桜尾蒸溜所を運営するサクラオB&Dが「魅惑の里」跡地に第二蒸溜所建設か

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「サクラオ・ブルワリー・アンド・ディスティラリー」が保養施設「吉和魅惑の里」を取得。ウイスキーの蒸留所を備えた観光施設として整備し、2025年に開業する計画。

中国新聞デジタルより、9/8に「魅惑の里、ウイスキー蒸留所を備えた観光施設に サクラオBDが取得し整備へ」というニュースが配信されました。

今年3月から休業中の吉和にある保養施設「吉和魅惑の里」を、同市で桜尾蒸溜所を運営する「サクラオ・ブルワリー・アンド・ディスティラリー(以降、サクラオB&D)」に売却することが明らかになりました。サクラオB&Dはウイスキーの蒸留所を備えた観光施設として整備し、2025年に開業する計画を示しているようで、事実であれば第二蒸溜所が建設される事となります。

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1.サクラオB&Dとは

2021年3月9日付で「中国醸造」から「サクラオブルワリーアンドディスティラリー」に社名変更したサクラオB&Dは、1918年創業、広島県廿日市市桜尾一丁目12番1号に本社及び製造拠点を構える老舗の酒造メーカーです。
まずは、サクラオB&Dのウイスキー製造の軌跡についておさらいしていきましょう。

1-1. 戸河内ウイスキーの発売(2008年)

実はウイスキー造りの歴史は深く、1938年~1989年までモルトウイスキーの製造・販売を行っていました。当時蒸留された原酒は、戸河内にあるJR西日本の鉄道用試掘トンネルを活用した貯蔵庫に保管されていました。
2008年、戸河内の貯蔵庫に貯蔵されていた原酒と輸入原酒をブレンドして作る「戸河内ウイスキー」を販売開始しました。

1-2. 桜尾蒸溜所の操業(2018年)

そして2018年、洋酒づくりの新たな可能性へ挑戦するため、設備を新たに導入し、広島発のクラフト蒸留所「桜尾蒸留所(SAKURAO DISTILLERY)」を設立しました。

1-3. シングルモルトウイスキーの発売(2021年7月)

3年の熟成を経て、2021年7月1日に、桜尾蒸溜所のウイスキーのファーストリリース、「シングルモルト桜尾(カスクストレングス)」「シングルモルト戸河内(カスクストレングス)」を発売しました。

1-4. 定番シングルモルト「桜尾」「戸河内」の発売(2022年6月)

シングルモルトウイスキーのファーストリリースから約1年後の2022年6月、定期的に出荷を行っていく”定番”シングルモルトという位置付けで、「シングルモルト桜尾(43%)」「シングルモルト戸河内(43%)」を発売。

1-5. ブレンデッドウイスキー戸河内リニューアル

そして、今月2023年9月1日に、2008年より発売している「ブレンデッドウイスキー戸河内」をリニューアル。使用するモルト原酒及びグレーン原酒共に自社製造の原酒に変更し、洋酒酒造組合が定めるジャパニーズウイスキーの自主基準に準拠した『100%Japanese』の「ブレンデッドジャパニーズウイスキー戸河内プレミアム」として生まれ変わりました。

2.吉和魅惑の里とは

「吉和魅惑の里」は、サクラオB&Dと同じく廿日市市に立地し、吉和の自然を満喫することができる施設として、平成6年に開園した複合施設。

ケビン、温泉(水神の湯)、レストラン「みわく」、RVパーク、芝広場、オートキャンプ場やバーベキューハウス、コンサートホール、特産館(地元野菜、おみやげ物販売)、グラウンドゴルフ場などを有し、吉和の自然を存分に満喫することができる施設だったようです。

(画像出展:DiveHiroshima-広島公式観光サイト

キャンプやバーベキューといったアウトドアだけでなく、温泉やコンサートホール、まであり、廿日市市民だけでなく、市外からの利用者も多かったのではないかと思われます。

そんな「吉和魅惑の里」が今年2023年3月28日をもって閉園しました。

公式インスタグラムでは、閉園直前まで更新されており、賑わっていた様子もうかがえます。閉園した理由については公表されていません。

3.今回示された計画

閉園した「吉和魅惑の里」はその後、民間譲渡の入札にかけられ、プロポーザルによる審査実施を経て入社2社のうち、サクラオB&Dに選定されました。

廿日市市は、施設内の温泉施設やレストラン、イベントハウスなど全ての建物を約3800万円でサクラオB&Dに売却。約5650平方メートルの敷地は市が引き続き所有し、年約370万円で同社に貸し出す予定との事です。

敷地面積約5650平方メートルは、既存のウイスキー蒸溜所だと山形の遊佐蒸溜所(敷地面積約4,550㎡)に近く、最近のクラフト蒸溜所の中では、割とコンパクトと言えます。

とは言え、ベンチャーウイスキーが秩父第二蒸溜所に続き、北海道苫小牧にグレーン蒸溜所建設に着手していたり、厚岸蒸溜所が富良野に第二蒸溜所建設の計画を進めていたりと、クラフトの中でも先駆者による第二、第三蒸溜所の建設は着々と進められており、サクラオB&Dもそれらに続く形になります。

「製造過程を見学できる蒸溜所を新設する。」との事で、蒸溜所見学やウイスキーの試飲を楽しむ事が出来る観光客の誘致にも力を入れた観光色の強いウイスキー蒸溜所としての生まれ変わるのではないかと思われます。

施設内の温泉施設やレストラン、イベントハウスなど全ての建物を約3800万円で売る。約5650平方メートルの敷地は市が引き続き所有し、年約370万円で同社に貸し出す予定でいる。

 市によると、同社はウイスキーの製造過程を見学できる蒸留所を新設する。温泉施設はウイスキーの試飲スペースに、レストランは軽食を中心としたカフェに改装する予定。オートキャンプ場とグラウンドゴルフ場は残し、別の事業者に運営を委託する方針という。

(引用:魅惑の里、ウイスキー蒸留所を備えた観光施設に サクラオBDが取得し整備へ

4.最後に

桜尾蒸溜所は2018年操業開始ということで、クラフト蒸溜所の中では早い時期からウイスキー造りを開始しています。既にウイスキー造りのノウハウや知見もあり、更に知名度やブランドとしても既に国内外に広がっている事と思います。

その為、第二蒸溜所の建設や操業に向けた準備はスムーズに進んでいくのではないかと予測されますが、世界的な物価高騰により、ウイスキー造りに必要な材料なども高騰しており、更に調達自体が難しくなってきていると言われています。

第二蒸溜所ではどんなコンセプトのウイスキー造りをされるのかという事も気になりますが、まずは予定通り2025年に開業されることを楽しみに待ちたいと思います。

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最後に:ジャパニーズウイスキーのおすすめ書籍

世界的なトレンドを巻き起こしている「ジャパニーズウイスキー」の事をもっと知りたい、もっと勉強したいという方は、是非こちらの書籍をおすすめいたします。

(1).Whisky Galore(ウイスキーガロア)Vol.42 2024年2月号

【巻頭特集】ウイスキーの聖地 アイラ島の“現在”を読み解く
アイラ島のウイスキーは、昔から「アイラモルト」という独自のカテゴリーを与えられてきた。現在9ヵ所の蒸留所があり、さらに2つの新蒸留所計画が発表されている、この小さな島を改めて紹介。
また、現在入手可能なウイスキー8種を土屋編集長が飲み比べる。
●掲載蒸留所
ボウモア、アードベッグ、ラガヴーリン、ラフロイグ、カリラ、ブナハーブン、ブルックラディ、キルホーマン、アードナッホー

【第2特集】北アイルランドのウイスキー
世界の五大ウイスキーのなかで、いまもっとも伸びているのがアイリッシュ。ブームを牽引する北アイルランドの最新情報をリポート。
●紹介ウイスキー
ブッシュミルズ、エクリンヴィル、グレンズ・オブ・アントリム、ヒンチ、キルオーウェン、マコーネルズ、ショートクロス、タイタニック・ディスティラーズ、トゥー・スタックス

【蒸留所リポート】
2023年に100周年を迎えたジャパニーズウイスキー。その第一歩が踏み出され、昨年リニューアルしたばかりのサントリー山崎蒸溜所を取材。そのほか月光川蒸留所や、個性的なツアーを行っている八郷蒸溜所&安積蒸溜所も紹介。

【インタビュー】
ワイルドターキーのマスターディスティラーであるエディー・ラッセル氏と、その息子ブルース・ラッセル氏を編集長がインタビュー。またフィンランドで自国ライ麦にこだわったウイスキーを造るキュロ蒸留所のミイカ氏にも話を聞いた。

【特集】
ウイスキーフェスティバル2023 in TOKYO、ウイスキーコニサークラブ新潟蒸留所ツアー、下田ウイスキーフェスリポート。

(2).ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー

世界的にも有名なウイスキー評論家で、ウイスキー文化研究所代表 土屋守先生の著書「ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー」です。
ウイスキーの基礎知識、日本へのウイスキーの伝来、ジャパニーズウイスキーの誕生、広告戦略とジャパニーズウイスキーの盛隆、そして、現在のクラフト蒸留所の勃興まで。日本のウイスキーの事が非常にわかりやすくまとめられた一冊。

(3).ウイスキーと私(竹鶴政孝)

日本でのウイスキー醸造に人生を捧げた、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝。ただひたすらにウイスキーを愛した男が自らを語った自伝の改訂復刻版。若き日、単身スコットランドに留学し、幾多の苦難を乗り越えてジャパニーズ・ウイスキーを完成させるまでの日々や、伴侶となるリタのことなどが鮮やかに描かれる。

(4).新世代蒸留所からの挑戦状

2019年発売。世界に空前のウイスキーブームが到来しているいま、クラフト蒸留所の経営者たちは何を考え、どんな想いでウイスキー造りに挑んだのか。日本でクラフト蒸留所が誕生するきっかけを作った、イチローズ・モルトで有名なベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏をはじめとする、13人のクラフト蒸留所の経営者たちが世界に挑む姿を綴った1冊。

(5).ウイスキーライジング

2016年にアメリカで出版された『Whisky Risng』の日本語版であり、内容も大幅にアップデート。ジャパニーズ・ウイスキーの歴史が詳細に記述されているだけでなく、近年、創設がつづくクラフト蒸溜所を含む、日本の全蒸溜所に関するデータも掲載。そのほかにも、今まで発売された伝説的なボトルの解説や、ジャパニーズ・ウイスキーが飲めるバーなども掲載されています。

(6).ウイスキーと風の味

1969年にニッカウヰスキーに入社した、三代目マスターブレンダーの佐藤茂夫氏の著書。
『ピュアモルト』『ブラックニッカクリア』『フロム・ザ・バレル』の生みの親でもあり、なかでも『シングルモルト余市1987』はウイスキーの国際的コンペティションWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)にて「ワールド・ベスト・シングルモルト」を受賞。
竹鶴政孝竹鶴威の意志を引き継いだブレンダー界のレジェンドが語る今昔。

この記事を書いた人
新海 博之

1981年7月17日 北海道北広島市出身
大学卒業後、NTTデータカスタマサービス㈱へ新卒入社。
2010年「麻布十番BAR新海」を開業 → 2016年、名物「薬膳カレー」を開発 → 2018年「虎ノ門BAR新海」、2019年には「芝大門BAR新海」を開業 → 2020年 ウェブメディア「Japanese Whisky Dictionary」をスタート。
バーテンダーの私達だから出来る事として、ジャパニーズウイスキーの魅力を日々発信する。

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