150年の伝統と歴史ある鹿児島さつまを代表する本坊酒造発祥の地であり本土最南端に位置する「津貫」のテーマは「ディープでエネルギッシュ」と本坊酒造全体のスローガン「ローカルはグローバル」を色濃く反映させる蒸留所。
1.概要
2016年操業開始。
薩摩半島南西の山間に囲まれた本坊酒造の原点とされる場所にあるマルス津貫蒸溜所。
九州に本社を置く醸造業としては酒類の数が最も多い企業として有名。
駒ヶ岳蒸溜所との明確な差別化をはかる為、力強くフルボディな酒質を目指しています。
造り分けにこだわり、麦芽を他の品種と混ぜたり、麦汁の濃さを変えたり、二つの蒸留所間での原酒を掛け合わせ、更には我が国最初の自然世界遺産である屋久島エージングセラーでの熟成等、多種多様な試みがなされ無限とも言える組み合わせで、日々原酒が生み出されています。
実は当初マルス信州蒸溜所(現マルス駒ヶ岳蒸溜所)を増築して生産体制を強化する案もありましたが、多様な原酒を必要としていた事から新しく津貫蒸溜所が建設されました。
2.基本情報
2-1.オーナー
本坊酒造
2-2.所在地
〒899-3611
鹿児島県南さつま市加世田津貫6594
2-3.アクセス
【車】
「鹿児島空港」から約90分(九州自動車道 谷山IC経由)
「鹿児島市内」「JR鹿児島中央駅」「JR指宿駅」から約70分
「知覧特攻平和会館」から約40分
「JR枕崎駅」から約20分
【JR】
鹿児島交通「津貫」下車
または「加世田バスターミナル」からタクシーで約15分。
【バス】
鹿児島交通 6番乗場(枕崎・加世田方面)
「鹿児島空港」バス停から約90分
「加世田」下車の場合 タクシー(約10km)
「上津貫」下車の場合 徒歩(約2km)
鹿児島空港からバスをご利用の場合
※約1時間半に1本
2-4.操業開始
平成28年(2016年)
2‐5.主力商品
バーボンバレルシェリーカスク主体で毎年一本リリースされるリミテッドシリーズです。
出荷本数48200本と限定品にしては本数が多く、現在でも定価近くで手に入れられる一本。
マルス津貫蒸溜所を知るなら、この一本に尽きます。
現在のところありません。
3.見学・ビジターセンター
無料で見学可。
予約なしでも見学できますが予約者優先の為、予約しておくと安心。
ちなみに自由見学となっていますが、スタッフの案内も可能との事。
しかし混み具合等で対応できない場合もある為、事前に問い合わせておくといいでしょう。
その際にはショッピング利用をお願いしているそうなので財布のひもを緩めておきましょう。
蒸留所に隣接するショップ・BARとして営業している本坊家旧邸「寶常(ほうじょう)」は二代目社長、本坊常吉が暮らした邸宅をリノベーションした雰囲気抜群の空間。
蒸溜所限定ウイスキーの試飲やここでしか手に入らないオリジナル商品が並ぶので、自分へのお土産としても立ち寄らない訳にはいきません。
その他、津貫蒸溜所のシンボルにもなっている、場内のひと際高い建物の中に1970年代まで稼働していたスーパーアロスパス式連続式蒸留機(高さ26m)が収められており近くで見学できるのは圧巻。
営業時間 9:00~16:00
休館日 12/30~1/3 ※臨時休業あり
入館 無料(試飲は全て有料)
売店 有り(寶常 Cafe Bar&Shop)
見学時間 蒸溜所(自由見学):約30分
寶常(有料試飲や売店):約15分
駐車場 無料(普通22台/バス2台)
3‐1.周辺グルメ情報
枕崎から蒸留所へ向かう途中にある「南さつま交流にいななまる」という物産館は時間効率的にも立ち寄りポイントとしてオススメ。
枕崎まで戻れば、名物の枕崎牛、カツオにもちろん黒豚と、食べるものを厳選しなければ、胃袋はいくらあっても足りないでしょう。
3‐2.観光宿泊
車、タクシー移動がオススメ。
なんと言っても全長40キロメートルに渡る日本3大砂丘の一つ、吹上浜はやや遠いですが蒸溜所から海浜公園までは車で約15分ほど。
時間があれば圧巻の景色が見られる事をお約束します。
4.製造スペック
仕込み水は地元民も市の水道とは別で料理などに使う蔵多山の湧き水を使用しています。
鹿児島特有のシラス台地由来によるシリカを多く含んだ甘く膨らみのある軟水。
一仕込み1.1トンでうち1トンはクリスプ社、その他はチョコレートモルトやローストモルト等を混ぜて麦汁の段階から酒質の差別化を図る、といった様々な試みが行われています。
その他、南さつまの麦芽も一部使用しています。
糖化工程にも造り分けが行われ、通常澄み切った透明な麦汁を採取するのが望ましいとされているオーソドックスなものと、あえて濁らせた麦汁も作りヘビーでモルティな性質を持つ一つの個性として、活用されています。
3番麦汁タンクも大きな特徴で、薄く抽出された麦汁はこのタンクに一時保管され、次の日の糖化槽の中に再利用され麦汁の濃度を高める。
発酵タンクはステンレス、南部地方の夏場の高い気温において発酵管理が難しく、木桶発酵よりも狙った味をだしやすくするための選択だそう。
ポットスチルのネックは初留再留どちらもストレートの下向きで、これも力強い酒質を生み出せる設計となっています。
生産量 | 11万リットル |
仕込み水 | 地元民も利用する蔵多山山系の湧水 |
仕込み量 |
ワンバッチ1.1トン |
モルトミル | ドイツカンゼル社製小型ミル |
糖化槽 | 三宅製作所製ステンレス・フルロイタータン(約6000リットル) |
麦汁量 | 6000リットル |
使用酵母 |
ディスティラリー酵母、エール酵母 |
発酵槽 | ステンレス製5基 |
ポットスチル | 初留 三宅製作所製ストレートオニオン型1基6000リットル 再留 三宅製作所製ストレート型1基3300リットル 加熱方式はスチームパーコレーター |
冷却装置 | 初留再留どちらもワームタブ(蛇管式冷却器) |
ボトリング設備 | 無し |
熟成庫 | 石蔵樽貯蔵庫(約300樽保管) ラック式 その他 駒ヶ岳蒸溜所、屋久島エージングセラー |
その他 |
ジン製造用にイタリアバリソン製ハイブリッドスチル400リットル1基 小型銅製ポットスチル500リットル1基 |
5.熟成環境について
温暖な気候が多い津貫蒸溜所の中でも、一年を通して温度差の少ない石蔵貯蔵庫のウイスキーはエンジェルスシェアは年間2~3%とゆっくりと進みます。
一方ラック式の方ではやはり九州本土最南端の気候も手伝って、樽成分の抽出も早く進みます。
そのため樽感を強く感じさせる熟成原酒が多い傾向にあります。
山に囲まれた盆地状の地形をしており、冬の寒さは鹿児島周辺の地形と比べてことのほか寒さが厳しくウイスキーの熟成に大きな影響を与えます。
6.蒸留所ストーリー
6-1.歴史
1949年 (昭和24年) |
本坊酒造、鹿児島でウイスキー製造免許を取得。 岩井喜一郎氏の指導により、初めてとなるウイスキーを製造。 |
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1960年 (昭和35年) |
山梨工場竣工。鹿児島のウイスキー製造免許を山梨へ移転。 ウイスキー、ワインの製造開始。 岩井喜一郎氏がウイスキー部門の計画をまかされ工場設計と製造指導に携わる。 「マルスウイスキー」販売開始。 |
1969年 (昭和44年) |
鹿児島工場ウイスキー製造免許を新規再取得。 |
1984年 (昭和59年) |
鹿児島工場でのモルト原酒蒸留を休止。 |
1985年 (昭和60年) |
マルス信州蒸溜所竣工。 山梨の製造免許を長野へ移転、蒸留設備を移設。 |
1992年 (平成4年) |
マルス信州蒸溜所、稼働休止(~2011年まで)。 |
1995年 (平成7) |
シングルモルト「モルテージ薩摩12年」「モルテージ駒ヶ岳10年」発売。 |
1998年 (平成10年) |
シングルモルト「モルテージ薩摩15年」発売。 |
2004年 (平成16年) |
シングルモルト「ヴィンテージ薩摩1984」発売。 |
2009年 (平成21年) |
シングルモルト「The Malt of Kagoshima1984」発売。 |
2016年 (平成28年) |
マルス津貫蒸溜所、マルス屋久島エージングセラー竣工。ブレンデッドウイスキー「HHAE」「津貫ニューポット ・ノンピーテッド2016」発売。 |
2017年 (平成29年) |
「津貫ニューポット・ヘビリーピーテッド2017」「Japanese GIN 和美人」発売。 |
2018年 (平成30年) |
「津貫ニューポット・ミディアムピーテッド2018」発売。 |
2020年 (令和2年) |
「シングルモルト津貫 THE FIRST」発売。 |
2021年 (令和3年) |
「シングルモルト津貫 PEATED」発売。 |
2022年 (令和4年) |
「シングルモルト津貫2022 エディション」「MARS The Y.A. #01」発売。 |
2023年 (令和5年) |
「シングルモルト津貫2023 エディション」「シングルカスク津貫2017 No.T465(SHIROYAMA HOTEL kagoshima 60周年記念セレクション)」発売。 |
2024年 (令和6年) |
「MARS The Y.A. #03」(マルス信州、マルス津貫原酒使用)発売。 |
6-2.歴代のブレンダー
チーフブレンダー 久内 一
1983年(昭和58年)山梨大学工学部発酵生産学科卒業、本坊酒造入社。
入社後、10年間山梨ワイナリーでワインの製造、次の10年は輸入ワインの仕入れ・販売、マルスワインの販売管理・企画の業務に携わる。
2004年(平成16年)にマルス山梨ワイナリー工場長就任。
2009年(平成21年)より甲信製造部長としてマルス信州蒸溜所の蒸留再開、ウイスキー事業に従事。
2013年(平成25年)取締役就任を経てウイスキー部門戦略推進チームリーダー兼チーフブレンダー。
2023年からは常務取締役に就任。