〈8月25日追記〉
これまでの余市・宮城峡の限定品は2017年モスカルウッドフィニッシュ、2018年マンサニーリャウッドフィニッシュ、2020年アップルブランデーウッドフィニッシュのように「ウッドフィニッシュの樽種の違い」でそれぞれに個性を与えてきました。
今回の限定品は「原材料の違い」によって、シングルモルト余市・宮城峡の魅力を活かしつつ、隠れていた意外な個性を引き出したウイスキーです。
2024年のニッカウヰスキー創業90周年に向け、NIKKA DISCOVERYシリーズ”第1弾としてのリリース。2022年に第2弾、2023年に第3弾が予定されているようです。次回はどのようなDISCOVERYを見せてくれるのか期待してしまいますね。シングルモルト余市ノンピーテッド
ラベルはやわらかな味わいを想起させるペールブルーと上質な白を採用。ボトルは透明瓶を使用することで、隠れていた意外な一面を表現した。
【テイスティングコメント】
香り 華やかでフルーティ。ほのかなミルキーさや蜂蜜の甘さ、ココナッツの香ばしい香り。 味わい ベリーや洋ナシ、りんごを思わせる甘酸っぱさと、しっかりとしたモルトのコク。やさしくやわらかな甘さが全体を包み込む。 余韻 キャラメルのような滑らかでコクのある余韻がほのかなビターを伴い穏やかに続く。 シングルモルト宮城峡ピーテッド
ラベルはピートをイメージしたアースカラーと上質な白を採用。ボトルは透明瓶を使用することで、隠れていた意外な一面を表現した。
【テイスティングコメント】
香り 蜂蜜や熟した果実を思わせる濃厚な甘さと樽由来のウッディさ、バニラやシナモンがピート香と調和した香り。 味わい レーズン、ドライチェリーの甘さ、軽快だがしっかりしたピート感。 余韻 ビターチョコのようなコクのある余韻と、きりっとしたピートの余韻が長く続く。
アサヒビール株式会社の公式HPにて「シングルモルト余市ノンピーテッド・シングルモルト宮城峡ピーテッド」の発売情報がリリースされました。
発売日は9月28日。公式では抽選販売などについては特に言及されておりません。
それぞれ限定10,000本で定価22,000円と昨今のジャパニーズウイスキーのリリースはほぼノンヴィンテージものばかりですが、それにしてもやや高い印象でしょうか。ただ間違いなく入手困難なボトルになることは想像できます。公式でも「業務用を中心とした展開」と記していることもあり、一般の方が入手するのはなかなか難しそうです。
気になる味わいは今までの印象とは異なるようで、余市なのに「ノンピーテッド」、宮城峡は「ピーテッド」でのリリースとなります。まさか余市でノンピーテッド麦芽での仕込みをしていたなんて、、、宮城峡も然り。それぞれがどのような味わいになっているのかとても気になりますね。
今までの「余市」・「宮城峡」の印象(香り・味わいなど) | |
余市 | ピート、スモーク、ソルティ、麦芽香、力強い、重厚 |
宮城峡 | ノンピート、フルーティ、スィート、まろやか、甘く華やか |
今回発売される2商品は、2024年に創業90周年を迎えるニッカウヰスキーが保有する多様な原酒や、原料や発酵などの製造工程によるウイスキーのつくり分けの歴史が生み出す奥深さに焦点を当てた“NIKKA DISCOVERYシリーズ”第1弾商品です。ウイスキーの多様性や奥深さ、意外性を「発見する」シリーズとして展開。業務用を中心とした展開を予定。海外でも欧州を中心とした販売を予定。通年商品のスモーク瓶とは異なり透明瓶を採用し、通年商品では隠されていた“ウイスキーの個性”が現れることを表現。
1.シングルモルト余市ノンピーテッド
■『シングルモルト余市 ノンピーテッド』
力強く厚みのある味わいの『シングルモルト余市』を、あえてノンピーテッドモルト原酒だけを使用してつくりました。余市モルトの特徴である石炭直火蒸溜による力強さはそのままに、ピートの奥に隠れていた余市モルトのやわらかな果実味、なめらかでコクのある甘さが姿を現します。ベリーや洋ナシ、りんごを思わせる甘酸っぱさと、しっかりとしたモルトのコクが調和した味わいを実現しました。華やかでフルーティーな香りとキャラメルのような滑らかでコクのある余韻が心地よく続きます。余市ならではの味わいとともに、ノンピーテッドモルト原酒だけでつくることによってもたらされる香味特徴をバランスよく感じることのできるアルコール分47%を採用しました。
引用:ニュースリリース|アサヒビール
製品名 | シングルモルト余市ノンピーテッド |
---|---|
酒 別 | シングルモルトウイスキー |
原材料 | モルト |
樽 種 | ー |
詰本数 | 10,000本限定 |
度 数 | 47% |
価 格 | 希望小売価格:22,000円(税込) |
製造所 | 余市蒸溜所 |
製造者 | ニッカウヰスキー株式会社 |
2.シングルモルト宮城峡ピーテッド
■『シングルモルト宮城峡 ピーテッド』
華やかで軽やかな味わいの『シングルモルト宮城峡』を、あえてピーテッドモルト原酒だけを使用してつくりました。宮城峡モルトの特徴であるエレガントな華やかさはそのままに、ピートと調和した宮城峡モルトの芳醇な甘み、しっかりとしたボディ感が姿を現します。レーズンやドライチェリーの甘さ、軽快だがしっかりとしたピート感を味わえます。宮城峡ならではの味わいとともに、ピーテッドモルト原酒だけでつくることによってもたらされる香味特徴をバランスよく感じることのできるアルコール分48%を採用しました。
引用:ニュースリリース|アサヒビール
製品名 | シングルモルト宮城峡ピーテッド |
---|---|
酒 別 | シングルモルトウイスキー |
原材料 | モルト |
樽 種 | ー |
詰本数 | 10,000本限定 |
度 数 | 48% |
価 格 | 希望小売価格:22,000円(税込) |
製造所 | 宮城峡蒸溜所 |
製造者 | ニッカウヰスキー株式会社 |
3.余市蒸溜所について
日本のスコットランドと称されている北海道の「余市蒸溜所」。マッサンこと竹鶴政孝により前身の大日本果汁株式会社が1934年に設立。 竹鶴政孝はスコットランドに似た冷涼で湿潤な気候、豊かな水源と凛と澄んだ空気がそろった場所こそが理想のウイスキーづくりには欠かせないと考え、様々な候補地の中から小樽の西、積丹半島の付根に位置する余市を選びました。 竹鶴政孝が最初の蒸留所で目指したのは、重厚で力強いモルトウイスキーづくりでした。本場スコットランドの蒸留所で学んだウイスキーづくりの手法を、一切の妥協を許さずそのまま再現することにこだわりました。そのこだわりの象徴が「ストレートヘッド型ポットスチル」と「石炭直火蒸留」です。それにより重厚で香ばしいヘビーピートの原酒が出来上がり、ピートの香りとソルティさを感じる個性的なシングルモルトが出来上がります。 竹鶴自らが学んだロングモーン蒸留所の方式にならい、この蒸留方法を採用。本物のウイスキーをつくるために必要なことであれば、たとえ非効率的であっても守り抜いていく。そんなニッカウヰスキーの原点とも言える情熱と竹鶴政孝の夢への思いが今もなお受け継がれています。
余市蒸溜所公式HPはこちら
4.宮城峡蒸溜所について
北海道・余市で第一の蒸留所をスタートさせてから約30年。 「異なる蒸留所で生まれた複数の原酒をブレンドすることで、ウイスキーはより味わい深く豊かになる」という信念を抱く竹鶴政孝にとって、第二の蒸留所はどうしても必要でした。 竹鶴が選んだ地は仙台・宮城峡。広瀬川と新川というふたつの清流に恵まれた緑豊かな峡谷。竹鶴は初めてこの地を訪れた時、新川の清流で持っていたブラックニッカを割って飲み、味わいを確認。その場で蒸留所建設を決定したと言われています。 宮城峡蒸溜所が誇るのが「カフェ式連続式蒸留機」。 導入当時、すでに旧式とされていた蒸留機です。旧式だからこそ雑味となる成分が残りやすいのですが、技術によってそれを原料本来の香りや甘みに変えることができるため、竹鶴はあえてこの旧式蒸留機を選びました。宮城峡蒸溜所では、今なお竹鶴の情熱を受け継ぐ人々がウイスキーのおいしさを求め、さまざまな試みを続けています。
画像出展:宮城峡蒸溜所|NIKKA WHISKY
5.余市・宮城峡の限定シリーズのラインナップ
5-1 余市アップルブランデーウッドフィニッシュ
力強く厚みのある味わいの『シングルモルト余市』を、アップルブランデーの樽でさらに熟成させることで、芳醇な甘さとピートのコクが調和した味わいを実現しました。りんごのコンポートのような甘い芳香とモルティで豊かな香り、アップルパイやフルーツクッキーを思わせる焼き菓子のような香ばしくスイートな味わいで、ほのかなピートと麦の甘さが心地よく続きます。
5-2 宮城峡アップルブランデーウッドフィニッシュ
華やかで軽やかな味わいの『シングルモルト宮城峡』を、アップルブランデーの樽でさらに熟成させることで、爽やかな甘さとやわらかな渋みが調和した味わいを実現しました。落ち着いたウッディな樽の香りと甘く華やかな香り、フレッシュなりんごのみずみずしさ、フルーツケーキを思わせる甘酸っぱい味わいで、樽のほろ苦さと甘さが、シナモンのようなスパイシーさとともにゆっくり続きます。
5-3 余市マンサニーリャウッドフィニッシュ
力強く厚みのある味わいの「シングルモルト余市」を、マンサニーリャ樽でさらに熟成させ、フルーティーな甘さとコク、香ばしいピートが調和した味わいが特長です。ピーチやパパイヤのようなトロピカルフルーツの香りと、ショートケーキを思わせる甘酸っぱい香りに加え、焚火を思わせるようなピートの余韻をお楽しみいただけます。
5-4 宮城峡マンサニーリャウッドフィニッシュ
華やかで軽やかな味わいの「シングルモルト宮城峡」を、マンサニーリャ樽でさらに熟成させ、まろやかな甘さとやわらかな苦みが調和した味わいが特長です。ドライフルーツや、ココナッツ、ミルクチョコレートを思わせる甘い香りに加え、樽由来の少しほろ苦い余韻をお楽しみいただけます。
最後に:ジャパニーズウイスキーのおすすめ書籍
世界的なトレンドを巻き起こしている「ジャパニーズウイスキー」の事をもっと知りたい、もっと勉強したいという方は、是非こちらの書籍をおすすめいたします。
(1).Whisky Galore(ウイスキーガロア)Vol.47 2024年12月号
【巻頭特集】
「新アイリッシュ・ルネッサンス[第2弾]」
【第2特集】
「日本のクラフト蒸留所最前線」
今号では北海道の厚岸と苫小牧、そしてクラフト蒸留所に麦芽を供給する中標津のクラフトモルティング社についても紹介します。さらに三島のウォータードラゴンと、ZEMONⅡが稼働する飛騨高山蒸溜所も再訪。
【連続ロングインタビュー】
第3回 ガイアフロー静岡蒸溜所 中村大航氏
【特別リポート】
遊佐蒸溜所の挑戦
第二期リニューアルが完了したサントリー白州蒸溜所
(2).ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー
世界的にも有名なウイスキー評論家で、ウイスキー文化研究所代表 土屋守先生の著書「ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー」です。
ウイスキーの基礎知識、日本へのウイスキーの伝来、ジャパニーズウイスキーの誕生、広告戦略とジャパニーズウイスキーの盛隆、そして、現在のクラフト蒸留所の勃興まで。日本のウイスキーの事が非常にわかりやすくまとめられた一冊。
(3).ウイスキーと私(竹鶴政孝)
日本でのウイスキー醸造に人生を捧げた、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝。ただひたすらにウイスキーを愛した男が自らを語った自伝の改訂復刻版。若き日、単身スコットランドに留学し、幾多の苦難を乗り越えてジャパニーズ・ウイスキーを完成させるまでの日々や、伴侶となるリタのことなどが鮮やかに描かれる。
(4).新世代蒸留所からの挑戦状
2019年発売。世界に空前のウイスキーブームが到来しているいま、クラフト蒸留所の経営者たちは何を考え、どんな想いでウイスキー造りに挑んだのか。日本でクラフト蒸留所が誕生するきっかけを作った、イチローズ・モルトで有名なベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏をはじめとする、13人のクラフト蒸留所の経営者たちが世界に挑む姿を綴った1冊。
(5).ウイスキーライジング
2016年にアメリカで出版された『Whisky Risng』の日本語版であり、内容も大幅にアップデート。ジャパニーズ・ウイスキーの歴史が詳細に記述されているだけでなく、近年、創設がつづくクラフト蒸溜所を含む、日本の全蒸溜所に関するデータも掲載。そのほかにも、今まで発売された伝説的なボトルの解説や、ジャパニーズ・ウイスキーが飲めるバーなども掲載されています。
(6).ウイスキーと風の味
1969年にニッカウヰスキーに入社した、三代目マスターブレンダーの佐藤茂夫氏の著書。
『ピュアモルト』『ブラックニッカクリア』『フロム・ザ・バレル』の生みの親でもあり、なかでも『シングルモルト余市1987』はウイスキーの国際的コンペティションWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)にて「ワールド・ベスト・シングルモルト」を受賞。
竹鶴政孝、竹鶴威の意志を引き継いだブレンダー界のレジェンドが語る今昔。