月光川蒸留所」の2つが稼働をしており、すでに製品リリースが行われている。

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1.「ウイスキーの町」が描く、体験と文化の融合

引用:山形新聞オンライン

左から金龍の佐々木雅晴社長、松永裕美町長、楯の川酒造の佐藤淳平代

1-1.2つの蒸溜所が連携、ウイスキーツーリズム始動へ

日本海を望み、霊峰・鳥海山の麓に広がる山形県遊佐町。

この地がいま、「ウイスキーの町」を掲げ、地域と蒸溜所が一体となった新たな挑戦を始める。

実は全国を見渡しても、同一町内に異なる製造元のウイスキー蒸溜所を二つ擁するのは、「北海道余市町」と「山形県遊佐町」だけ。

この希少な環境を背景に、町は「ウイスキーの町」宣言を機に、2つの蒸溜所と連携したウイスキーツーリズムの展開を打ち出した。

遊佐町内では現在、金龍が手がける「遊佐蒸溜所(YUZA Distillery)」、そして楯の川酒造が手掛ける「月光川蒸留所(Gekko River Distillery)」の2拠点が稼働。

この“二蒸溜所体制”による宣言は、地方に独自のウイスキー文化圏を形成する大きな進歩といえる。

冷涼な気候、豊かな水、そして土地に根ざした造り手たち。
そして鳥海山の「山側」と「海側」に分かれた2つの蒸溜所ならではのキャラクターの違い。

遊佐町が掲げた「ウイスキーの町」宣言は、単なる地域振興策にとどまらず、東北発のウイスキーツーリズムという新たな文化の潮流を切り開くものとなりそうだ。

1-2.「ウイスキーの町」が描く、新たな体験のかたち

近年、蒸溜所や酒蔵を巡る「大人の社会見学」が人気を集めている。

遊佐町ではこの流れを追い風に、2026年度中の観光ツアー開始を目指し準備を進めている。

ツアー内容は、観光客を対象とした蒸溜所見学を中心に、町内飲食店によるペアリングメニューの提供、宿泊・交通を組み合わせた体験型プランの造成など、ウイスキーを軸に地域資源を再編集する構想だ。

さらに、ウイスキー愛好家向けのイベント開催も視野に入れており、町内限定ボトルの企画や地元食材とのマリアージュ体験など、「遊佐ならではのウイスキー文化」を発信する場としての展開が期待されている。

町担当者はこう語る。

「鳥海山と日本海、そして清冽な水。この地の自然こそが、遊佐ウイスキーの個性そのもの。ウイスキーを通じて、遊佐の魅力を世界に届けたい。」

静かな日本海沿いの町に、2つの蒸溜所が立ち並ぶ。

遊佐町が描くのは、単なる観光ではなく、“風土を味わう体験”そのものだ。

樽の香りと山からの恵み、潮風が混じり合うこの土地から、東北のウイスキー文化は新たな1歩を踏み出す。

3.遊佐蒸溜所について

最高品質の、世界が憧れるジャパニーズ・ウイスキーを、ここ山形から。

遊佐蒸溜所を運営する株式会社金龍は、1950年に山形県内の日本酒メーカー9社による合弁会社として創業し、醸造用アルコールと呼ばれるニュートラルスピリッツの生産や、連続蒸溜機でつくる甲類焼酎の生産を行っています。
金龍は山形唯一の焼酎専門メーカーですが、焼酎や日本酒の消費量の下降や、山形県の人口の問題を考えた時に、将来にむけた新たな事業として取り組んだのがウイスキー事業でした。

株式会社金龍が2018年に山形県遊佐町に開設した、東北地方3か所目のウイスキー蒸溜所です。

新鮮で澄んだ空気と、「水の郷百選」に選ばれた、名峰鳥海山の伏流水に恵まれた遊佐町は、最高品質のウイスキー造りに適した土地。
使用するポットスチルはフォーサイス社製、発酵槽は5つ、カナダ産のベイマツを使用しています。製法や熟成方法もスコットランドの方式を採用、若いウイスキーは樽出しせず、納得のいくまで十分に熟成を重ねたウイスキーだけを、シングルモルトのみに絞って製造。大量生産ができない小さな蒸溜所だからこそ、細部までとことん手を尽くし、こだわりを詰め込んだ最高品質のウイスキーをつくります。

遊佐蒸溜所ウイスキーの
コンセプト「TLAS」

遊佐蒸溜所で造るウイスキーは、
Tiny(ちっぽけな)
Lovely(かわいい)
Authentic(本物の)
Supreme(最高の)
上記の頭文字を取った「TLAS(トラス)」をコンセプトとしています。

遊佐蒸溜所は、敷地面積約4,550㎡、蒸溜所面積は約620㎡と、ウイスキー蒸溜所としてはとても小規模な蒸溜所です。外観は小さく可愛らしくも見えますが、造るウイスキーは本格的かつ最高品質のものを目指します。伝統的な製法を用いつつも、日本らしい「ものづくり」に対するこだわりを持って造る、世界に一つのジャパニーズウイスキーです。

遊佐公式HPより引用

当サイトによる見学レポートも是非ご覧ください。

山形県 遊佐蒸溜所レポート:見学訪問レポート(2025年9月)
地酒「爽やか金龍」から世界を見据えたウイスキー「YUZA」の挑戦。山形県・鳥海山麓の町、遊佐。ここにで静かに、しかし確かな意志を宿したウイスキー蒸溜所が稼働しています。

4.月光川蒸留所について

月光川水系の豊富な水と日本酒醸造で培った繊細な技術を活かした「庄内産ウイスキー」で、クラシカル・オーセンティックな質の高いシングルモルトを生産する蒸溜所。

鳥海山の海側に位置する同蒸溜所は、森を抜けた先にある日本海からの潮風が香る。
設備に関しては、発酵槽に温度調整可能なステンレスサーマルタンク使用。ポットスチルは三宅製作所製。かなり絞りがきいている初留器が特徴的。
2023年9月蒸留開始予定でシングルモルトは2027年頃を目標に製造を行っている。

熟成庫には川を流していたり新しく、かつ実用的な取り組みも行っている。

1日の仕込み量は麦芽400kgで年間250回仕込みで6万リッターの生産を目指す。

当サイトによる見学レポートも是非ご覧ください。

山形県 月光川蒸溜所レポート:見学訪問レポート(2025年9月)
月光川蒸溜所 鳥海山と海の恵み。新たな挑戦

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最後に:ジャパニーズウイスキーのおすすめ書籍

世界的なトレンドを巻き起こしている「ジャパニーズウイスキー」の事をもっと知りたい、もっと勉強したいという方は、是非こちらの書籍をおすすめいたします。

(1).Whisky Galore(ウイスキーガロア)Vol.52 2025年10月号

【巻頭特集】
日本のクラフト蒸留所最前線2025
計画段階も含めるとついに130ヵ所近くになった国内クラフト蒸留所から、今回は7ヵ所をピックアップ。
ベンチャーウイスキーの苫小牧グレーンウイスキー蒸留所のほか、ガロア初公開となる蒸留所も紹介。
●掲載蒸留所
玉野アセンド蒸留所/高藏蒸留所/伊勢蒸留所/泉州蒸溜所/久住蒸溜所/サワマチ蒸溜所/馬追蒸溜所/苫小牧蒸溜所

サントリーの伝統が息づく「工房」へ

The Tasting 話題の30本
飲んで謎解き!? 土屋守の今、飲むべきボトル

(2).ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー

世界的にも有名なウイスキー評論家で、ウイスキー文化研究所代表 土屋守先生の著書「ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー」です。
ウイスキーの基礎知識、日本へのウイスキーの伝来、ジャパニーズウイスキーの誕生、広告戦略とジャパニーズウイスキーの盛隆、そして、現在のクラフト蒸留所の勃興まで。日本のウイスキーの事が非常にわかりやすくまとめられた一冊。

(3).ウイスキーと私(竹鶴政孝)

日本でのウイスキー醸造に人生を捧げた、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝。ただひたすらにウイスキーを愛した男が自らを語った自伝の改訂復刻版。若き日、単身スコットランドに留学し、幾多の苦難を乗り越えてジャパニーズ・ウイスキーを完成させるまでの日々や、伴侶となるリタのことなどが鮮やかに描かれる。

(4).新世代蒸留所からの挑戦状

2019年発売。世界に空前のウイスキーブームが到来しているいま、クラフト蒸留所の経営者たちは何を考え、どんな想いでウイスキー造りに挑んだのか。日本でクラフト蒸留所が誕生するきっかけを作った、イチローズ・モルトで有名なベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏をはじめとする、13人のクラフト蒸留所の経営者たちが世界に挑む姿を綴った1冊。

(5).ウイスキーライジング

2016年にアメリカで出版された『Whisky Risng』の日本語版であり、内容も大幅にアップデート。ジャパニーズ・ウイスキーの歴史が詳細に記述されているだけでなく、近年、創設がつづくクラフト蒸溜所を含む、日本の全蒸溜所に関するデータも掲載。そのほかにも、今まで発売された伝説的なボトルの解説や、ジャパニーズ・ウイスキーが飲めるバーなども掲載されています。

(6).ウイスキーと風の味

1969年にニッカウヰスキーに入社した、三代目マスターブレンダーの佐藤茂夫氏の著書。
『ピュアモルト』『ブラックニッカクリア』『フロム・ザ・バレル』の生みの親でもあり、なかでも『シングルモルト余市1987』はウイスキーの国際的コンペティションWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)にて「ワールド・ベスト・シングルモルト」を受賞。
竹鶴政孝竹鶴威の意志を引き継いだブレンダー界のレジェンドが語る今昔。

この記事を書いた人
大石 竜平

北海道出身 bar新海虎ノ門店のバーテンダー。
都内のレストランで従事し、日本ソムリエ協会認定ソムリエ資格を取得。
土地それぞれの風土から様々な味わいが作り出される日本のウイスキーに興味を持ち、bar新海に就職。蒸留所へ行き、造り手の方々に話を聞き、その情熱・情報をバーテンダーとして伝搬するべく、JWDに参加。

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