2021年の酒類輸出金額は約1,147億円(前年比161.4%)に上り、10年連続で過去最高を更新。
ウイスキーの輸出金額は約462億円(前年比170.2%)となり、清酒(前年比166.4%)を更に引き離す勢いで増加。その差は約60億円となった。
ウイスキーの輸出数量前年比136.0%。酒類全般の中で「数量と金額の乖離」が最も大きいカテゴリーであり、年々高価格な商品がより多く輸出されている傾向にあることを意味します。
1.2021年度 酒類品目別輸出金額
品目 | 輸出金額(百万円) |
前年比(%) |
ウイスキー | 46,152 | 170.2 |
清酒 | 40,178 |
166.4 |
リキュール | 12,069 | 140.0 |
ビール | 7,361 | 127.5 |
ジン・ウォッカ | 3,392 | 168.0 |
焼酎 | 1,746 | 145.4 |
ワイン | 687 | 197.6 |
その他 |
3,083 | 170.2 |
合計 | 114,688 | 161.4 |
ウイスキーの輸出の勢いは止まらず、単月で見ても2020年6月から19カ月連続で前年同月比を上回る結果となっております。
2.2021年度 酒類輸出先(国別)金額
順位 | 昨年順位 | 国 |
輸出金額(百万円) |
前年比(%) |
1位 |
1位→ |
中国 |
32,025 | 185.2 |
2位 | 2位→ | アメリカ | 23,811 | 172.0 |
3位 | 3位→ | 香港 | 14,758 | 148.0 |
4位 | 4位→ | 台湾 | 9,307 | 142.3 |
5位 | 6位↑ | フランス | 5,748 | 180.5 |
6位 |
5位↓ |
シンガポール | 5,067 | 132.3 |
7位 | 8位↑ | オーストラリア | 4,193 | 160.2 |
8位 | 7位↓ | オランダ | 3,878 | 126.6 |
9位 |
9位→ |
韓国 | 2,763 | 144.0 |
10位 | 16位↑ | マカオ | 2,030 | 1267.6 |
上位4か国に順位の変動はありませんが、上位10か国すべてが前年比大幅増の結果となりました。
中国が前年比185.2%となり、更にアメリカを含む下位国を引き離す展開となりました。
韓国は2021年に入ってから昨年まで続いていた「日本製品の不買運動」の状況が変化し、韓国国内で「反日疲れ」がキーワードになるほどに。日本製のビールなどの輸入は回復傾向に変化していきました。結果的に反日不買運動は熱しやすく冷めやすい一時的なトレンドだったとの見方や、過激な不買運動で韓国で企業活動を行うのはリスクが高いと判断しているものとの見方に変わりました。
3.2021年度 ウイスキー輸出先金額
順位 | 昨年順位 | 国 | 輸出金額(百万円) | 前年比(%) |
1位 | 1位→ | 中国 | 17,007 | 214.1 |
2位 | 2位→ | アメリカ | 10,360 | 163.0 |
3位 | 3位→ | フランス | 4,596 | 166.0 |
4位 | 4位→ | オランダ | 3,041 | 128.8 |
5位 | 9位↑ | 香港 | 1,791 | 266.5 |
6位 | 5位↓ | シンガポール | 1,745 | 100.5 |
7位 | 6位↓ | 台湾 | 1,536 | 150.0 |
8位 | 圏外↑ | マカオ | 1,304 | ー |
9位 | 8位↓ | オーストラリア | 1,187 | 163.5 |
10位 | 圏外↑ | ベトナム | 563 | ー |
4.考察とまとめ
昨年に引き続き輸出金額はウイスキーがトップに。
ウイスキー輸出先上位10か国すべて前年比増となりました。
また、中国へのウイスキー輸出金額は年々大幅増となっていて、2018年1,171百万円(前年比274.2%)、2019年2,528百万円(前年比215.9%)、2020年7,942百万円(前年比314.2%)となっており、中国の大躍進が止まらない状況が続いています。
今年の17,007百万円は2018年度と比較すると1452.3%増と驚異的な伸びをみせています。
中国でのジャパニーズウイスキー人気の理由としては、日本人の「ものづくりの伝統」や「匠の精神を持ったこだわり」が高く評価されていて、スコッチとくらべて「繊細で清らか」な特徴が中国人にマッチしている。
また、中国国内でのジャパニーズウイスキーの転売価格高騰も理由の一つで2017年にウイスキー輸入関税が10%から5%へ減税となったのも要因になってます。
5.国内のウイスキー動向
2021年2月16日、遂に「ジャパニーズウイスキーの定義」が日本洋酒酒造組合の自主基準として制定されました。
今後のジャパニーズウイスキーの価値・信頼性を守り、更なる発展に向け準備ができたと言えるでしょう。
詳しい内容についてはこちら↓↓↓
2021年のリリースされた代表的なウイスキーといえばサントリーの「山崎リミテッドエディション2021」、「響ブロッサムハーモニー」、「白州ピーテッド2021」、「白州スパニッシュオーク2021」。
秩父蒸溜所とマルス信州蒸溜所の原酒交換によるコラボウイスキーや、厚岸からは二十四節季シリーズ第2弾~第5弾までリリース。
本坊酒造・マルスウイスキーからは30年熟成の長熟ウイスキー「マルスモルト ル パピヨン 小松孝英」なども話題となりました。
【2021年にリリースされた主なジャパニーズウイスキー】
メーカー・蒸溜所 | 銘柄 | 発売日 |
サントリー |
・山崎リミテッドエディション2021 |
5月 |
ニッカ | 9月 | |
本坊酒造 |
・駒ヶ岳×秩父 MaltDuo |
4月 |
ベンチャーウイスキー 秩父蒸溜所 |
4月 |
|
厚岸蒸溜所 |
・厚岸ブレンデッドウイスキー雨水 |
2月 |
ガイアフロー静岡蒸溜所 |
6月 |
|
嘉之助蒸溜所 |
6月 |
|
三郎丸蒸留所 |
・FAR EAST OF PEAT FIRST BATCH |
3月 |
長濱蒸溜所 |
・INAZUMA シナジーブレンド |
3月 |
安積蒸溜所 | ・YAMAZAKURA 安積ブレンデッドモルト | 11月 |
桜尾蒸留所 | 7月 | |
ヘリオス酒造 | ・許田シングルカスク2021 | 12月 |
【2021年に操業開始した新たなクラフト蒸溜所】
八海醸造・ニセコ蒸溜所
東亜酒造・羽生蒸溜所(20年ぶりに再開)
新潟小規模蒸溜所・新潟亀田蒸溜所
アクサスホールディングス・六甲山蒸溜所
株式会社山鹿蒸溜所・山鹿蒸溜所
など、年々蒸溜所が増えている背景には、ジャパニーズウイスキーの国内外での爆発的人気があることは間違いなさそうだ。
最後に:ジャパニーズウイスキーのおすすめ書籍
世界的なトレンドを巻き起こしている「ジャパニーズウイスキー」の事をもっと知りたい、もっと勉強したいという方は、是非こちらの書籍をおすすめいたします。
(1).Whisky Galore(ウイスキーガロア)Vol.47 2024年12月号
【巻頭特集】
「新アイリッシュ・ルネッサンス[第2弾]」
【第2特集】
「日本のクラフト蒸留所最前線」
今号では北海道の厚岸と苫小牧、そしてクラフト蒸留所に麦芽を供給する中標津のクラフトモルティング社についても紹介します。さらに三島のウォータードラゴンと、ZEMONⅡが稼働する飛騨高山蒸溜所も再訪。
【連続ロングインタビュー】
第3回 ガイアフロー静岡蒸溜所 中村大航氏
【特別リポート】
遊佐蒸溜所の挑戦
第二期リニューアルが完了したサントリー白州蒸溜所
(2).ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー
世界的にも有名なウイスキー評論家で、ウイスキー文化研究所代表 土屋守先生の著書「ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー」です。
ウイスキーの基礎知識、日本へのウイスキーの伝来、ジャパニーズウイスキーの誕生、広告戦略とジャパニーズウイスキーの盛隆、そして、現在のクラフト蒸留所の勃興まで。日本のウイスキーの事が非常にわかりやすくまとめられた一冊。
(3).ウイスキーと私(竹鶴政孝)
日本でのウイスキー醸造に人生を捧げた、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝。ただひたすらにウイスキーを愛した男が自らを語った自伝の改訂復刻版。若き日、単身スコットランドに留学し、幾多の苦難を乗り越えてジャパニーズ・ウイスキーを完成させるまでの日々や、伴侶となるリタのことなどが鮮やかに描かれる。
(4).新世代蒸留所からの挑戦状
2019年発売。世界に空前のウイスキーブームが到来しているいま、クラフト蒸留所の経営者たちは何を考え、どんな想いでウイスキー造りに挑んだのか。日本でクラフト蒸留所が誕生するきっかけを作った、イチローズ・モルトで有名なベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏をはじめとする、13人のクラフト蒸留所の経営者たちが世界に挑む姿を綴った1冊。
(5).ウイスキーライジング
2016年にアメリカで出版された『Whisky Risng』の日本語版であり、内容も大幅にアップデート。ジャパニーズ・ウイスキーの歴史が詳細に記述されているだけでなく、近年、創設がつづくクラフト蒸溜所を含む、日本の全蒸溜所に関するデータも掲載。そのほかにも、今まで発売された伝説的なボトルの解説や、ジャパニーズ・ウイスキーが飲めるバーなども掲載されています。
(6).ウイスキーと風の味
1969年にニッカウヰスキーに入社した、三代目マスターブレンダーの佐藤茂夫氏の著書。
『ピュアモルト』『ブラックニッカクリア』『フロム・ザ・バレル』の生みの親でもあり、なかでも『シングルモルト余市1987』はウイスキーの国際的コンペティションWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)にて「ワールド・ベスト・シングルモルト」を受賞。
竹鶴政孝、竹鶴威の意志を引き継いだブレンダー界のレジェンドが語る今昔。