2024年2月1日、世界各国からエントリーされたウイスキーの中からカテゴリーごとの最高賞を決めるウイスキーのコンペティション「World Whiskies Awards(ワールド・ウイスキー・アワード)」の2024年度の各国の予選の結果が発表されました。
ジャパニーズウイスキーでは、14銘柄がカテゴリウィナーを受賞し、この後に世界ラウンドへ進出となります。
本記事では、今回は出品された日本メーカーのウイスキーのうち、100%日本製造のウイスキーであるカテゴリ【Japan】のものに限定し、カテゴリ毎に整理して紹介して参ります。
※「New Make & Young Spirit」は今回は割愛させて頂きます。
※受賞タイトル「Bronze」は商品名のみ紹介とさせて頂きます。
- 1.ワールド・ウイスキー・アワードとは?
- 2.審査の流れ
- 3.日本の第1ラウンドの結果
- 3-1.Blended(ブレンデッド)
- 3-2.Blended Limited Release(ブレンデッド 限定発売)
- 3-3.Blended Malt(ブレンデッドモルト)
- 3-4.Single Cask Single Malt – No Age Statement(シングルカスクシングルモルト – ヴィンテージ無し)
- 3-5.Single Cask Single Malt – 12 Years & Under(シングルカスクシングルモルト – 12年以下)
- 3-6.Single Malt – No Age Statement(シングルモルト – ヴィンテージ無し)
- 3-7.Single Malt – 12 Years & Under(シングルモルト – 12年以下)
- 3-8.Small Batch Single Malt – No Age Statement(スモールバッチシングルモルト – ビンテージ無し)
- 3-9.Small Batch Single Malt 12 Years & Under(スモールバッチシングルモルト12年以下)
- 3-10.Grain(グレーン)
- 3-10.Pot Still(ポットスティル)
- 4.考察
1.ワールド・ウイスキー・アワードとは?
ワールド・ウイスキー・アワードは、国際的に認められたあらゆるスタイルのウイスキーの中から、最も優れたものを選出する世界的な賞です。酒類専門家のための世界No.1オンラインリソースであるTheDrinksReport.comが主催するワールド・ウイスキー・アワードは、世界最高のウイスキーを選び、表彰し、世界中の消費者および業界関係者に向けてプロモーションを行うものです。
2.審査の流れ
この審査は、Taste(味)とDesign(デザイン)の2つのジャンルに分かれていますが、ここではTaste(味)の審査に関して説明していきます。
2-1.第1ラウンド
各ウイスキーをそれぞれのスタイルでテイスティングし、スタイルの勝者を特定・選出します。ワールド・ウイスキー・アワードの審査員には、国際的に活躍するジャーナリスト、酒類小売業者、業界の専門家などが名を連ねています。第一ラウンドの審査は、出品国それぞれで行われているようです。
2-2.第2ラウンド
スタイル賞を受賞したウイスキー同士をテイスティングし、各カテゴリーの「ベスト」ウイスキーを決定します。
2-3.第3ラウンド
各カテゴリーの「ベスト」ウイスキーは、最後にもう一度テイスティングを行い、「ワールド・ベスト」ウイスキーを決定します。この段階での審査員には、第1ラウンドと第2ラウンドの審査員に加え、第一線の蒸溜所経営者やウイスキー業界の専門家が名を連ねます。
3.日本の第1ラウンドの結果
それでは、日本より出品されたウイスキーの第1ラウンドの結果をカテゴリ毎に見ていきたいと思います。このリストのオリジナルの情報はこちら。
尚、ボリュームの関係上、Blonze受賞ウイスキーは商品名のみの紹介とさせて頂きます。
3-1.Blended(ブレンデッド)
ブレンデッドウイスキーとは、少なくとも1種類のシングルモルトウイスキーと1種類のシングルグレーンウイスキーをヴァッティングして製造されたウイスキーです。ブレンデッドモルトに地理的表示(例:アイリッシュブレンデッドモルト)がある場合、そのブレンドはラベルに記載されている国でヴァッティングされ、瓶詰めされたものでなければなりません。さらに、構成ウイスキーの大部分(50%以上)が、ラベルに記載されている国で蒸留・熟成されたものでなければ、エントリーの資格はありません。
【Category Winner】シングルブレンデッド ジャパニーズウイスキー 富士
【Silver】日の丸ウイスキー KOME
3-2.Blended Limited Release(ブレンデッド 限定発売)
ブレンデッドウイスキーの発売で3600本以下の限定生産のもの。
【Category Winner】イチローズモルト&グレーン リミテッドエディション 2024
写真は2023年のバージョンなので、今回受賞したのは今年(2024年)にリリースされる商品と思われます。
【Silver】日の丸ウイスキー The 1st Barrels
3-3.Blended Malt(ブレンデッドモルト)
ブレンデッドモルトウイスキーは、異なる蒸溜所で蒸溜されたシングルモルトウイスキーを組み合わせて製造され、パッケージでは「ヴァッテッドモルト」または「ピュアモルト」と表記されることもあります。ブレンデッドモルトに地理的表示(例:アイリッシュブレンデッドモルト)がある場合、そのブレンドはラベルに記載されている国でヴァッティングされ、瓶詰めされたものでなければなりません。さらに、構成ウイスキーの大部分(50%以上)が、ラベルに記載されている国で蒸留・熟成されたものでなければ、エントリーの資格はありません。
【Category Winner】Mars The Y.A. #02
【Silver】ニッカ 竹鶴 ピュアモルト
【Bronze】イチローズモルト ダブルディスティラリーズ
3-4.Single Cask Single Malt – No Age Statement(シングルカスクシングルモルト – ヴィンテージ無し)
シングルカスクとは、容量750リットル以下の木製樽を指します。シングルカスク・シングルモルト・ウイスキーの認定には、水(希釈用)および/スピリッツ・キャラメル以外のいかなる物質も添加せずに、排出およびボトリングされたことが条件となります。シングルカスク・シングルモルトの製造プロセスにおいて、2つ以上の樽をヴァッティングすることは一切認められていません。
【Category Winner】YUZA Medium Peated 2023 Spring
三越伊勢丹限定で発売された遊佐蒸溜所のシングルカスク。
【Silver】 シングルモルト嘉之助 蒸溜所限定 #008
3-5.Single Cask Single Malt – 12 Years & Under(シングルカスクシングルモルト – 12年以下)
【Category Winner】シングルカスク津貫 AGED 6 YEARS Cask No.T121
「12 Years & Under」のスタイルでカテゴリウィナーを受賞。
現時点では、メーカーHP等での商品情報が確認出来ず、今後発売予定ではないかと思われます。
【Silver】 三郎丸 Ⅰ THE MAGICIAN For 一口樽オーナー 2018
2018年に三郎丸蒸留所の一口樽オーナーに応募された樽オーナー向けにボトリングされたウイスキー。
現時点で、メーカーHP等での商品詳細は公表されておりません。
【Bronze】シングルモルト三郎丸Ⅱ 70周年記念 スパニッシュオーク
【Bronze】シングルモルト三郎丸2019 3年 T&T TOYAMA COLLECTION
3-6.Single Malt – No Age Statement(シングルモルト – ヴィンテージ無し)
シングルモルト・ウイスキーは、麦芽100%、銅製のポットスチルを使って最低2回蒸留しなければなりません。複数の樽を使用することもできますが、単一の蒸留所の製品でアルコール度数40%以上、木製の樽で最低2年間熟成されている必要があります。シングルモルトウイスキーに地理的表示(アイリッシュシングルモルトウイスキーなど)がある場合は、ラベルに記載されている国で蒸溜・熟成されたものでなければなりません。
【Category Winner】イチローズ モルト秩父 レッドワインカスク 2023
【Silver】シングルモルト津貫2024エディション
【Silver】シングルモルト余市 グランデ
【Silver】YUZA シングルモルト 2023
【Bronze】シングルモルト江井ヶ嶋 QUARTET(カルテット)
【Bronze】シングルモルト嘉之助
【Bronze】シングルモルト嘉之助 2023 エディション
【Bronze】厚岸シングルモルト啓蟄
【Bronze】シングルモルト余市
【Bronze】YUZA Third Edition 2023
3-7.Single Malt – 12 Years & Under(シングルモルト – 12年以下)
【Category Winner】シングルモルト余市10年
【Silver】シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 Heavily Peated
【Bronze】日の丸ウイスキー シェリーカスク
3-8.Small Batch Single Malt – No Age Statement(スモールバッチシングルモルト – ビンテージ無し)
スモールバッチシングルモルトウイスキーとは、100個以下の樽を使用して製造されたシングルモルトウイスキーと定義されます。
【Category Winner】 シングルモルト静岡 ポットスティルW 純日本大麦 初版
【Silver】シングルモルト津貫 7th Anniversary ローカルバーレイ
【Bronze】シングルモルト戸河内 Misty Stillman’s Selection
【Bronze】YUZA オロロソ・シェリーカスク 2023
3-9.Small Batch Single Malt 12 Years & Under(スモールバッチシングルモルト12年以下)
【Category Winner】 シングルモルト駒ヶ岳 AGED 9 YEARS スモールバッチ
【Silver】シングルモルト長濱 THE SECOND BATCH
【Bronze】シングルモルト長濱 THE THIRD BATCH
【Bronze】シングルモルト三郎丸Ⅲ THE EMPRESS
【Bronze】シングルモルト三郎丸Ⅲ THE EMPRESS カスクストレングス
3-10.Grain(グレーン)
グレーン・ウイスキーは、1種類以上の穀物からなるもろみを蒸溜したもので、小麦、トウモロコシ、大麦、キビ、スペルト、米、オート麦、ライ麦などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【Category Winner】ニッカザグレーン
【Silver】ニッカカフェグレーン
【Bronze】シングルグレーンジャパニーズウイスキー富士
3-10.Pot Still(ポットスティル)
ポットスティルウイスキーは、麦芽と未発芽の大麦の両方を含むマッシュビルで製造され、銅製のポットスティルで少なくとも2回蒸留されなければならない。このカテゴリーに分類されるためには、ポットスティルウイスキーはアルコール度数40%以上で瓶詰めされ、樽で最低2年間熟成されなければならない。
【Category Winner】嘉之助 HIOKI POT STILL
4.考察
昨年秋に発表された「ドリンクス・インターナショナル(Drinks International)の「世界で最も賞賛されるウイスキー」では、サントリーが複数の銘柄でタイトルを受賞し、快挙を果たした事が記憶に新しいところですが、今回の「ワールド・ウイスキー・アワード2024」ではサントリー製品の出品は行われて無かった模様です。
大手メーカーとしては、ニッカ、キリンは順当に各カテゴリで「カテゴリウィナー」を受賞。
クラフトディスティラリーの中でもベテランの、秩父蒸溜所、マルスウイスキー(本坊酒造)は実力の高さを示すように複数カテゴリで「カテゴリウィナー」を受賞。
静岡蒸溜所、嘉之助蒸溜所、遊佐蒸溜所も「カテゴリウィナー」を受賞して世界ラウンドへ進出。
「カテゴリウィナー」の受賞は無かったものの、その他クラフトディスティラリー勢の健闘は、ジャパニーズウイスキーの品質が確実に高くなっている結果だと思います。
また、本記事には記載していませんが、「New Make & Young Spirit」部門でも19銘柄がタイトルを受賞しました。新潟亀田蒸溜所、新道蒸溜所、井川蒸溜所、山鹿蒸溜所、久住蒸留所、飛騨高山蒸溜所、丹波蒸溜所と、最近では日本国内のウイスキーフェスの常連蒸溜所の面々がしっかりと結果を出してきていると感じました。
最近では、「ジャパニーズウイスキーも淘汰の時期に入った」と言われる事がしばしばあります。まさに淘汰されて消えてゆく蒸溜所と、ますます実力を備えて成長していく蒸溜所と、今後更に二極化していくのではないかと予想されます。
世界的にも高級ウイスキーに人気が集まり、価値が上がり続けている背景にあるであろう「本物志向」に更に拍車がかかってくるのではないでしょうか。
引き続きジャパニーズウイスキーの発展を見守って参りたいと思います。