「World’s Most Admired Whisky(世界で最も称賛されるウイスキー)」で「山崎」が2位の快挙、その他「ニッカ」「響」「秩父」「白州」がランクイン。
ドリンクス・インターナショナル(Drinks International)が毎年発表する「世界で最も賞賛されるウイスキー」トップ50の第3回が、2023年10月31日に発表され、ジャパニーズウイスキーでは「山崎」を始め5ブランドが選出される快挙を成し遂げました。
尚、トップに輝いたのは、アメリカンウイスキーの「ミクターズ」。
今回は、名誉あるこのランキングに選出されたジャパニーズウイスキーを、選考基準なども併せて解説していきます。
1. ドリンクスインターナショナルとは?
1967年に創刊されたドリンクス・インターナショナルは、世界のスピリッツ、ワイン、ビール市場に特化した唯一の雑誌であり、世界の飲料バイヤーの読者に、世界の飲料業界の最新動向やトレンドに関するニュースを提供しています。毎号、興味深い特集、ビジネスニュース、市場レポート、ニュース分析などを取り上げており、ドリンクス・インターナショナルは国際的な飲料バイヤーの必読書となっています。
また、雑誌とウェブサイトに加え、ドリンクス・インターナショナルは様々なイベントを開催しています。
1-1. ドリンクス・インターナショナル・トラベル・リテール・エクセレンス・アワード
Drinks International Travel Retail Excellence Awardsは、免税店におけるドリンク部門の重要性を評価するために創設されました。ドリンクに特化した唯一のトラベル・リテール・アワードです。
9つのカテゴリーがあり、スピリッツ、ワイン、ビール、サプライヤー、バイヤーなど、ドリンク業界のあらゆる分野からのエントリーを歓迎。
毎年カンヌで開催されるTFWA世界展示会を中心に開催され、受賞者はドリンクス・インターナショナル・トラベル・リテール・パーティーで発表されます。
1-2. インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ
International Spirits Challengeは、世界的なブラインド・テイスティング・コンペティションです。著名なスピリッツ専門家からなる権威ある審査委員会が、スピリッツブランドのブラインドテイスティングを行い、各カテゴリーからベストスピリッツを選出し、メダルが授与されます。
ISCは、ブランドにとって、飲料業界全体への優れた宣伝と認知を通じて知名度を高める手段として活用されています。
2. World’s Most Admired Whisky 2023(世界で最も称賛されるウイスキー2023)
ドリンクスインターナショナルが、2020年からスタートした「World’s Most Admired Whisky(世界で最も称賛されるウイスキー)」は、今年で3回目。
結果に偏りが出ないよう、どのブランドとも関係を持たないバイヤー、バーのオーナー、ライター、教育者、その他の専門家で構成された「エリート投票アカデミー」を結成し、全体的な整合性が保たれた投票がなされてるとの事。
今回発表されたトップ50ブランドは、上位半分は世界のウイスキー主要メーカーが順位を争っている様相となっているが、後半半分は新規参入や再参入が目立ち、最新のウイスキートレンドを知る事にも役に立ちます。
2-1. 選考基準と選考方法
世界のウイスキー業界における、バイヤー、バーのオーナー、ライター、教育者、その他の専門家にで”最も尊敬するウイスキー・ブランド”を順に挙げてもらい投票。
投票で、1位を獲得したブランドには10ポイントが与えられ、2位には9ポイント、3位には8ポイントといった具合で最終的なランキングを決定するためにポイントが集計されました。
投票者 | バイヤー、バーのオーナー、ライター、教育者、その他の専門家 |
投票時期 | 8月~9月 |
投票基準 | – そのブランドのウイスキーの品質と一貫性 – ブランド・ポートフォリオ全体の価格対品質比 – ブランド力とマーケティング力 |
投票の点数 | 1位:10ポイント、2位:9ポイント、3位:8ポイント |
2-2. トップは「ミクターズ」
18世紀半ばにアメリカのペンシルベニア州シェーファーズタウン設立されたウイスキー蒸溜所。1989年に需要不足で一度破産したが、1990年代にケンタッキー州で生まれ変わったミクターズは隆盛を極め、世界の酒類業界において尊敬されるブランドのヒエラルキーに登りつめた。
2-3. 世界各国のウイスキー蒸溜所がランクイン
先程記載した通り、今回のランキングの上位半分は、主要メーカーが殆どですが、特に後半半分は新規参入や再参入が多くランクインしました。特に、スコットランド、アイルランド、アメリカなどの伝統的なウイスキー製造国での新興蒸溜所や、近年新たにウイスキー製造を始めた国々のランクインが多く見受けられました。
12位の「METHOD & MADNESS(アイルランド)」、21位の「NC’NEAN(スコットランド)」、24位の「KYRÖ(フィンランド)」、34位の「THE OXFORD ARTISAN DISTILLERY(イギリス)」、40位の「STAUNING(DENMARK)」、43位の「NAKED MALT(スコットランド)、44位の「RAASAY(スコットランド)」、45位の「AMRUT(インド)」、48位の「WATERFORD(アイルランド)」
3. ジャパニーズウイスキー5ブランドの快挙
では、本題のジャパニーズウイスキーのランキングを見ていきましょう。
なんと、日本から5ブランドがトップ50にランクインという快挙を果たしました。「山崎」は世界2位という素晴らしい結果となり、先日の「インターナショナルスピリッツチャレンジ」での「山崎25年」の世界最高賞に続き嬉しいニュースとなりました。
3-1. 2位「山崎」
堂々の2位に輝いたのは、今年創業100周年を迎える「山崎蒸溜所」
今年は、国内外の様々なメディアやコンペティション等で、改めて「山崎」が高く評価されています。
山崎蒸溜所はサントリーのフラッグシップ蒸溜所で、マスターブレンダーの福與 伸二氏が率いる。
「山崎」は、第1回目のランキングで第1位を獲得し、その後一度もトップ3入りを逃した事はない。現在、山崎はジャパニーズ・ウイスキーのトップブランドとしてハットトリックを達成している。
ジャパニーズ・ウイスキー業界で最も賞賛されるウイスキーとなった。
ブランドオーナーであるサントリーは2023年に創業100周年を迎え、その記念事業の一環として「山崎ミズナラ18年」を発売した。
毎年発売されるミズナラ樽熟成酒は希少価値の高いウイスキーのひとつであり、ポートフォリオのトップエンドに位置する超高級品である。
山崎は日本初のモルト蒸溜所で、20世紀初頭に鳥井信治郎によって設立された。現在ではサントリーのフラッグシップ蒸溜所であり、業界で最も尊敬されるメンバーの一人で、インターナショナル・スピリッツ・チャレンジの審査委員会の主要人物であるマスターブレンダーの福與伸二氏が率いる。福與氏は、この名誉ある役職に就く3人目の人物である。サントリーの名声を維持することに大きな献身を示している。
3-2. 7位「ニッカ」
昨年からワンランクアップし、「ニッカ」が7位にランクイン。
日本では、「余市」や「宮城峡」、「竹鶴」が有名ですが、ニッカのウイスキーの中で世界的に人気なのが実は「フロムザバレル」なのです。
ニッカ・ウイスキー・フロム・ザ・バレルは、「The World’s
50 Best Bars」のほとんどに置かれている。ニッカは昨年に引き続き順位を上げ、現在トップフィニッシュを目指している。1918年、竹鶴政孝がスコットランドに渡り、グラスゴー大学に入学。1920年に帰国した竹鶴政孝は、鳥井信治郎に雇われて山崎蒸溜所の建設に携わった後、北海道余市に自らの蒸溜所を設立し、1940年にニッカの最初の商品を発売した。今日、ニッカは世界で最も尊敬されるウイスキーのひとつである。そのニッカ・ウイスキー・フロム・ザ・バレルは、「世界のベスト・バー50」のほとんどで見かけることができ、Drinks Internationalの年間ブランド・レポートでは、ベストセラー・リストとトップ・トレンド・リストの両方で上位にランクインしている。このブレンデッド・ウイスキーは1985年に初めて発売され、製造には100バッチ以上のモルトウイスキーとグレーンウイスキーを使用している。ニッカ・ザ・グレイン・ウイスキーは、ベストセラー商品と並んで、インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ2023で金賞を受賞し、同ブランドのポートフォリオがますます充実していることを証明しています。
3-3. 10位「響」
サントリーから2ブランド目。昨年から5位アップして、「響」が10位にランクイン。
山崎はもちろんのこと、世界的にも認知度の高く、“日本の四季、日本人の繊細な感性、日本の匠の技を結集したウイスキー”がコンセプト。日本を象徴するウイスキーとしても世界的に人気のブランドです。
響ハーモニーは、市場で最も認知されたジャパニーズ・ウイスキーのひとつである。
サントリーが創業90周年を記念して1989年に発売した「響」は、日本で最も賞賛されるブレンデッドウイスキーのひとつとなった。1987年のブランド誕生時、マスターブレンダーの佐治敬三は、サントリーの洗練された技術を示すウイスキーを作ることを決意した。チーフブレンダーの稲富孝一は、サントリーの100万樽のウイスキーを試飲し、30種類のモルトウイスキーと芳醇なグレーンウイスキーを含むハーモニーブレンドのレシピを発見した。
今日、「響ハーモニー」は市場で最も知られたジャパニーズ・ウイスキーのひとつであり、世界中の一流バーの棚に常備されている。
3-4. 16位「秩父」
「イチローズモルト秩父蒸溜所」が16位にランクイン。
クラフトディスティラリーで、生産量も少なく国内はもちろん世界的にも流通量は少ないにもかかわらず、熱狂的なファンを持つ秩父蒸溜所。
2004年に肥土伊知郎氏によって設立された秩父蒸溜所は、ウイスキーのボトルというよりもコレクターズアイテムのような、珍しい希少なボトリングでウイスキー業界のカルト的な人気を博している。2008年、秩父は1970年代以来の新しい蒸溜所を建設し、その後15年間でブランドの評判は急上昇した。肥土氏は、英国で大麦を麦芽化し、自社で樽を製造するなど、ジャパニーズ・ウイスキーづくりとは異なるアプローチをとっており、ジャパニーズ・ウイスキー業界で最も先進的なメンバーの一人である。2019年にはインターナショナル・スピリッツ・チャレンジでマスター・ブレンダー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、今後も長くブランドの立役者として活躍し続けるだろう。
3-5. 28位「白州」
前回、ランク外となってしまった「白州」が、今回は再度ランクインし、28位として返り咲きました。
サントリー100周年に相応しく、山崎、響、そして白州の主要3ブランド全てがトップ50にランクイン。
1973年、サントリー創業者鳥井信治郎の息子で同社2代目マスターブレンダーの佐治敬三は、甲斐駒ヶ岳の麓、標高700メートルの地に白州蒸留所を設立した。
完成したこの蒸留所はサントリーにとって 2 番目の蒸留所であり、現在でも世界最高の蒸留所の 1 つです。
白州の広大な高原林に囲まれた冷涼で湿潤な気候と、尾白川の清流を利用した、山崎とは明らかに異なるウイスキー造りを目指してこの地が選ばれたのは、この蒸留所にとってウイスキー造りに極めて優れた条件が揃っていたからです。
今年、ハウス オブ サントリーはウイスキーづくり 1 世紀を祝います。この節目を記念して、白州は 2 つの限定版リリースを発表しました。18年物のピーテッド モルトと、フラッグシップの 12年物の特別ボトリングです。
4. まとめ
今回の「World’s Most Admired Whisky2023(世界で最も称賛されるウイスキー)」では、日本のウイスキーブランドが5つもトップ50にランクインしました。
特に、今年ウイスキー造り100周年を迎えるサントリーは、5ブランドのうちの3ブランドを占め、世界的にも圧倒的な認知度の高さを示しました。
しかしながら、Drinks Internationalでは未だ「ジャパニーズウイスキー」のカテゴリが確立しておらず、「ワールドウイスキー」に分類されていました。
大手メーカーの活躍に加え、近年の新興ウイスキー蒸溜所(クラフトウイスキー蒸溜所)の増加が、今後世界的にもジャパニーズウイスキーの地位を更に確実なものに引き上げ、「Japanese Whisky」のカテゴリが新設される日も遠くないのではないかと思います。