ウイスキー輸出金額に関する統計(2023年)

統計情報
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2023年の酒類輸出金額は約1,344億円(前年比96.6%)、過去最高であった前年を下回る結果となった。

ウイスキーの輸出金額は約501億円(前年比89.4%)となり、品目別で見た輸出額は2020年から変わらず1位のまま。

1.2023年度 酒類品目別輸出金額

出展:財務省ウェブサイト

品目 輸出金額(百万円)

前年比(%)

ウイスキー 50,092 ▲10.6%
清酒 41,082 ▲13.5%
リキュール 12,433 ▲8.6%
ビール 17,906 +66.6%
ジン・ウォッカ 3,758 ▲24.4%
焼酎 1,641 ▲24.4%
ワイン 567 ▲17.4%
その他 6,930 +99.7%
合計 134,408 ▲3.4%

品目別ではウイスキーが全体の輸出金額の37.3%

輸出金額はビールは好調に推移したが、保存の効く製品は諸外国の在庫調整などの兼ね合いもあるのか、全体的に昨年を下回る結果となった。

2.2023年度 酒類輸出先上位10か国(国別)金額

順位 昨年順位

輸出金額(百万円)

前年比(%)

1位 1位→ 中国 32,221 ▲18.3%
2位 2位→ アメリカ 23,719 ▲11.4%
3位 8位↑ 韓国 14,272 +156.0%
4位 3位↓ 台湾 13,516 +12.4%
5位 4位↓ 香港 9,444 ▲18.5%
6位 5位↓ シンガポール 7,693 ▲6.6%
7位 9位↑ オランダ 6,710 +59.7%
8位 7位↓ オーストラリア 6,583 +17.2%
9位 6位↓ フランス 5,062 ▲18.2%
10位 10位→ 英国 1,983 ▲16.9%

酒類の輸出のみでみると、上位は変わらず中国、米国ですが、韓国が昨年も+101.8%と伸長率1位でしたが、今年も+156.0%とかなりの輸出増加が見られます。国別でも第3位の輸出金額となり、中国の減少分を韓国の増加分が上回るほどの金額となっています。

韓国マーケットの伸長はビールの輸出(前年+334.8%)が著しく、清酒、焼酎も前年を上回りました。

3.2023年度 ウイスキー輸出先金額内訳

順位 輸出金額(百万円) 前年比(%)
1位 中国 13,200 ▲32.7%
2位 アメリカ 10,550 ▲4.0%
3位 オランダ 5,890 +89.5%
4位 シンガポール 4,100 +10.5%
5位 フランス 3,990 ▲20.8%
その他 12,350
参考 EU 10,780 +19.7%

出展:2023年農林水産物・食品の輸出実績 (品目別)

2023年は、輸出額501.2億円と減少(前年比▲10.6%)。中国向けが景気後退により大きく減少したとの見方。

4.考察とまとめ

昨年に引き続き輸出金額はウイスキーがトップになりました。マーケットとしては変わらず人気な中国、アメリカですが、過去最高であった昨年から見ると落ち込む数値となりました。

とはいえ、この2国はウイスキーの輸出金額に関しては1桁違うのは変わらず、構成比でも中国は26.4%,アメリカで21.1%となり、EU全体での21.5%に近しい数値となりました。

ジャパニーズウイスキーの人気は変わらず続いているとも言えますが、日本洋酒酒造組合に所属している蒸留所はすべて、2024年3月31日からウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準のもとにウイスキーを製造、販売をしております。

ですが、一部の海外向けウイスキーには基準を全く満たしておらず、ジャパニーズウイスキーとは別の代物を漢字表記のラベルなどを使い、海外向けに輸出販売しているものも少なくありません。

もちろん、自主基準においては海外産のウイスキーとバッティングすることが悪ということでは全くありません。この作り方で美味しいものはたくさんあります。
ですが、『ジャパニーズウイスキー』というもののガイドラインが明確にあることは必要であり、
ウイスキーの表示や基準については、法整備なども望ましいと考える蒸溜所の責任者の方々も多いことが現状です。

今後世界でさらに『ジャパニーズウイスキー』がトレンドを獲得していくには、まだまだ国内でできることもあるということです。

5.国内のウイスキー動向

2024年現在、国内蒸溜所は100近くの蒸溜所が稼働し、建設計画のあるものが20近く、約120のの蒸溜所が国内に今後できる予定です。ウイスキー本場であるスコットランドでも現在蒸溜所の数は約130と、その数に迫る勢いです。

国内でも、すでに人気のウイスキーはWWAISCなどでGOLD以上を受賞しているものも多くあります。今後はさらに様々な蒸溜所が賞レースで受賞されることも多いかと思われます。

蒸溜所の絶対数が増えたことで、様々な購入できるウイスキーのタイプなど、選択肢が増えてきたことで、以前は全く購入できなかった蒸溜所のウイスキーが、定価で酒屋さんなどで見かけるようになりました。

購入できる選択肢が増えた、ということは喜ばしいことですが、その為か、「ジャパニーズウイスキーも淘汰の時期に入った」と言われる事がしばしばあります。
まさに淘汰され消えてゆく蒸溜所と、ますます実力を備えて成長していく蒸溜所と、二極化されるというのが予想されます。

世界的にも高級ウイスキーに注目が集まり、価値が上がっています。
その背景には、「本物志向」や「クラフトマンシップ」、「新たな取り組みと伝統を守る取り組み」等、各蒸留所が込めた思いが「見える」、そんな蒸溜所を応援していきたいです。

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最後に:ジャパニーズウイスキーのおすすめ書籍

世界的なトレンドを巻き起こしている「ジャパニーズウイスキー」の事をもっと知りたい、もっと勉強したいという方は、是非こちらの書籍をおすすめいたします。

(1).Whisky Galore(ウイスキーガロア)Vol.47 2024年12月号

【巻頭特集】
「新アイリッシュ・ルネッサンス[第2弾]」
【第2特集】
「日本のクラフト蒸留所最前線」
今号では北海道の厚岸と苫小牧、そしてクラフト蒸留所に麦芽を供給する中標津のクラフトモルティング社についても紹介します。さらに三島のウォータードラゴンと、ZEMONⅡが稼働する飛騨高山蒸溜所も再訪。
【連続ロングインタビュー】
第3回 ガイアフロー静岡蒸溜所 中村大航氏
【特別リポート】
遊佐蒸溜所の挑戦
第二期リニューアルが完了したサントリー白州蒸溜所

(2).ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー

世界的にも有名なウイスキー評論家で、ウイスキー文化研究所代表 土屋守先生の著書「ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー」です。
ウイスキーの基礎知識、日本へのウイスキーの伝来、ジャパニーズウイスキーの誕生、広告戦略とジャパニーズウイスキーの盛隆、そして、現在のクラフト蒸留所の勃興まで。日本のウイスキーの事が非常にわかりやすくまとめられた一冊。

(3).ウイスキーと私(竹鶴政孝)

日本でのウイスキー醸造に人生を捧げた、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝。ただひたすらにウイスキーを愛した男が自らを語った自伝の改訂復刻版。若き日、単身スコットランドに留学し、幾多の苦難を乗り越えてジャパニーズ・ウイスキーを完成させるまでの日々や、伴侶となるリタのことなどが鮮やかに描かれる。

(4).新世代蒸留所からの挑戦状

2019年発売。世界に空前のウイスキーブームが到来しているいま、クラフト蒸留所の経営者たちは何を考え、どんな想いでウイスキー造りに挑んだのか。日本でクラフト蒸留所が誕生するきっかけを作った、イチローズ・モルトで有名なベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏をはじめとする、13人のクラフト蒸留所の経営者たちが世界に挑む姿を綴った1冊。

(5).ウイスキーライジング

2016年にアメリカで出版された『Whisky Risng』の日本語版であり、内容も大幅にアップデート。ジャパニーズ・ウイスキーの歴史が詳細に記述されているだけでなく、近年、創設がつづくクラフト蒸溜所を含む、日本の全蒸溜所に関するデータも掲載。そのほかにも、今まで発売された伝説的なボトルの解説や、ジャパニーズ・ウイスキーが飲めるバーなども掲載されています。

(6).ウイスキーと風の味

1969年にニッカウヰスキーに入社した、三代目マスターブレンダーの佐藤茂夫氏の著書。
『ピュアモルト』『ブラックニッカクリア』『フロム・ザ・バレル』の生みの親でもあり、なかでも『シングルモルト余市1987』はウイスキーの国際的コンペティションWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)にて「ワールド・ベスト・シングルモルト」を受賞。
竹鶴政孝竹鶴威の意志を引き継いだブレンダー界のレジェンドが語る今昔。

この記事を書いた人
Ryuhei Oishi

北海道出身 bar新海虎ノ門店のバーテンダー。
都内のレストランで従事し、日本ソムリエ協会認定ソムリエ資格を取得。
自身の知識の少なかった日本のウイスキーに興味を持ち、bar新海に就職。蒸留所へ行き、造り手の方々に話を聞き、その情熱・情報をバーテンダーとして伝搬するべく、JWDに参加。

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