T&T TOYAMA 井波熟成庫が竣工(日本初ボトラーズ事業)

三郎丸蒸溜所の稲垣貴彦氏とモルトヤマの下野孔明氏の共同プロジェクト「T&T TOYAMA」の井波熟成庫が2022年4月22日に竣工。

世界初のジャパニーズウイスキーボトラーズ事業として、国内数ヵ所のウイスキー蒸溜所から集められた樽詰めされたウイスキー原酒は、これまで若鶴酒造の「三郎丸蒸溜所」内の貯蔵庫に保管されていたが、今後は井波貯蔵庫へ移設され熟成が続けられます。

井波熟成庫には、今後テイスティングスペースやテーブル、芳名板などが設置される予定。

 

1.T&T TOYAMAとは

世界初のジャパニーズウイスキーボトラーズ事業として、三郎丸蒸溜所の稲垣貴彦氏とモルトヤマの下野孔明氏の共同プロジェクト「T&T TOYAMA」

ボトラーズウイスキーとは、ウイスキー蒸溜所とは別の瓶詰め業者が蒸溜所から原酒を購入し、独自の熟成を行い瓶詰めした後、自社のラベルを貼って販売するもの。 

スコットランドで有名なボトラーズブランドとしては、「ゴードン&マクファイル」、「シグナトリー」、「キングスバリー」などが挙げられますが、日本ではこれまでボトラーズブランドは存在せず、「T&T TOYAMA」が初となります。

 

⽇本のクラフトウイスキー蒸留所によって造られた原酒、特に熟成前のニューポットを購⼊し、富⼭県南砺市井波で独⾃に建設した『T&T TOYAMA 井波熟成庫』で、⾃社で調達した特別な樽を⽤いて熟成し、最適なタイミングを⾒極め、 熟成のピークで「シングルカスク&カスクストレン グス」にてボトリングする、世界初の本格的なジャパニーズウイスキーボトラーズ事業を⾏っています。

(引用:T&T TOYAMA 公式HP

ジャパニーズウイスキーボトラーズ事業の詳細については、2021年5月に実施されたクラウドファンディングの内容も是非ご覧ください。

2.井波熟成庫

それでは、本記事の本題に入りたいと思います。

今回竣工したT&T TOYAMAの「井波熟成庫」について説明していきます。

3-1.所在地

井波熟成庫が立地しているのは、富⼭県南砺市井波。

⽥んぼに囲まれて⺠家が点在する散居村がある地域で、⾃然豊かで空気がきれいな、⼀年を通して適度に湿度が保たれた地域。気温も⽐較的安定して、ウイスキーをゆっくりと育むためには最適な環境。

 

所在地富⼭県南砺市井波
アクセス

<お車で>
●富山IC–(北陸自動車道)–砺波IC下車10分程

<鉄道とバスで>
●高岡駅/新高岡駅から(加越能バス庄川町小牧線で約60分程)

●金沢駅から(南砺金沢線バスで約65~80分程)

 

熟成庫の見学が始まれば、周辺の観光やグルメなども気になるところですね。

3-2.熟成庫が出来るまで

井波熟成庫の工事開始から建設中の様子は、下野氏のYoutubeで公開されています。

自然に囲まれた美しい環境であることや、どのように熟成庫の工事が進んでいくのかをご覧いただく事ができます。

2021年12月20日時点

2021年12月22日時点

2022年1月11日時点

3-3.熟成庫のスペック

⽊造の熟成庫で、 最⼤5,000丁(樽)が貯蔵可能なラック式で、 断熱性・調節性に優れた熟成庫。

 

断熱性

・CLT(直⾏集成材)や断熱材入りの二重折半屋根、断熱シャッターを採用

調節性

・樽の貯蔵するラックの下は、コンクリートを入れず土間に砕石を入れ地面からの湿気を取り入れる設計。

・ナイトパージによる夏場の早朝冷えた空気の入替。

・ロガーによる温度と湿度のリアルタイム管理。

貯蔵容量ラック式で、最大5,000丁(樽)

3-4.テイスティングスペース

前項で記載した通り、井波熟成庫は、木材をふんだんに使用し、断熱性と調節性に優れいているため、庫内は木目や木の肌触りを感じる心地のいい空間が生み出されます。

そんな環境の中に、見学者がくつろぎながらウイスキーを楽しめるテイスティングスペースも設置される予定です。

クラウドファンディング時の情報によると、テイスティング用のテーブルには、下野氏が厳選した今では稀少なブビンガ材が採用されるとの事で、貯蔵庫だけでなくテイスティングスペースも注目のひとつとなりそうです。

 

3.パートナー蒸溜所

気になるのは、「T&T TOYAMA」へ原酒を提供しているパートナー蒸溜所はどこなのか。

稲垣氏と下野氏が日本中の蒸溜所を周り、独自の基準を満たした蒸溜所の中からプロジェクトへ賛同した蒸溜所が下記6ヵ所となっています。(2015年のクラウドファンディング実施時点)

 

・江井ヶ嶋蒸溜所 (江井ヶ嶋酒造株式会社 )
・尾鈴山蒸溜所(株式会社黒木本店)
・御岳蒸溜所 (西酒造株式会社)
嘉之助蒸溜所 (小正嘉之助蒸溜所株式会社)
・桜尾蒸溜所 (株式会社サクラオB&D)
三郎丸蒸留所 (若鶴酒造株式会社 )
 ※五十音順

(画像出典:世界初!ジャパニーズウイスキーボトラーズ設立プロジェクトより)

3-1.江井ヶ嶋蒸溜所 (江井ヶ嶋酒造株式会社 )

地ウイスキー「あかし」と聞くと、知っている方も多いのではないでしょうか?

兵庫県明石市で、1888年に創業した日本酒の酒造メーカーでありますが、ウイスキー製造免許は1919年に取得している歴史あるメーカー。近年、設備もリニューアルしてこれから作られるウイスキーは更に期待が出来そうです。先日、長濱蒸溜所との原酒交換で実現したダブルブレンダーズも話題になりました。

3-2.尾鈴山蒸溜所(株式会社黒木本店)

百年の孤独」「山ねこ」「山猿」で知られる老舗焼酎蔵の黒木本店。先代の黒木敏夫氏がスコットランドのエドラダワー蒸留所に感銘を受けて、敢えて山中に建設された拘りの蒸留所。後を継いだ息子の黒木信作氏によって2019年11月からウイスキー造りを開始

先日のウイスキーフェスティバルでは、栗樽熟成のニューボーンを提供。和の風味を感じる珍しい取り組みで今後に注目。ウイスキーだけでなく、ジンの製造も熱心に行っています。

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3-3.御岳蒸溜所 (西酒造株式会社)

日置市の山中に170年を超す歴史を誇り「薩摩宝山」や「天使の誘惑」などで知られる本格焼酎製造の老舗。2019年にウイスキーの蒸留施設を建設。

熟成に使用する樽は、全てシェリーバットの古樽のみというこだわり。原材料からこだわるというポリシーに、焼酎造りの経験が生かされ、丁寧にウイスキーを製造行っています。

日本版マッカランの様な存在になる日は遠くないかもしれません。

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3-4.嘉之助蒸溜所 (小正嘉之助蒸溜所株式会社)

鹿児島県の小正醸造は、1883年に創業した本格焼酎「小鶴」を中心とした酒造メーカー。
これまで培ってきた本格焼酎の製造技術をふんだんに活かし、新たなステージへ挑戦として、2017年にウイスキー製造免許を取得し「小正醸造 嘉之助蒸溜所」の操業を開始。先代の嘉之助氏が発明した樽熟焼酎「メローコヅズ」の空樽をリチャーしウイスキー熟成に使用するなど、他の蒸溜所には無い珍しい特徴を持つ。

3年の熟成を経て2021年にシングルモルトが2種類発売。2022年6月にも新商品の発売を控えています。

3-5.桜尾蒸溜所 (株式会社サクラオB&D)

1918年創業の老舗の酒造メーカー。実はウイスキー造りの歴史は深く、1938年~1989年までモルトウイスキーの製造・販売を行っていました。

2018年、洋酒づくりの新たな可能性へ挑戦するため、設備を新たに導入し、桜尾蒸留所を設立。
2021年に3年の熟成を経たシングルモルトウイスキーの「桜尾」と「戸河内」を同時発売。また、クラフトジンの「桜尾ジン」は桜尾蒸留所の主力商品となっています。

3-6.三郎丸蒸留所 (若鶴酒造株式会社 )

1862年に富山県砺波郡三郎丸村で清酒製造を始めた、北陸では非常に歴史のある酒造。第二次世界大戦の終結後、行きづまった局面を打開すべく、独自に蒸留酒製造の研究を行い、1952年にウイスキー製造免許を取得。1953年から「サンシャインウイスキー」を富山県内で販売をはじめました。

2016年「三郎丸蒸留所改修プロジェクト」を立ち上げ、資金確保のためにクラウドファンディングに挑戦。60年以上守り続けてきたウイスキー造りへの情熱と世界のウイスキーに育てるという挑戦を呼びかけ、2017年、三郎丸蒸留所は建物や製造設備を改修しウイスキー蒸留所として再スタートを切りました。

直近では、江井ヶ嶋蒸溜所との原酒交換により生まれた「Far Eats Of Peat」のサードバッチ、フォースバッチがリリース。

4.T&T TOYAMAの新商品:THE LAST PIECE

先日、世界初となる日本のクラフト蒸留所5か所のモルト原酒をブレンドしたウイスキー『THE LAST PIECE ジャパニーズエディションBatch No.1』『THE LAST PIECE ワールドエディションBatch No.1』を4月19日(火)より本数限定で販売する事が発表されました。

 

(画像出典:若鶴酒造ホームページ

 

若鶴酒造のオンラインショップ「私とALC」で抽選応募が行われましたが、残念ながら既に締切となり、抽選販売の申込みは終了しています。

お近くのBARなどでお目にかかれた時には、是非飲んで頂きたい希少なウイスキーです。

5.最後に

ジャパニーズウイスキーの未来の為に、ジャパニーズウイスキーバブルとも言われる好景気の「今」のうちに、日本のクラフト蒸溜所が長く存続できる仕組みを作っていかなければいけない。と語られていた稲垣氏と下野氏のお二人の言葉が今も印象に残っています。

 

世界中から高い評価を得てきた日本のウイスキーは、世界中で買い漁られ稀少なものとなり、価格高騰を続けています。この需要に応えるべく、50ヵ所以上のウイスキー蒸溜所が日本国内で稼働し、日々ジャパニーズウイスキーの製造が進んでいます。現時点では、本格的なジャパニーズウイスキーは、発売されればすぐに完売という好景気が続いています。

 

しかし、バブル状態のブームには必ず陰りが訪れ、次第に低迷期に差し掛かる。という過去の経験則を踏まえて考えると、スコットランドのボトラーズ業者が行ってきたように、互いに支え合う業界の仕組み作りにも貢献していると言えます。

 

T&T TOYAMAは、各蒸溜所のオフィシャル商品とは異なる様々な風味と味わいのウイスキーを作るだけでなく、ウイスキー業界全体を支えていく一躍を担う存在になっていくのかもしれません。そういう意味でも、今後の動向に益々注目が集まってくることでしょう。

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