1973年設立。標高約700メートルの地にあるサントリー第ニの蒸留所
1.概要
サントリー二代目社長「佐治敬三」の指揮の元、「山崎蒸留所」設立50周年を記念して設立された、サントリー第二の蒸留所です。
南アルプス・甲斐駒ヶ岳の麓、標高約700メートルの地にあり、世界でも有数の高い場所に位置する蒸留所です。
山崎蒸溜所とはタイプの違う原酒の造り分けを目的とし、作られる原酒も山崎蒸溜所とは打って変わって穏やかでクリーン。
蒸留所の敷地面積は、国内のウイスキー蒸留所で最大を誇り、その広さ82万5000平方メートルと東京ドーム約64個分。
世界的に見ても最大級の広さです。
蒸留所は森林に囲まれており、敷地のうち83%は自然環境保護のために未開発となっています。
森林に囲まれた様子から「森の蒸留所」とも呼ばれています。
2.基本情報
2-1.オーナー
サントリー(サントリーホールディングス)
2-2.所在地
〒408-0316
山梨県北杜市白州町鳥原2913-1
2-3.アクセス
【バス】
JR小淵沢駅から無料シャトルバス運行中
【車】
中央自動車道IC小淵沢より車で約20分
2-4.操業開始
1973年(昭和48年)
2‐5.主力商品
2009年IWSC(インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション)金賞
2010年IWSC金賞
2011年SWSC(サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション)最優秀金賞
2012年IWSC金賞
同年ISC(インターナショナルスピリッツチャレンジ)金賞
2013年SWSC最優秀金賞
2014年SWSC金賞
2016年SWSC最優秀金賞
その他の商品はこちら
3.見学・ビジターセンター
『白州蒸留所ものづくりツアー(90分3,000円)』と『白州蒸留所ものづくりツアープレミアム(130分5,000円)』の2種類のコースがあります。
こちらも山崎蒸溜所と同様、抽選制となっているのでご注意ください。
予約申し込みはこちらから
3‐1.周辺グルメ情報
白州蒸溜所へ立ち寄った後はグルメで舌鼓を。
3‐2.観光宿泊
東京からは実は2時間ほどで行ける白州蒸溜所ですが、せっかくなら地元の観光やホテルも併せて、楽しまない手はありません。
4.製造スペック
伝統的な製法を用いた、ベイマツ(木製)の発酵槽による長めの発酵、直火蒸留が特徴。
加えてニッカウヰスキーでは早くから導入していたカフェ式連続式蒸留機も2013年に導入。
グレーンやライウイスキー等の生産も可能になりました。
なお、同敷地内にはサントリー天然水 南アルプスのボトリング工場も併設されています。
生産量 | ー |
仕込み水 | 南アルプス甲斐駒ヶ岳水系の花崗岩で磨かれた硬度約30度の地下水(軟水) |
麦芽 | イギリス産輸入麦芽(フェノール値0~40ppm )ピートは英国産使用 |
仕込み量 | ワンバッチ10~18トン |
モルトミル | ポーティアス社製4本ローラーミル |
糖化槽 | 三宅製作所製ステンレス・フルロイタータン/13万リットル その他グレーンウイスキー用クッカー |
麦汁量 | 5万5000リットル |
発酵槽 | オレゴンパイン18基/7万5000リットル グレーンウイスキー用ステンレス製ファーメンター6基 |
ポットスチル | ①初留器(ガス直火7~8時間加熱) マクミラン社製・三宅製作所製 ストレート型5基/ランタン型3基 容量8000~2万3000リットル ②再溜器(スチームコイル加熱12時間) 三宅製作所製 ストレート型6基 ランタン型2基 容量4000~1万3000リットル ③その他 フォーサイス社製カフェ式2塔式連続式蒸留機 |
冷却装置 | 初留器シェル&チューブ7基/ワームタブ1基 再溜器シェル&チューブ |
ボトリング設備 | 無し |
熟成庫 | ラック式18棟/近江エージングセラー19棟 |
5.熟成環境について
山崎蒸溜所との違いの一つに、白州蒸溜所は製樽工場を所有しています。
熟成に使用される樽は、おもにアメリカンホワイトオークのバーボン樽とホッグスヘッド樽。(バーボン樽を組み直したもの)
樽に焼き目を入れる「リチャー」も自社で行います。
職人が目的に合わせてどの程度焼き目を入れるのか細かく設定されています。
山崎蒸溜所よりもかなり涼しく湿度も低いため、それだけ熟成もじっくりと進みます。
6.蒸留所ストーリー
6-1.歴史
1973年 (昭和48) |
山梨県白州町白州第一蒸溜所開設。同時にバードサンクチュアリ設営。 |
---|---|
1977年 (昭和52) |
白州第二蒸溜所完成。 白州第一の蒸留器12基を増設。 合わせて発酵槽44基、蒸留器24基で生産量が2倍となり国内最大の蒸留所へ |
1979年 (昭和54) |
「ウイスキー博物館」を開設。 |
1981年 (昭和56) |
白州第3プラント開設。 12基の発酵槽は木製、直火焚き蒸留で従来より小型の蒸留器12器を設置。 白州第一、第ニは生産休止へ。 |
1983年 (昭和58) |
山梨県北杜市に八ヶ岳エージングセラーを竣工。 |
1988年 (昭和63) |
白州第3プラントを白州東蒸溜所(現在の白州蒸溜所)と改称、一般公開開始。 白州第一と第ニは白州西蒸溜所となりますが、蒸留作業は停止。 白州第1は残されるが第2は大部分が解体される。 |
1992年 (平成4) |
『サントリーウイスキー白角』発売。 |
1994年 (平成6) |
『響21年』『ピュアモルト白州12年』『オールド マイルド&スムーズ』発売。 |
1996年 (平成8) |
ミネラルウォーター製造工場「南アルプス天然水白州工場」竣工。 『リザーブ10年』発売。 |
1997年 (平成9) |
蒸留残液処理に嫌気トータル処理システムを開発、導入。 新『ローヤル12年』新『ローヤル15年』発売。 |
2003年 (平成15) |
白州蒸溜所がSMWS(ザ・スコッチモルトウイスキーソサエティ)の120番目のモルトウイスキー蒸留所に登録される。 |
2004年 (平成16) |
『ヴィンテージモルト白州1981、1982、1985、1987、1988、、1990、1993』発売。 オーナーズカスクの販売開始。 『ピュアモルトウイスキー 北杜12年』『響17年50.5』発売。 |
2006年 (平成18) |
『シングルモルト白州18年』発売。 |
2007年 (平成19) |
角瓶発売70周年に合わせ『角瓶(黒43°)』『オールド43プレミアムリッチ』発売。 |
2008年 (平成20) |
『白州25年』『白州蒸溜所樽出原酒1996』『THE CASK of HAKUSHUヘビリーピーテッドモルト1993』『スパニッシュオーク ボタコルタ1993』発売。 『オールド』リニューアル発売。 |
2009年 (平成21) |
純粋持株会社に移行、サントリーホールディングスとなる。 『白州ヘビリーピーデッド2009』 |
2010年 (平成22) |
グレーンウイスキー製造施設の建設を開始。 『白州ヘビリーピーデッド2010』『白州バーボンバレル2010』発売。 サントリー天然水南アルプスの白州工場を新たに竣工。 |
2011年 (平成22) |
『白州バーボンバレル2011』発売。 |
2012年 (平成24) |
発酵槽を4基追加、18基となる。 『白州(ノンエイジ)』『白州シェリーカスク2012』 『白州ヘビリーピーテッド2012』発売。 |
2013年 (平成25) |
カフェ式連続式蒸留機によるグレーンウイスキーの本格生産を開始。 『響ディープハーモニー』『響メロウハーモニー』 『白州シェリーカスク2013』『白州ヘビリーピーテッド2013』発売。 |
2014年 (平成26) |
ビーム社を買収し「ビームサントリー」を設立。 スピリッツ業界世界第3位のグループとなる。 ポットスチルを4基増設、合計16基となる。 『白州シェリーカスク2014』発売。 |
2015年 (平成27) |
『響ジャパニーズハーモニー』発売。 |
2016年 (平成28) |
北米市場向けブレンデッドウイスキー『季TOKI』発売。 |
2017年 (平成29) |
『響ブレンダーズエディション』発売。 |
2018年 (平成30) |
『響ブレンダーズチョイス』発売。 エッセンス・オブ・サントリーシリーズ販売開始 『シングルグレーンウイスキー 白州蒸溜所 ライタイプ』発売。 |
2019年 (平成31 令和元年) |
『杉樽シリーズ・ブレンデッドジャパニーズウイスキー(クリーンタイプ&リッチタイプ』ワールドウイスキー『碧Ao』発売 ビームサントリー『LEGENT』製造発売。 |
2021年 (令和3) |
白州蒸溜所、蒸留所内リモートツアーを開始。 『響ブロッサムハーモニー2021』 『白州ピーテッドモルト2021』『白州スパニッシュオーク2021』発売。 『白州12年』数量限定で再発売。 |
2022年 (令和4) |
『響ブロッサムハーモニー2022』『碧Ao 〈SMOKY PLEASURE〉』発売。 サントリーHD、グループ5会社を再編しサントリー株式会社設立。 2019年から休売していた『サントリー白角』を数量限定で販売再開。 |
2023年 (令和5) |
フロアモルティングを新設。 酵母培養プロセスの導入。 サントリーウイスキー100周年記念ラベル発売。 『響 BLOSSOM HARMONY 2023』 『響ジャパニーズハーモニーアニバーサリーエディション』 『響21年アニバーサリーエディション』発売。 『サントリープレミアムハイボール〈白州〉缶』を数量限定発売。 |
6-2.歴代のブレンダー
初代マスターブレンダー「鳥井信治郎」
言わずと知れた寿屋創業者「鳥井信治郎」は、元々嗅覚がすぐれており、大阪の鼻と称されたほど。
丁稚奉公に出た先が薬種問屋で調合のノウハウをそこで体得したと言われています。
「やってみなはれ、やらな分からしまへん」が口癖でその精神は、現在のサントリーの基幹となっているのは言うまでもありません。
二代目マスターブレンダーである、佐治敬三とはよく親子喧嘩をしていたそうで、社長室からおまえはへんこつや!と怒号が毎日のように飛んでいたそうです。
荒い気性のその一方で、困っている人の元へはいち早く駆け付けるという義理堅い一面も。
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「鳥井信治郎」の事をもっとよく知りたいという方にオススメしたい書籍を紹介します。
チーフブレンダー「大西為雄」
白州蒸溜所のマザーウォーター(仕込み水)となる白州・尾白(おじら)川の地下水を、花崗岩を通った白州・尾白(おじら)川の地下水を発見した人物。
より良い水質を求める執念から「水の狩人」の異名を持つ「大西為雄」は、戦後の影響から海外からの樽の仕入れが困難になった時、代わりになるミズナラの木を最初に樽材として見出した人物とされています。
1963年~70年の間、第8代山崎蒸溜所工場長を務めています。
二代目マスターブレンダー「佐治敬三」
二代目寿屋社長、サントリー中興の祖として知られる「佐治敬三」は、鳥井家の次男にあたります。
信治郎の勧めで大阪帝国大学理学部化学科にて、ウイスキーに含まれる高級アルコールに影響を及ぼす、アミノ酸の合成をテーマとした研究をしていたと言われています。
長男吉太郎が二代目を継ぐ予定だったが33歳の若さで早逝した為、次男である敬三が継ぐ形となりました。
佐治姓については謎が多く、諸説あります。当サイト歴史コンテンツ内にて、佐治姓について触れている記事がありますので、こちらも併せてご覧ください。
先代の信治郎が苦戦し、一度は撤退したビール事業を再開させた事でも有名で、1967年に非熱処理の瓶の生ビール「純生」を発売しました。
公共広告機構(現在のACジャパン)の発起人であり、芸術への造詣が深く、「サントリー美術館」「サントリーホール」など日本の文化事業向上にも貢献しています。
1973年に白州蒸溜所を建設しシングルモルト「白州」を発売。
創業90周年の節目に、1989年「人と自然と響きあう」をテーマに、後に酒類世界的コンペティションで殿堂入りを果たすブレンデッドウイスキー「響」を発売。
余談ですが、サントリーの管理職たちは社長の敬三から渡される、通称「マルめ」と呼ばれる指示が書かれたメモ紙(しかも不要になった裏紙)に戦々恐々としていたそうです。
敬三の○にkのサインがひらがなの「め」に見えることからそう名づけられました。
元々は、敬三が専務時代に宣伝制作係長であった山口瞳が、チラシの裏紙に部下への指示を書いたメモを回していたのを取り入れたのではないかと言われています。
チーフブレンダー「佐藤乾」
佐治敬三と共に現在のシングルモルト「山崎」を2年の歳月をかけて生み出した人物。
チーフブレンダー「稲富孝一」
元サントリーチーフブレンダー。
輿水精一チーフブレンダーの元上司であり、あの「響17年」の開発者。
1968年には、スコットランドのヘリオット・ワット大学に留学、醸造学の基礎研究で博士号を取得。
2000年にサントリーを退社後、グラスゴー大学の客員研究員として、スコッチウイスキーの産業史を研究に従事。
2016年には世界的なウイスキー専門誌『ウイスキーマガジン』が認定する「Hall of Fame」を受賞。
日本人として史上2人目となる“ウイスキー殿堂入り”を果たす。
三代目マスターブレンダー「鳥井信吾」
1953年生まれ。甲南大学卒業。南カリフォルニア大大学院修了。
92年取締役、03年副社長、12年関西経済同友会代表幹事、14年より副会長、大阪商工会議所副会頭。
創業者の鳥井信治郎氏は祖父、二代目社長の佐治敬三氏は伯父に当たる。
02年よりマスターブレンダー就任。
チーフブレンダー「輿水精一」
輿水精一 (こしみず せいいち)
1949年生まれ 山梨県出身
1973年 サントリー入社 多摩川工場配属
1976年 中央研究所、酒類食品研究所でウイスキーの貯蔵、熟成の研究に従事
1985年 山崎ディスティラリー(現山崎蒸溜所)へ(貯蔵担当)
1991年 洋酒研究所ブレンダー室へ
1996年 ブレンダー室主席ブレンダー
1999年 ブレンダー室チーフブレンダー
2014年 名誉チーフブレンダー
2015年 Whisky Magazine誌の『HALL of FAME』入り
<現在の活動>
・関西大学客員教授
・山梨大学客員教授
・やまなし大使
・株式会社ハセラボ 代表取締役副社長
チーフブレンダー「福與 伸二」
1961年愛知県生まれ。名古屋大学農学部農芸化学科卒業。
1984年サントリー株式会社(当時)に入社。
白州ディスティラリー(現在の白州蒸溜所)ブレンダー室を経て、1996年に渡英。
ヘリオットワット大学(エジンバラ)駐在や、モリソンボウモア ディスティラーズ(グラスゴー)への出向勤務の後、2002年帰国。
2003年に主席ブレンダー、2009年にブレンダー室長となり5代目チーフブレンダーに就任。
山崎の各種限定シリーズをはじめ、数多くのサントリーウイスキーを手掛けている。