【イチローズモルト】ベンチャーウイスキー㈱肥土伊知郎氏【Hall of Fame】を受賞し殿堂入り

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秩父蒸溜所(イチローズモルト)

イチローズモルトを製造するウイスキー専業メーカー「ベンチャーウイスキー」(埼玉県秩父市)社長で、マスターブレンダーの肥土伊知郎氏、英国の権威ある専門誌「ウイスキーマガジン」が認定する「Hall Of Fame」を受賞し、殿堂入りへ。

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1.Hall Of Fameとは?

hall of fame(殿堂)とは、偉業を成し遂げた人々に与えられる称号。 fameには「名声」の意味がある。

同賞は、長年にわたりウイスキー業界において特筆すべき貢献を果たした個人に贈られる賞で、2004年から毎年発表されている。授賞式は20日(現地時間)にロンドンで開催され、日本人として5人目、日本人最年少での殿堂入りとなった。

冬の時代が長く続いた日本のウイスキー業界の復興の先駆者として、失われつつあった製造方法に果敢に取り組み、技術革新をもたらしたことが高く評価された。

「家業が廃業した後、小さな会社からスタートしたにもかかわらず、ベンチャーウイスキーのブランドを確立。08年には日本国内では35年ぶりとなる秩父蒸溜所を開設し、産業全体のフロントランナーになった。数々の賞を受賞しただけでなく、国内のウイスキー業界が停滞する中、失われつつあった製造方法に取り組み、業界を活気づけ、技術の革新者であることを証明した。ジャパニーズウイスキーのブランド基準と品質確保にも尽力した」と説明。

 肥土氏は「今回、ウイスキー殿堂入りできたことに本当に驚いている。単にウイスキーが好きで、おいしいものを造りたくて努力を積み重ねてきた。個人賞としては最高の栄誉だが、今まで私を支えてくれた皆さんのおかげだと思っている。今後は後進の育成に力を入れて、業界の発展に貢献していきたい」とコメントした。

引用:埼玉新聞

肥土伊知郎氏の半生についての書籍は「ジャリ道」がおススメです。

【苦しみは不幸なことではなく必然だった】。あんなにも謙虚で物腰柔らかい伊知郎氏の秘密が少し読み解ける気がします。

2.株式会社ベンチャーウイスキーとは?

イチローズモルトを製造している会社。

会社名株式会社ベンチャーウイスキー
設立2004年
本社所在地〒368-0067 埼玉県秩父市みどりが丘49
所有蒸留所秩父蒸溜所、秩父第二蒸溜所

3.秩父蒸溜所、羽生蒸溜所、川崎蒸溜所とは?

伊知郎氏が操業を開始した秩父蒸溜所

伊知郎氏の祖父の代の東亜酒造時代に製造拠点となっていた羽生蒸溜所、かつて存在していた川崎蒸溜所

蒸溜所名秩父蒸溜所
所在地〒368-0067 埼玉県秩父市みどりが丘49
操業開始2007年

秩父の風土に根ざしたシングルモルトウイスキー造りが行われています。

創業者の肥土伊知郎氏はジャパニーズウイスキーであることに誇りを持ち、小さなミル、マッシュタン、ミズナラ製の発酵槽、スコットランド・フォーサイス社製のポットスチルで手づくりに拘りモルトウイスキーを生産しています。

秩父蒸溜所周辺は自然豊かで空気がきれいで質の良い水、夏は高温多湿で朝晩が氷点下にいたる寒さの厳しい環境です。その厳しい気候が織りなす寒暖差がウイスキーの熟成に多大な影響を与え、短い熟成期間にも関わらずフルーティでバランスの取れたウイスキーに仕上がります。

2004年9月創業。
2007年に秩父蒸溜所が完成。
2008年2月、ウイスキー作りの免許が交付され秩父蒸溜所でウイスキー作りを開始。
2019年10月、第2蒸留所の稼働開始。

1973年設立のサントリー白州蒸溜所キリン富士御殿場蒸溜所の次に設立された蒸留所。まさにウイスキー低迷期の終焉とも言えるこの時期に実に日本国内35年ぶりの蒸留所設立となる。
年間のウイスキー生産量はスコットランド・グレンリベット蒸留所のわずか2日分。

2019年秋から稼働している第2蒸留所の生産量は第1蒸留所のなんと5倍。一度に仕込む麦芽は2t。ポットスチルは5倍の量を蒸留できるよう形は同じストレート型だがかなり大きなポットスチルになっている。フォーサイス社製でガス直火蒸留機を使用。

秩父蒸溜所の情報はこちら↓もご覧ください。

秩父蒸溜所(イチローズモルト) | ジャパニーズウイスキーディ...
Japanese Whisky Dictionary

羽生蒸溜所

所在地埼玉県羽生市西4-1-11
操業開始1946年~2004年10月(稼働は2000年まで)

1946年東亜酒造が現在の埼玉県秩父市に当たる地で肥土(あくと)酒造本家として創業。
日本酒の製造を開始。
1941年現在の埼玉県羽生市に当たる地に拠点を移し会社設立。
1946年ウイスキー製造免許を取得。
1948年ウイスキー「ゴールデンホース」の製造開始
2000年羽生蒸溜所の稼働停止(ウイスキー原酒の製造停止)

2000年を最後に蒸留を停止し、熟成中の樽はベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏に引き継がれた。羽生蒸溜所の原酒は、引き継がれた肥土氏によって『イチローズモルト』というブランド名を与えられ、限定品ながらも辛うじて入手できる閉鎖蒸留所原酒のひとつとなった。

川崎蒸溜所

所在地神奈川県川崎市川崎区鈴木町3-1
操業開始1935年~2003年

1934年 昭和酒造株式会社設立
1935年 川崎工場操業開始
1942年 昭和農産化工株式会社に改称
1947年 川崎工場でウイスキーの製造開始「サンラック・ウイスキー(Sun Luck Whisky)」販売
当時はまだ原酒製造は行っていなかったため原酒を購入してブレンドしたものを販売していた。

1949年 三楽酒造株式会社と改称
1958年 ウイスキー生産増強を図りモルトウイスキーの原酒の製造を開始
1962年 オーシャン株式会社と合併し三楽オーシャン株式会社となる
1969年 川崎工場でグレーンウイスキーの原酒の製造を開始
1980年 川崎工場にグレーンウイスキーの貯蔵庫建設
1985年 三楽株式会社に社名変更
1990年 メルシャン株式会社に社名変更
2003年 川崎工場の生産機能が終了。工場閉鎖となる
2007年 キリンホールディングスの事業会社となり、キリングループとなる

現在は埼玉県にあるベンチャーウイスキーの秩父蒸溜所で当時の川崎工場の原酒を保管。2009年に三楽オーシャン時代の川崎工場で蒸留した原酒を使ったウイスキーで、シングルグレーン川崎の「1982カワサキ」「1981カワサキ」「1976カワサキ」を発売していた。
今現在でどれほどの原酒が残っているのかは不明。

「イチローズモルト」に関するその他の記事も是非ご覧ください。

【レビュー】イチローズモルト秩父レッドワインカスク2023
イチローズモルト秩父レッドワインカスク2023は、秩父蒸溜所より2023年9月1日発売。16,500円(税込)。赤ワインカスク特有のタンニン感に、フルーティかつ、しっかりとしたスパイシーさも感じられ長い余韻に包まれます。
【レビュー】イチローズモルト 秩父10年 ザ・ファーストテン
イチローズモルト 秩父10年 ザ・ファーストテン 、初の年数表記のウイスキーがリリース。バーボン系の樽の風味とイチローズモルトの原酒の風味をしっかりと感じます。2020年11月発売。19,800円(税込)
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最後に:ジャパニーズウイスキーのおすすめ書籍

世界的なトレンドを巻き起こしている「ジャパニーズウイスキー」の事をもっと知りたい、もっと勉強したいという方は、是非こちらの書籍をおすすめいたします。

(1).Whisky Galore(ウイスキーガロア)Vol.42 2024年2月号

【巻頭特集】ウイスキーの聖地 アイラ島の“現在”を読み解く
アイラ島のウイスキーは、昔から「アイラモルト」という独自のカテゴリーを与えられてきた。現在9ヵ所の蒸留所があり、さらに2つの新蒸留所計画が発表されている、この小さな島を改めて紹介。
また、現在入手可能なウイスキー8種を土屋編集長が飲み比べる。
●掲載蒸留所
ボウモア、アードベッグ、ラガヴーリン、ラフロイグ、カリラ、ブナハーブン、ブルックラディ、キルホーマン、アードナッホー

【第2特集】北アイルランドのウイスキー
世界の五大ウイスキーのなかで、いまもっとも伸びているのがアイリッシュ。ブームを牽引する北アイルランドの最新情報をリポート。
●紹介ウイスキー
ブッシュミルズ、エクリンヴィル、グレンズ・オブ・アントリム、ヒンチ、キルオーウェン、マコーネルズ、ショートクロス、タイタニック・ディスティラーズ、トゥー・スタックス

【蒸留所リポート】
2023年に100周年を迎えたジャパニーズウイスキー。その第一歩が踏み出され、昨年リニューアルしたばかりのサントリー山崎蒸溜所を取材。そのほか月光川蒸留所や、個性的なツアーを行っている八郷蒸溜所&安積蒸溜所も紹介。

【インタビュー】
ワイルドターキーのマスターディスティラーであるエディー・ラッセル氏と、その息子ブルース・ラッセル氏を編集長がインタビュー。またフィンランドで自国ライ麦にこだわったウイスキーを造るキュロ蒸留所のミイカ氏にも話を聞いた。

【特集】
ウイスキーフェスティバル2023 in TOKYO、ウイスキーコニサークラブ新潟蒸留所ツアー、下田ウイスキーフェスリポート。

(2).ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー

世界的にも有名なウイスキー評論家で、ウイスキー文化研究所代表 土屋守先生の著書「ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー」です。
ウイスキーの基礎知識、日本へのウイスキーの伝来、ジャパニーズウイスキーの誕生、広告戦略とジャパニーズウイスキーの盛隆、そして、現在のクラフト蒸留所の勃興まで。日本のウイスキーの事が非常にわかりやすくまとめられた一冊。

(3).ウイスキーと私(竹鶴政孝)

日本でのウイスキー醸造に人生を捧げた、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝。ただひたすらにウイスキーを愛した男が自らを語った自伝の改訂復刻版。若き日、単身スコットランドに留学し、幾多の苦難を乗り越えてジャパニーズ・ウイスキーを完成させるまでの日々や、伴侶となるリタのことなどが鮮やかに描かれる。

(4).新世代蒸留所からの挑戦状

2019年発売。世界に空前のウイスキーブームが到来しているいま、クラフト蒸留所の経営者たちは何を考え、どんな想いでウイスキー造りに挑んだのか。日本でクラフト蒸留所が誕生するきっかけを作った、イチローズ・モルトで有名なベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏をはじめとする、13人のクラフト蒸留所の経営者たちが世界に挑む姿を綴った1冊。

(5).ウイスキーライジング

2016年にアメリカで出版された『Whisky Risng』の日本語版であり、内容も大幅にアップデート。ジャパニーズ・ウイスキーの歴史が詳細に記述されているだけでなく、近年、創設がつづくクラフト蒸溜所を含む、日本の全蒸溜所に関するデータも掲載。そのほかにも、今まで発売された伝説的なボトルの解説や、ジャパニーズ・ウイスキーが飲めるバーなども掲載されています。

(6).ウイスキーと風の味

1969年にニッカウヰスキーに入社した、三代目マスターブレンダーの佐藤茂夫氏の著書。
『ピュアモルト』『ブラックニッカクリア』『フロム・ザ・バレル』の生みの親でもあり、なかでも『シングルモルト余市1987』はウイスキーの国際的コンペティションWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)にて「ワールド・ベスト・シングルモルト」を受賞。
竹鶴政孝竹鶴威の意志を引き継いだブレンダー界のレジェンドが語る今昔。

この記事を書いた人
Ryuhei Oishi

北海道出身 bar新海虎ノ門店のバーテンダー。
都内のレストランで従事し、日本ソムリエ協会認定ソムリエ資格を取得。
自身の知識の少なかった日本のウイスキーに興味を持ち、bar新海に就職。蒸留所へ行き、造り手の方々に話を聞き、その情熱・情報をバーテンダーとして伝搬するべく、JWDに参加。

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ジャパニーズウイスキーディクショナリー
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