【レビュー】ブラックアダーロウカスク静岡2018 3年 Cask No.781

ウィスキーレビュー
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ガイアフロー静岡蒸溜所

2022年1月17日に10周年を迎えたガイアフロー株式会社の初のシングルカスクウイスキー。ガイアフローがウイスキー業界に参入し最初に行ったのが、ブラックアダーの正規輸入代理店でした。

「ブラックアダーロウカスク静岡2018 3年 Cask No.781」は、スコットランド産ノンピート大麦を100%使用。蒸留機「K」で蒸留し、バーボンバレルで3年間熟成。フィルタリングを最小限に抑え、樽から澱も含めて直接ボトリングする「ロウカスク」を採用。

国内販売数はなんと60本のみです。

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1.メーカー

ガイアフローディスティリング株式会社

設立2014年10月8日
本社所在地〒421-2223 静岡県静岡市葵区落合555番地
所有蒸留所ガイアフロー静岡蒸溜所

2.蒸留所

ガイアフロー静岡蒸溜所

所在地〒421-2223 静岡県静岡市葵区落合555番地
操業開始2016年

2014年10月8日ガイアフローディスティリング株式会社設立。
2016年8月9日ガイアフロー静岡蒸溜所竣工。
同年、10月28日ウイスキー製造開始。
静岡県静岡市のオクシズ(奥静岡エリア)の玉川地区にあり、一級河川安倍川の支流である、安倍中河内川のほとりに建っている。
標高は200m前後、周囲は400m級の美しい山々に囲まれ、市街地より気温は常に2〜3度低く、まさに好立地と言える。
建物は、日本の美と西洋文化の融合をテーマにデザインされており、静岡在住のアメリカ人建築家デレック・バストン氏とのコラボレーションにより内外装に静岡の木材を多用した、見た目にも美しいウイスキー蒸留所です。

静岡蒸溜所には「K」と「W」という呼び名の2基の初留用蒸留機が稼働しています。Kは、1950年代に日本で製造された歴史ある軽井沢蒸留所の蒸留機。2011年11月に惜しまれつつ閉鎖した軽井沢蒸留所から静岡蒸溜所に移設され、修理・改修し伝説の蒸留機は復活しました。そのしなやかに伸びた優美なシルエットと、蒸気の間接加熱により、軽やかで華やかな味わいの原酒を生み出しています。

下の写真の左手前がスコットランド・フォーサイス社製のおそらく世界で唯一の「薪直火蒸留機」で、この蒸留機がW。
直火蒸留の特徴はまさに温度です。一般的な間接加熱蒸留の場合の温度は150℃前後ですが、静岡蒸溜所の薪直火蒸留は800℃とのことで、香ばしく力強いタイプのモルト原酒を作り出すことができます。

発酵槽には地元静岡産の杉を使った木桶を採用。静岡市は林業の街であり、その特色を生かし、静岡らしいウイスキーを造れたらとの思いを込めて、あえて地元静岡産の杉を選んでいるのだそうです。
ウイスキーの原料となるモルト(大麦麦芽)を粉砕する為のモルトミルも、蒸留機”K”と同様に軽井沢蒸留所で使用されていた歴史ある機械を移設して使用しています。

因みに、メルシャン軽井沢蒸留所で造られ、商品化されずに貯蔵庫に眠っていた幻のウイスキー原酒は、あるイギリスの企業が買取った後、2013年にボトリングされ「軽井沢1960」として200万円で販売されました。その後、2017年のスコットランドのオークションでは約1400万円で落札日本のウイスキーが世界中のウイスキーコレクターにとってターゲットリストのトップにある事が明らかになりました。
メルシャンが当時販売していたウイスキーには、「軽井沢 貯蔵8年 100%モルト ウイスキー」や「メルシャン 軽井沢15年 シェリー樽 モルトマスターズ」などがありました。

静岡は、スコットランドよりも温かい気候であることと、貯蔵庫の天井に採光用の窓を設置して敢えて寒暖差を作る設計にしています。その為、貯蔵庫で熟成中の原酒は、エンジェルズシェアで年間5%以上蒸発する見込みだそうです。

蒸留所には、試飲コーナーが設けられていて静岡蒸溜所の原酒や、第一弾の「シングルモルトプロローグK」を試飲する事ができます(有料)。また、静岡蒸溜所では、ウイスキーの輸入販売を行っており、インドのウイスキー「アムルット」、スコットランドのボトラーズ「ブラックアダー」「アスタモリス」なども試飲する事が出来ます。

ガイアフロー静岡蒸溜所の情報はこちら↓もご覧ください。

ガイアフロー静岡蒸溜所 | ジャパニーズウイスキーディクショナ...
Japanese Whisky Dictionary

3.商品名と写真

ブラックアダーロウカスク静岡2018 3年 Cask No.781
Blackadder RAW CASK Shizuoka2018 3years Cask No.781

4.特徴

静岡蒸溜所ではK(軽井沢蒸留所から移設された蒸留機)とW(薪直火蒸留機)という2基の初留蒸留機を使い、2種類の個性が異なった原酒を生み出しています。
それぞれのポットスチルの特徴は、蒸気加熱のKがフルーティーな香りとライトな味わいを持ち、薪直火によるWがヘビーな味わいと長いフィニッシュ。

ブラックアダーロウカスク静岡2018 3年 Cask No.781は、スコットランド産ノンピート大麦を100%使用。蒸留機「K」で蒸留し、バーボンバレルで3年間熟成。樽から澱も含めて直接ボトリングする「ロウカスク」を採用。

本当に3年熟成なのかと疑うほどなめらかで濃厚な甘みが特徴です。

4-1.テイスティングノート

香り若干の酸味。バニラ、キャラメル等の甘さ。開かせることで、黄桃や花のような香りも出てくる。
味わい

絹のような滑らかさ。花の蜜やバニラの濃厚な甘さ。時間を置くことでワインのような味わいも。

余韻

飲んだ後の食道が焼ける感じがかなり少ない。どこか爽やかさのある甘みが程よく続く。

4-2.商品スペック

アルコール度数64.9%
酒別シングルモルトジャパニーズウイスキー
樽種バーボン樽
内容量700ml
販売本数199本(国内販売数は60本)
希望小売価格15,555円(税込)
発売日2022年3月18日

5.受賞歴

現時点では、受賞歴はありません。

6.価格

6-1.メーカー希望小売価格

商品名ブラックアダーロウカスク静岡2018 3年 Cask No.781
容量700ml
希望小売価格15,555円(税込)

6-2.メルカリでの転売価格

メルカリでの転売価格は、90,000円での出品が1件のみ確認できました。(※2022/5/20時点)

6-3.ヤフーオークション落札価格

ヤフーオークションでの落札価格は、最安99,999円、最高155,020円、平均127,509円です(2022年5月20日時点より過去180日間の統計情報)

6-4.楽天、ヤフーショッピング、Amazon

通販サイトでの出品は確認できておりません。 (※2022/5/20時点)

6-5.BAR新海での提供価格

当サイトが運営する「BAR新海」では、1杯、45ml:5,940円 30ml:3,960円、15ml:1,980円などの少量でも提供しております。(大門店のみのお取り扱いとなります。)

「BAR新海」のご案内
Japanese Whisky Dictionaryが運営する「BAR新海」は、東京都港区に3店舗。当サイトで紹介しているジャパニーズウィスキーをはじめ、国産のジンやビールなども取扱い。オリジナルカクテル、フレッシュフルーツカクテルなども人気。食事も豊富で1件目からも利用可能。

7.まとめ

テイスティングしてみて、「これは素晴らしい」という第一印象を受けました。カスクストレングスとは思えないほどに香りにアルコールの角が無く、花の蜜やバニラ、キャラメルを思わせる濃厚な甘みがあります。絹のような非常に滑らかな口当たりが素晴らしく、飲み込んだ後にも喉や食道が焼けるような感覚がほとんどありません。

グラスに注ぎしばらく置いておくと更に開き、黄桃や花のような香りと、ワインの風味が現れます。

バーボンバレルで3年の熟成期間でここまでの甘みが出せるものなのか、と素直に驚きと感動を覚えました。

ロウカスク特有の瓶底に沈む澱が舞う様子もなかなかに風情があります。

日本国内販売数60本の非常に希少なウイスキー、そして非常に完成度の高い一本となっております。これは是非お試しいただきたい一本となっております。

「静岡蒸溜所」に関するその他の記事も是非ご覧ください。

【レビュー】シングルモルトウイスキー静岡 コンタクトS
静岡蒸留所ではKとWという2基の初留蒸留機を使い、2種類の個性が異なった原酒を生み出しています。その両方の原酒を初めてブレンドしたシングルモルトが「コンタクトS」です。蒸気加熱のKがフルーティーな香りとライトな味わい、薪直火によるWがヘビーな味わいと長い余韻を感じさせます。
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最後に:ジャパニーズウイスキーのおすすめ書籍

世界的なトレンドを巻き起こしている「ジャパニーズウイスキー」の事をもっと知りたい、もっと勉強したいという方は、是非こちらの書籍をおすすめいたします。

(1).Whisky Galore(ウイスキーガロア)Vol.42 2024年2月号

【巻頭特集】ウイスキーの聖地 アイラ島の“現在”を読み解く
アイラ島のウイスキーは、昔から「アイラモルト」という独自のカテゴリーを与えられてきた。現在9ヵ所の蒸留所があり、さらに2つの新蒸留所計画が発表されている、この小さな島を改めて紹介。
また、現在入手可能なウイスキー8種を土屋編集長が飲み比べる。
●掲載蒸留所
ボウモア、アードベッグ、ラガヴーリン、ラフロイグ、カリラ、ブナハーブン、ブルックラディ、キルホーマン、アードナッホー

【第2特集】北アイルランドのウイスキー
世界の五大ウイスキーのなかで、いまもっとも伸びているのがアイリッシュ。ブームを牽引する北アイルランドの最新情報をリポート。
●紹介ウイスキー
ブッシュミルズ、エクリンヴィル、グレンズ・オブ・アントリム、ヒンチ、キルオーウェン、マコーネルズ、ショートクロス、タイタニック・ディスティラーズ、トゥー・スタックス

【蒸留所リポート】
2023年に100周年を迎えたジャパニーズウイスキー。その第一歩が踏み出され、昨年リニューアルしたばかりのサントリー山崎蒸溜所を取材。そのほか月光川蒸留所や、個性的なツアーを行っている八郷蒸溜所&安積蒸溜所も紹介。

【インタビュー】
ワイルドターキーのマスターディスティラーであるエディー・ラッセル氏と、その息子ブルース・ラッセル氏を編集長がインタビュー。またフィンランドで自国ライ麦にこだわったウイスキーを造るキュロ蒸留所のミイカ氏にも話を聞いた。

【特集】
ウイスキーフェスティバル2023 in TOKYO、ウイスキーコニサークラブ新潟蒸留所ツアー、下田ウイスキーフェスリポート。

(2).ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー

世界的にも有名なウイスキー評論家で、ウイスキー文化研究所代表 土屋守先生の著書「ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー」です。
ウイスキーの基礎知識、日本へのウイスキーの伝来、ジャパニーズウイスキーの誕生、広告戦略とジャパニーズウイスキーの盛隆、そして、現在のクラフト蒸留所の勃興まで。日本のウイスキーの事が非常にわかりやすくまとめられた一冊。

(3).ウイスキーと私(竹鶴政孝)

日本でのウイスキー醸造に人生を捧げた、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝。ただひたすらにウイスキーを愛した男が自らを語った自伝の改訂復刻版。若き日、単身スコットランドに留学し、幾多の苦難を乗り越えてジャパニーズ・ウイスキーを完成させるまでの日々や、伴侶となるリタのことなどが鮮やかに描かれる。

(4).新世代蒸留所からの挑戦状

2019年発売。世界に空前のウイスキーブームが到来しているいま、クラフト蒸留所の経営者たちは何を考え、どんな想いでウイスキー造りに挑んだのか。日本でクラフト蒸留所が誕生するきっかけを作った、イチローズ・モルトで有名なベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏をはじめとする、13人のクラフト蒸留所の経営者たちが世界に挑む姿を綴った1冊。

(5).ウイスキーライジング

2016年にアメリカで出版された『Whisky Risng』の日本語版であり、内容も大幅にアップデート。ジャパニーズ・ウイスキーの歴史が詳細に記述されているだけでなく、近年、創設がつづくクラフト蒸溜所を含む、日本の全蒸溜所に関するデータも掲載。そのほかにも、今まで発売された伝説的なボトルの解説や、ジャパニーズ・ウイスキーが飲めるバーなども掲載されています。

(6).ウイスキーと風の味

1969年にニッカウヰスキーに入社した、三代目マスターブレンダーの佐藤茂夫氏の著書。
『ピュアモルト』『ブラックニッカクリア』『フロム・ザ・バレル』の生みの親でもあり、なかでも『シングルモルト余市1987』はウイスキーの国際的コンペティションWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)にて「ワールド・ベスト・シングルモルト」を受賞。
竹鶴政孝竹鶴威の意志を引き継いだブレンダー界のレジェンドが語る今昔。

この記事を書いた人
新海 博之

1981年7月17日 北海道北広島市出身
大学卒業後、NTTデータカスタマサービス㈱へ新卒入社。
2010年「麻布十番BAR新海」を開業 → 2016年、名物「薬膳カレー」を開発 → 2018年「虎ノ門BAR新海」、2019年には「芝大門BAR新海」を開業 → 2020年 ウェブメディア「Japanese Whisky Dictionary」をスタート。
バーテンダーの私達だから出来る事として、ジャパニーズウイスキーの魅力を日々発信する。

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