キリンビールは、世界で人気が高まる「ジャパニーズウイスキー」を販売する国を、3倍以上に拡大する。
キリンビールは、フランスの世界的ワインメーカー「ペルノ・リカール」との提携を発表した。
高価格ウイスキー「富士」は、現在アメリカなど5カ国に輸出しているが、ペルノ社を通じて18カ国に販売を拡大する。
価格は、日本の約2倍となる1本1万円を想定している。
2023年9月から順次販売し、2030年に40億円の売り上げを目指すという。
高価格帯の日本産ウイスキーは、国内外での市場規模がここ10年で2割増加しているという。
キリンビールは、今回の提携を海外での需要の取り込みに繋げたい考えだ。
引用元:FNNプライムオンライン
1.メーカー
キリンディスティラリー株式会社
設立 | 1972年8月 |
本社所在地 | 〒412-0003 静岡県御殿場市柴怒田970番地 |
所有蒸留所 | 富士御殿場蒸溜所 |
2.蒸留所
富士御殿場蒸溜所
所在地 | 〒412-0003 静岡県御殿場市柴怒田970番地 |
操業開始 | 1973年11月 |
1972年8月 キリンビール株式会社(日本)、JEシーグラム社(米、当時)、シーバースブラザーズ社(英)3社合弁によりキリン・シーグラム株式会社設立
1973年11月 富士御殿場蒸溜所完成、製造開始
1974年2月 国産ウイスキー「ロバートブラウン」発売
2002年7月 社名を「キリンディスティラリー株式会社」と変更(キリンビール株式会社の100%出資会社化)
2005年9月 国産ウイスキー「キリンウイスキー富士山麓 樽熟50°」「キリンウイスキー富士山麓シングルモルト18年」発売
2016年3月 「キリンウイスキー 富士山麓 ブレンデッド 18年」発売、「キリンウイスキー富士山麓 樽熟原酒50°」発売
2018年8月 「富士山麓 Signature Blend (シグニチャーブレンド)」発売
2020年4月 「キリンシングルグレーンウイスキー富士」発売
富士山のふもとに位置する「キリンディスティラリー(株)富士御殿場蒸溜所」はモルトウイスキーとグレーンウイスキーの仕込みからボトリングまで一貫して行う、世界でも珍しいウイスキー蒸留所です。
豊富な富士の伏流水、冷涼な気候、一年を通して幾度となく発生する霧、恵まれた自然環境の中で、ウイスキーをはじめ、ミネラルウォーターや缶チューハイなど、キリングループの多種多様な製品を製造しています。
2019年2月、将来のさらなるウイスキーの販売数量増加に備えて生産設備を増強、約80億円を投資。
多様なモルトウイスキー原酒を製造するため、小型の発酵タンク4基と蒸留器2系列4基を新設し原酒製造能力を約2倍に、樽熟成庫のリニューアル・大型化等により、樽の保管能力を約2割増強。将来にわたり高品質なウイスキーを安定して供給できる生産体制を目指す。稼働開始時期は2021年6月の予定。
富士御殿場蒸溜所の情報はこちら↓もご覧ください。
3.富士シリーズ
3‐1.シングルモルトジャパニーズウイスキー富士
3‐2.シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー富士
3‐3.シングルグレーンウイスキー富士
4.考察
今回のキリンビールのウイスキー輸出拡大には、国内市場におけるシェアの伸び悩みと海外への国産ウイスキーの輸出量の増加が背景にあると考えられます。
ウイスキー国内市場は90年代から2008年に掛けては減少の一途を辿っておりましたがその後はV字回復となっており、参考値として2017年度は金額ベースが前年度より13.1%増の1,147億円、数量ベースが9.0%増の16万2736klとなっている等年々その市場を拡大しています。
2020年には販売数が下落しているもののこれはコロナ禍における飲食店への需要減少によるものとなっており、今後この数値も回復していくものと思われます。
出典:Dear WHISKY
国産、輸入別(数量)でみると、国産が2017年より前年比10.0%増の13万9196kl、輸入が3.3%増の2万3540klと、ボリュームの大きい国産ウイスキーがより拡大している事が読み取れます。
出典:流通ニュース
これだけの大きな市場においてメーカー別(数量)での割合を見てみると、サントリーHDがシェア40.9%でトップ。次いで、アサヒビールが25.2%と大手2社で全体の65%超を占めており、キリンビールは3位の宝酒造の2.8%に次いで2.4%と苦戦を強いられている事が見て取れます。
そして今回の海外輸出強化こそが新たな活路となる訳ですが、ウイスキーの輸出量(下図、青の棒グラフ)は国内需要の回復から近年にかけて爆発的に増加しており、輸出されているウイスキーの単価(赤線のグラフ)も2000年が656円/Lだったのに対し、2021年では3678円/Lまで増加と、世界中でプレミアムジャパニーズウイスキーの需要が爆発的に高まっており、ペルノ・リカールと提携を結びその販路を活用することでこの世界的な需要の高まりという波に乗り、一気にシェアを拡大していきたいという意図があるのは間違いないでしょう。
出典:Dear WHISKY
5大ウイスキーの一角として留まることのないジャパニーズウイスキーの需要の拡大の波に乗ってキリンが世界中でどれだけファンを増やしていけるのか、今後の動向が楽しみです
最後に:ジャパニーズウイスキーのおすすめ書籍
世界的なトレンドを巻き起こしている「ジャパニーズウイスキー」の事をもっと知りたい、もっと勉強したいという方は、是非こちらの書籍をおすすめいたします。
(1).Whisky Galore(ウイスキーガロア)Vol.42 2024年2月号
【巻頭特集】ウイスキーの聖地 アイラ島の“現在”を読み解く
アイラ島のウイスキーは、昔から「アイラモルト」という独自のカテゴリーを与えられてきた。現在9ヵ所の蒸留所があり、さらに2つの新蒸留所計画が発表されている、この小さな島を改めて紹介。
また、現在入手可能なウイスキー8種を土屋編集長が飲み比べる。
●掲載蒸留所
ボウモア、アードベッグ、ラガヴーリン、ラフロイグ、カリラ、ブナハーブン、ブルックラディ、キルホーマン、アードナッホー
【第2特集】北アイルランドのウイスキー
世界の五大ウイスキーのなかで、いまもっとも伸びているのがアイリッシュ。ブームを牽引する北アイルランドの最新情報をリポート。
●紹介ウイスキー
ブッシュミルズ、エクリンヴィル、グレンズ・オブ・アントリム、ヒンチ、キルオーウェン、マコーネルズ、ショートクロス、タイタニック・ディスティラーズ、トゥー・スタックス
【蒸留所リポート】
2023年に100周年を迎えたジャパニーズウイスキー。その第一歩が踏み出され、昨年リニューアルしたばかりのサントリー山崎蒸溜所を取材。そのほか月光川蒸留所や、個性的なツアーを行っている八郷蒸溜所&安積蒸溜所も紹介。
【インタビュー】
ワイルドターキーのマスターディスティラーであるエディー・ラッセル氏と、その息子ブルース・ラッセル氏を編集長がインタビュー。またフィンランドで自国ライ麦にこだわったウイスキーを造るキュロ蒸留所のミイカ氏にも話を聞いた。
【特集】
ウイスキーフェスティバル2023 in TOKYO、ウイスキーコニサークラブ新潟蒸留所ツアー、下田ウイスキーフェスリポート。
(2).ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー
世界的にも有名なウイスキー評論家で、ウイスキー文化研究所代表 土屋守先生の著書「ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー」です。
ウイスキーの基礎知識、日本へのウイスキーの伝来、ジャパニーズウイスキーの誕生、広告戦略とジャパニーズウイスキーの盛隆、そして、現在のクラフト蒸留所の勃興まで。日本のウイスキーの事が非常にわかりやすくまとめられた一冊。
(3).ウイスキーと私(竹鶴政孝)
日本でのウイスキー醸造に人生を捧げた、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝。ただひたすらにウイスキーを愛した男が自らを語った自伝の改訂復刻版。若き日、単身スコットランドに留学し、幾多の苦難を乗り越えてジャパニーズ・ウイスキーを完成させるまでの日々や、伴侶となるリタのことなどが鮮やかに描かれる。
(4).新世代蒸留所からの挑戦状
2019年発売。世界に空前のウイスキーブームが到来しているいま、クラフト蒸留所の経営者たちは何を考え、どんな想いでウイスキー造りに挑んだのか。日本でクラフト蒸留所が誕生するきっかけを作った、イチローズ・モルトで有名なベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏をはじめとする、13人のクラフト蒸留所の経営者たちが世界に挑む姿を綴った1冊。
(5).ウイスキーライジング
2016年にアメリカで出版された『Whisky Risng』の日本語版であり、内容も大幅にアップデート。ジャパニーズ・ウイスキーの歴史が詳細に記述されているだけでなく、近年、創設がつづくクラフト蒸溜所を含む、日本の全蒸溜所に関するデータも掲載。そのほかにも、今まで発売された伝説的なボトルの解説や、ジャパニーズ・ウイスキーが飲めるバーなども掲載されています。
(6).ウイスキーと風の味
1969年にニッカウヰスキーに入社した、三代目マスターブレンダーの佐藤茂夫氏の著書。
『ピュアモルト』『ブラックニッカクリア』『フロム・ザ・バレル』の生みの親でもあり、なかでも『シングルモルト余市1987』はウイスキーの国際的コンペティションWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)にて「ワールド・ベスト・シングルモルト」を受賞。
竹鶴政孝、竹鶴威の意志を引き継いだブレンダー界のレジェンドが語る今昔。