【レビュー】ニッカ ザ・グレーン

ウィスキーレビュー
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ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所

「ニッカ ザ・グレーン」は、2021年から展開する“NIKKA DISCOVERYシリーズ”の第3弾商品としてリリース。“NIKKA DISCOVERYシリーズ”とは、2024年に創業90周年を迎えるニッカウヰスキーが保有する多様な原酒や、原材料や発酵などの製造工程によるウイスキーのつくり分けの歴史が生み出す奥深さに焦点を当てたシリーズです。

1963年にニッカウヰスキーがグレーンウイスキーを製造することを目的に「カフェ式連続式蒸溜機」を西宮工場に導入(のち1999年に宮城峡蒸溜所へ移設)後、2023年で60周年を迎えることから、ニッカウヰスキーが保有する“グレーンウイスキーの多様性”に着目し開発されたウイスキーです。

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1.メーカー

ニッカウヰスキー株式会社

設立1934年(昭和9年)
本社所在地〒107-8616 東京都港区南青山5丁目4番31号
所有蒸留所余市蒸溜所、宮城峡蒸溜所、ベンネヴィス蒸留所

2.蒸留所

宮城峡蒸溜所

所在地〒989-3433 宮城県仙台市青葉区ニッカ1番地
操業開始1969年

北海道・余市で第一の蒸留所をスタートさせてから約30年。 「異なる蒸留所で生まれた複数の原酒をブレンドすることで、ウイスキーはより味わい深く豊かになる」という信念を抱く竹鶴政孝にとって、第二の蒸留所はどうしても必要でした。
竹鶴が選んだ地は仙台・宮城峡。広瀬川と新川というふたつの清流に恵まれた緑豊かな峡谷。竹鶴は初めてこの地を訪れた時、新川の清流で持っていたブラックニッカを割って飲み、味わいを確認。その場で蒸留所建設を決定したと言われています。 宮城峡蒸溜所が誇るのが「カフェ式連続式蒸留機」
導入当時、すでに旧式とされていた蒸留機です。旧式だからこそ雑味となる成分が残りやすいのですが、技術によってそれを原料本来の香りや甘みに変えることができるため、竹鶴はあえてこの旧式蒸留機を選びました。宮城峡蒸溜所では、今なお竹鶴の情熱を受け継ぐ人々がウイスキーのおいしさを求め、さまざまな試みを続けています。

画像出展:宮城峡蒸溜所|NIKKA WHISKY

宮城峡蒸溜所の詳細情報は、こちらの記事もご覧ください。

余市蒸溜所 | ジャパニーズウイスキーディクショナリー
Japanese Whisky Dictionary

ニッカのブレンデッドの特徴は、3つの蒸溜器(機)が生み出す原酒から成り立っている。
ひとつは余市蒸溜所のストレート型ポットスチル。現在では世界唯一の石炭直火蒸溜を行うストレート型のスチルからはヘビーで力強いモルトがつくられる。ピートやスモークも十分にのったフルボディさが魅力の原酒です。もうひとつは宮城峡蒸溜所のバルジ型ポットスチル。スチーム間接蒸溜によって生み出される華やかで香り高いモルトは、余市と全く異なるタイプの原酒です。余市をハイランド、宮城峡をローランドとなぞらえて、それぞれ特色を生かしたウイスキーがつくられています。

そして創業者 竹鶴政孝氏が「グレーンウイスキーを使うようにならなければ、日本のウイスキーは一人前とは言えない」と切望し、1963年に導入された宮城峡のカフェ式連続式蒸溜機からつくられるグレーンウイスキー。余市と宮城峡の個性的なモルトとのバランスを取るために欠かせない存在です。それを竹鶴氏から脈々と続くブレンディング技術がまとめ上げる。

ニッカウヰスキー『宮城峡蒸溜所』では、伝統的な「カフェ式連続式蒸留機」を保有しています。現在主流となっている連続式蒸留機は、アルコールの精製度を高められる反面、香味成分までも除去してしまいます。一方、ニッカが保有する「カフェ式連続式蒸留機」は、旧式で蒸留効率はおとりますが、蒸留液に原料由来の香りや成分が残るという特徴があります。この蒸留機は、1830年頃に発明され、開発者であるイーニアス・カフェの名にちなんで“カフェスチル”と呼ばれています。ニッカウヰスキー創業者、竹鶴政孝にはカフェ式連続式蒸留機を自分の工場に導入し、本格的なブレンデッドウイスキーをつくりたいという夢がありました。その念願が叶い、1963年に導入し、翌年本格操業を開始したそのカフェスチルは当時としても“極めて旧式”なタイプでした。それは「本物のおいしさ」を求めた政孝のこだわりでした。

3.商品名と写真

ニッカ ザ・グレーン
Nikka The Grain

4.特徴

ニッカ ザ・グレーンを構成するのは7つの個性(原酒)

仙台・宮城峡蒸溜所のカフェ式連続式蒸溜機でつくられたカフェグレーンが、基軸となります。そこに、ニッカウヰスキーが持つ九州・門司工場とさつま司蒸溜蔵で密かにつくられ育まれてきた2つの大麦グレーン原酒とコーン・ライ麦原酒が、新しい個性として加わりました。
さらに、宮城峡蒸溜所のカフェモルト、竹鶴政孝が自らカフェ式連続式蒸溜機の導入に携わった西宮工場で生まれ、長く熟成を重ねた稀少な2種の原酒をブレンド。
まろやかで深みある甘さの中に爽やかなスパイシーさが漂う、グレーンウイスキーを形づくりました。
これまでのニッカウヰスキーでは成し得なかった、多彩な香りと味わいが生み出すイノベーションです。

【公式テイスティングノート】
香り:マーマレードやサイダーを思わせる爽やかさ。ウッディでバニリック。トーストやクッキーのような、甘く香ばしい穀物の芳香。
味わい:シナモンのような穏やかなスパイス感とコーンの甘さ。ライ麦由来の爽やかで、コクとふくらみのある味わい。
余韻:ほのかにビタースイートな余韻。すっきりとした後味。

引用:NIKKA THE GRAIN|商品紹介|NIKKA WHISKY

宮城峡蒸溜所のカフェグレーンを軸にカフェモルト、西宮工場、門司工場、さつま司蒸溜蔵の原酒を使用。
中でも西宮工場のカフェモルトとカフェグレーンは1963年~1999年まで西宮工場に設置されていた「カフェ式連続式蒸溜機」(現在は宮城峡蒸溜所に移設)で蒸留された長熟グレーン原酒を使用。また、さつま司蒸溜蔵のコーン・ライ麦原酒はバーボンに近い風味を持つ個性的な原酒で、甘さと爽やかさがこれまでに無い印象で良いアクセントとなっています。

蒸溜所使用された原酒内容
宮城峡蒸溜所カフェグレーン、カフェモルト
西宮工場長熟カフェグレーン、長熟カフェモルト
門司工場大麦グレーン原酒
さつま司蒸溜蔵大麦グレーン原酒、コーン・ライ麦原酒

4-1.テイスティングノート

香り麦の甘さ、ほんのりと香るバニラフレーバー
味わいアーモンド、ほろ苦くややスパイシーでドライ
余韻ビターチョコレート、キリっとした爽やかな余韻

4-2.商品スペック

アルコール度数48%
酒別グレーンウイスキー
樽種
内容量700ml
販売本数国内10,000本、海外10,000本
希望小売価格13,200円(税込)
発売日2023年3月28日

5.受賞歴

現時点では、受賞歴はありません。

6.価格

6-1.メーカー希望小売価格

商品名ニッカ ザ・グレーン
容量700ml
希望小売価格13,200円(税込)

6-2.メルカリでの転売価格

メルカリでの転売価格は、17,000円~25,000円前後となっています。(※2023/4/18日時点)

6-3.ヤフーオークション落札価格

ヤフーオークションでの落札価格は、最安14,000円、最高28,000円、平均19,112円(※2023/4/18時点)

6-4.楽天、ヤフーショッピング、Amazon

通販サイトでも、20,000円~30,000円前後で販売されています。 (※2023/4/17時点)

6-5.BAR新海での提供価格

当サイトが運営する「BAR新海」では、1杯、45ml:3,960円 30ml:2,640円、15ml:1,320円などの少量でも提供しております。

「BAR新海」のご案内
Japanese Whisky Dictionaryが運営する「BAR新海」は、東京都港区に3店舗。当サイトで紹介しているジャパニーズウィスキーをはじめ、国産のジンやビールなども取扱い。オリジナルカクテル、フレッシュフルーツカクテルなども人気。食事も豊富で1件目からも利用可能。

7.まとめ

宮城峡蒸溜所のカフェグレーンを軸にカフェモルト、西宮工場、門司工場、さつま司蒸溜蔵のグレーン原酒を使用し、4拠点から合計7つの個性ある原酒を使用した今作のグレーンウイスキー。
門司工場とさつま司蒸溜蔵の原酒3種類は今回が初採用。今後の可能性を感じさせる未来を見据えた異なるタイプのグレーン原酒の造り分けと言えます。「カフェモルトを彷彿させる甘さ」「麦の香ばしさ」「ライ麦由来のドライでスパイシー」などバランスの取れたウイスキーです。

ニッカウヰスキーに関するその他の記事も是非ご覧ください。

【レビュー】ニッカ 鶴(蒸溜所限定)
ニッカウヰスキー創業者、竹鶴政孝が遺作として造り上げた余市蒸溜所、宮城峡蒸溜所限定販売品のブレンデッドウイスキー。「ニッカのブレンデッド最高峰」と呼ぶに相応しい、ピート、フルーツ感、グレーンの甘みの非常にバランスの取れた一本です。
【レビュー】ニッカ カフェモルト
カフェ式だからこそ感じるモルトの甘さ、芳ばしさ。麦芽の甘さと芳ばしさ、ほのかなバニラの香りと軽快なモルト香が調和。軽やかでスムースな口当たり、ふわりと広がるクリーミーな甘さ、すっきりと爽やかな後味が特徴です。非常にパワフルな香り。

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最後に:ジャパニーズウイスキーのおすすめ書籍

世界的なトレンドを巻き起こしている「ジャパニーズウイスキー」の事をもっと知りたい、もっと勉強したいという方は、是非こちらの書籍をおすすめいたします。

(1).Whisky Galore(ウイスキーガロア)Vol.42 2024年2月号

【巻頭特集】ウイスキーの聖地 アイラ島の“現在”を読み解く
アイラ島のウイスキーは、昔から「アイラモルト」という独自のカテゴリーを与えられてきた。現在9ヵ所の蒸留所があり、さらに2つの新蒸留所計画が発表されている、この小さな島を改めて紹介。
また、現在入手可能なウイスキー8種を土屋編集長が飲み比べる。
●掲載蒸留所
ボウモア、アードベッグ、ラガヴーリン、ラフロイグ、カリラ、ブナハーブン、ブルックラディ、キルホーマン、アードナッホー

【第2特集】北アイルランドのウイスキー
世界の五大ウイスキーのなかで、いまもっとも伸びているのがアイリッシュ。ブームを牽引する北アイルランドの最新情報をリポート。
●紹介ウイスキー
ブッシュミルズ、エクリンヴィル、グレンズ・オブ・アントリム、ヒンチ、キルオーウェン、マコーネルズ、ショートクロス、タイタニック・ディスティラーズ、トゥー・スタックス

【蒸留所リポート】
2023年に100周年を迎えたジャパニーズウイスキー。その第一歩が踏み出され、昨年リニューアルしたばかりのサントリー山崎蒸溜所を取材。そのほか月光川蒸留所や、個性的なツアーを行っている八郷蒸溜所&安積蒸溜所も紹介。

【インタビュー】
ワイルドターキーのマスターディスティラーであるエディー・ラッセル氏と、その息子ブルース・ラッセル氏を編集長がインタビュー。またフィンランドで自国ライ麦にこだわったウイスキーを造るキュロ蒸留所のミイカ氏にも話を聞いた。

【特集】
ウイスキーフェスティバル2023 in TOKYO、ウイスキーコニサークラブ新潟蒸留所ツアー、下田ウイスキーフェスリポート。

(2).ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー

世界的にも有名なウイスキー評論家で、ウイスキー文化研究所代表 土屋守先生の著書「ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー」です。
ウイスキーの基礎知識、日本へのウイスキーの伝来、ジャパニーズウイスキーの誕生、広告戦略とジャパニーズウイスキーの盛隆、そして、現在のクラフト蒸留所の勃興まで。日本のウイスキーの事が非常にわかりやすくまとめられた一冊。

(3).ウイスキーと私(竹鶴政孝)

日本でのウイスキー醸造に人生を捧げた、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝。ただひたすらにウイスキーを愛した男が自らを語った自伝の改訂復刻版。若き日、単身スコットランドに留学し、幾多の苦難を乗り越えてジャパニーズ・ウイスキーを完成させるまでの日々や、伴侶となるリタのことなどが鮮やかに描かれる。

(4).新世代蒸留所からの挑戦状

2019年発売。世界に空前のウイスキーブームが到来しているいま、クラフト蒸留所の経営者たちは何を考え、どんな想いでウイスキー造りに挑んだのか。日本でクラフト蒸留所が誕生するきっかけを作った、イチローズ・モルトで有名なベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏をはじめとする、13人のクラフト蒸留所の経営者たちが世界に挑む姿を綴った1冊。

(5).ウイスキーライジング

2016年にアメリカで出版された『Whisky Risng』の日本語版であり、内容も大幅にアップデート。ジャパニーズ・ウイスキーの歴史が詳細に記述されているだけでなく、近年、創設がつづくクラフト蒸溜所を含む、日本の全蒸溜所に関するデータも掲載。そのほかにも、今まで発売された伝説的なボトルの解説や、ジャパニーズ・ウイスキーが飲めるバーなども掲載されています。

(6).ウイスキーと風の味

1969年にニッカウヰスキーに入社した、三代目マスターブレンダーの佐藤茂夫氏の著書。
『ピュアモルト』『ブラックニッカクリア』『フロム・ザ・バレル』の生みの親でもあり、なかでも『シングルモルト余市1987』はウイスキーの国際的コンペティションWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)にて「ワールド・ベスト・シングルモルト」を受賞。
竹鶴政孝、竹鶴威の意志を引き継いだブレンダー界のレジェンドが語る今昔。

この記事を書いた人
深瀬 悠二

北海道札幌市出身。
2005年、大手スポーツ用品販売チェーンに就職→2019年1月、BAR新海に就職しウイスキーの魅力に引き込まれ虜となる。初めて飲んだウイスキーはアードベッグ10年。ほぼ毎日ウイスキーを飲む中で更なる知識習得を目指し、ウイスキー検定2級とJC級(ジャパニーズクラフトウイスキー)を取得。
造り手の想いをしっかりと表現し、飲み手の方々に正しい情報を伝えたい。ウイスキーの魅力をたくさんの方に伝えたいという思いでウェブメディア「Japanese Whisky Dictionary」の編集を担当。

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